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第3章 墓場とラーメン
11.嫌な客
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『神様、お金とかって……』
神様は笑顔で首を振る。
(やっぱりか……)
『あの……お代は人間界のお金で大丈夫でしょうか?』
私がおずおずと尋ねると、死神は静かに頷いた。ひと安心して支払いを済ませたところで、明らかに顔色の悪い男が一人、目の前の席に着いた。
彼は虚な目をしたまま、注文もせず黙って座っている。
『あの、大丈夫ですか?』
思わず声を掛けると、彼は落ち窪んだ目をギョロリとこちらに向けた。
『……大丈夫そうに見えるか?』
『いえ、見えないから話しかけちゃったんですけど……』
男はお世辞にも綺麗とは言えないジャンパーを羽織った、みすぼらしい中年親父だ。先程の青年とは打って変わって、この世への恨みをしこたま溜め込んでいそうな顔をしている。
(話しかけなきゃ良かったな……)
私が軽く後悔していると、彼はやっとラーメンを注文してから、こちらに向き直った。
『アンタはまだ生きてるようだが、俺は死んでからもう何年もここらを彷徨ってんのよ』
『どうやら成仏しそこねた浮遊霊の類のようじゃの』
神様がつまらなそうに隣で呟いた。
『俺の人生、良い事なんて何にもなかった。仕事をクビになって、貯金を叩いてやっと始めた商店も上手くいかねぇで、競馬もパチンコもツキに見放されっぱなしでよう……』
男は酒を飲んでいる訳でもなさそうなのに、ネチネチとクダを巻き始めた。
神様は笑顔で首を振る。
(やっぱりか……)
『あの……お代は人間界のお金で大丈夫でしょうか?』
私がおずおずと尋ねると、死神は静かに頷いた。ひと安心して支払いを済ませたところで、明らかに顔色の悪い男が一人、目の前の席に着いた。
彼は虚な目をしたまま、注文もせず黙って座っている。
『あの、大丈夫ですか?』
思わず声を掛けると、彼は落ち窪んだ目をギョロリとこちらに向けた。
『……大丈夫そうに見えるか?』
『いえ、見えないから話しかけちゃったんですけど……』
男はお世辞にも綺麗とは言えないジャンパーを羽織った、みすぼらしい中年親父だ。先程の青年とは打って変わって、この世への恨みをしこたま溜め込んでいそうな顔をしている。
(話しかけなきゃ良かったな……)
私が軽く後悔していると、彼はやっとラーメンを注文してから、こちらに向き直った。
『アンタはまだ生きてるようだが、俺は死んでからもう何年もここらを彷徨ってんのよ』
『どうやら成仏しそこねた浮遊霊の類のようじゃの』
神様がつまらなそうに隣で呟いた。
『俺の人生、良い事なんて何にもなかった。仕事をクビになって、貯金を叩いてやっと始めた商店も上手くいかねぇで、競馬もパチンコもツキに見放されっぱなしでよう……』
男は酒を飲んでいる訳でもなさそうなのに、ネチネチとクダを巻き始めた。
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