28 / 37
第3章 墓場とラーメン
12.美味しさの力
しおりを挟む
(やっぱり話し掛けるんじゃなかった……)
『まあまあ、お父さん! この店の美味いラーメン食べたら、辛い事もきっと忘れられますよっ!』
私が後悔していると、先程の人懐こい青年が空気の読めない明るさで声を掛けてきた。
『誰がお父さんだっ!』
案の定、ネチネチ親父はご立腹だ。
ゴトリ
気不味い空気に、死神の主人が一石ならぬ一杯を投じてくれた。
親父は舌打ちしながら、目の前に置かれたラーメンに箸をつける。
『!?』
かったるそうな動作で一口麺をすすった彼は、急に目を見開いて勢い良く食べ始めた。
『ほらほら~、ね?』
自分が作った訳でもないのに、青年は得意そうだ。親父は聞こえているのかいないのか、一気にラーメンを平らげると、大きく息をついた。
『……確かにこの世のものとは思えねえ美味さだ。なんか、人生色々上手くいかなかったけど、そろそろ成仏して次の人生頑張ってみるかなぁ……』
親父はしみじみと呟く。
『面白いくらいに効果ありましたね』
私がそう言うと、神様はうんうんと頷いた。
『美味いもん食って、好きな事して、しっかり寝れば、大体の悩みはなんとかなるもんじゃ~』
『それって、まだ生きてる場合ですよね……?』
私は思わず突っ込んでしまったが、まあ皆がそれで納得いくならこれ以上触れまい。
『ありがとうな……』
親父は、先程までの表情とは打って変わって、主人に晴れやかな笑顔を見せるとキラキラと輝き消えていった。
(本当に成仏した……!)
私は初めて目の当たりにした神秘的な光景に、思わず感動しかかったが、少し冷静になってから声を上げた。
『いや、これ食い逃げじゃないですか!?』
『まあまあ、お父さん! この店の美味いラーメン食べたら、辛い事もきっと忘れられますよっ!』
私が後悔していると、先程の人懐こい青年が空気の読めない明るさで声を掛けてきた。
『誰がお父さんだっ!』
案の定、ネチネチ親父はご立腹だ。
ゴトリ
気不味い空気に、死神の主人が一石ならぬ一杯を投じてくれた。
親父は舌打ちしながら、目の前に置かれたラーメンに箸をつける。
『!?』
かったるそうな動作で一口麺をすすった彼は、急に目を見開いて勢い良く食べ始めた。
『ほらほら~、ね?』
自分が作った訳でもないのに、青年は得意そうだ。親父は聞こえているのかいないのか、一気にラーメンを平らげると、大きく息をついた。
『……確かにこの世のものとは思えねえ美味さだ。なんか、人生色々上手くいかなかったけど、そろそろ成仏して次の人生頑張ってみるかなぁ……』
親父はしみじみと呟く。
『面白いくらいに効果ありましたね』
私がそう言うと、神様はうんうんと頷いた。
『美味いもん食って、好きな事して、しっかり寝れば、大体の悩みはなんとかなるもんじゃ~』
『それって、まだ生きてる場合ですよね……?』
私は思わず突っ込んでしまったが、まあ皆がそれで納得いくならこれ以上触れまい。
『ありがとうな……』
親父は、先程までの表情とは打って変わって、主人に晴れやかな笑顔を見せるとキラキラと輝き消えていった。
(本当に成仏した……!)
私は初めて目の当たりにした神秘的な光景に、思わず感動しかかったが、少し冷静になってから声を上げた。
『いや、これ食い逃げじゃないですか!?』
0
あなたにおすすめの小説
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
元商社マンの俺、異世界と日本を行き来できるチートをゲットしたので、のんびり貿易商でも始めます~現代の便利グッズは異世界では最強でした~
黒崎隼人
ファンタジー
「もう限界だ……」
過労で商社を辞めた俺、白石悠斗(28)が次に目覚めた場所は、魔物が闊歩する異世界だった!?
絶体絶命のピンチに発現したのは、現代日本と異世界を自由に行き来できる【往還の門】と、なんでも収納できる【次元倉庫】というとんでもないチートスキル!
「これ、最強すぎないか?」
試しにコンビニのレトルトカレーを村人に振る舞えば「神の食べ物!」と崇められ、百均のカッターナイフが高級品として売れる始末。
元商社マンの知識と現代日本の物資を武器に、俺は異世界で商売を始めることを決意する。
食文化、技術、物流――全てが未発達なこの世界で、現代知識は無双の力を発揮する!
辺境の村から成り上がり、やがては世界経済を、そして二つの世界の運命をも動かしていく。
元サラリーマンの、異世界成り上がり交易ファンタジー、ここに開店!
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
