片翼の竜

もやしいため

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第一幕:双翼の出会い

011叶わぬ大願

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我の眼を見据えて告げる言葉は本心なのだろう。
だがそれにしては腑に落ちない…ただ強さを求めるだけに何の意味がある?
ヒトは『何者にも負けない』と言っているのだから、競い合う相手すべてを叩きのめせれば満足なのか?
しかしそれも何となく当てはまらないように感じる。

つまり何かに負けているということか?
我には負けているか…いや、だとすれば先程の『分かり合えない』というのは少しおかしい…。
であればこやつは他の『ヒト』とは根本から何かが違うのかもしれん。

<『強さが欲しい』と言うお前が求めるものは何だ?
 何故『何者にも負けない強さ』を欲しがる?
 我に勝てればそれで満足か?
 それとも我以外の何かに…いや、お前は一体何よりも強くなりたいのだ?>

興味を抱いた。
ヒトの中では圧倒的上位者だろう者が求める力を何に使うのかを、何故だか知りたくなった。
だが質問を投げかけすぎたらしく「お、おぉ…?」と少し後ずさりするように動いていた。
気圧されたとも違うが、興味を持つと思ってなかったのだろうか?

「………そうだな…今、ヒトは滅亡の危機に瀕している」

<そうなのか?
 お前のように変わらず我の下に来るが>

「数が増えているとは思わないか」

<確かに頻度は多くなったかもしれん>

「今は特に…いや、暫く前から『強くないと死ぬ』からだ」

<それは当たり前の話ではないのか>

何を言っているのだ。
弱ければ死ぬのは自然の摂理というものだろう。
現に我とヒトが、地に横たわる火竜の傍で語らっているのがその証明だ。
しかしそれとは意味が違ったらしい。

「『弱肉強食』って意味ならその通りだ。
 弱い者が排除され、強者が生き残る。
 そして残った強者達が競い合って強さを磨く…生き残りを賭けた戦いは今も日常茶飯事だろう」

故に我は上位種の竜と対峙することになる。
そして我がこの場に居座っているのが結果でもある。

「だが、その摂理とは別の話だ。
 …ここ百年ほどな、人は『魔王』と戦争をしているんだ」

そう切り出し、我に力を求める理由を語り始めたが、我の中にある知識は最初に持っていたものと、ヒト同士の会話のみ。
我が口を開いたのはこやつが初めてなのだから仕方が無い。
我の乏しいヒトの知識の中には戦争の言葉は無く、そのまま<それは何だ?>と問い返した。

「そうだな…お前と俺のような小規模な争いじゃない。
 あぁ、いや…個体間での戦いじゃないってことな。
 何千、何万という命を奪い合う『種族間』でする、大規模な戦闘をしているんだ」

なるほど、集団パーティ戦を更に拡大したようなものなのだな。
別の種族同士で敵対しているから規模が大きいが、結局のところは互いに喧嘩をしているのと変わらんわけか。
ともあれ、参加者が多いだけでは理由にならん。
数の大小に関わらず、こいつならある程度の結果を引っ繰り返せるだろうしな。

<その戦争と魔王とやらに何の関係がある?>

「……魔王は今現在、世界中で最も強いとされている個だ。
 ただ状況を察するにえらく燃費が悪くてな。
 十年程に一度ふらりと現れ、その時は例外なく一国を滅ぼしている。
 魔王だけでもそれだけの無茶をするのに、配下までもが人の領域に侵攻してくる」

国というものが良く分からんが恐らく先程言った大規模戦闘の参加者のことなのだろう。
魔王による十年に一度の大規模な狩りで致命的な打撃を受け、加えて日常的にもヒトが追い立てられている訳か?
その難事に対応するために力を求めて我の下へと来る…なんとも傍迷惑な話だな。

「後もう十年も争いが続けば飲み込まれてしまうくらい崖っぷちだ」

続く言葉に疑問が浮かぶ。
十年という月日は、我にしては短くともヒトにしてはそこそこの期間だ。
寿命換算で六分の一程度も猶予があると思えば、そう急く話でも無かろう。
それに

<国とやらが後一つしか残ってないのか?>

「そうじゃないが、魔王が不在の今でもジリ貧なんだ。
 盛り返すこともできず、敗戦…いや、負けるなんて言葉じゃない。
 人が地上から居なくなってしまう。
 だから一刻も早く魔王に対抗する力が必要なんだ…もう一手もしくじれないんだ」

必敗する魔王さえ何とかすれば、時間を掛けてでも盛り返す方策があるわけか?
ともかく、言葉からするとヒトという種族が危ないのは伝わった。

これが本当かどうかなどは分からんが…今この場で我に虚実を伝える意味はない。
何より嘘を吐くために半年も死にかけるようなことに精を出す馬鹿も…いや、こいつならやるかもしれんか?
だが『話せるかどうか』が分からなかったのだから、その線は無いか。

<面白そうだ>

我の口を衝いて出たのは煽るような言葉だった。
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