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「ちょ!臣くん
痛いっつうの」

臣は誠の耳を引っ張ると、僕から距離を取らせる

「だから近い」

「わーたって距離取るから俺のことそんないじめないで」

そんなこんなで朝ごはんが出来上がり、席に着くも、誠と臣は隣同士で座りあっている

ご飯を食べ始めたのはいいけど、またもや気になり始める2人の距離感
誠が臣の皿を見つめて臣の皿の上に残っている食材にフォークの先を向けた

「臣、それ食うの?」

「え?これ?食いたいなら食っていいよ」

「じゃあありがたく」

「じゃあ代わりに誠のそれちょうだい」 

次は臣が誠の皿を指差すと、誠はフォークで目玉焼きの半分を突き差し臣の口元へと持っていく

これはいわゆるアーンと言うもので、僕はその様子を呆然と見つめてしまった

あまりにも自然に間接キスを遂げた2人
なんだかその様子が悔しくて、僕は皿の上からブロッコリーを突き刺すと臣の方へ向ける

「臣、食べていいよ!!」

「俺、ブロッコリー苦手なんですけど…」

「じゃあ、俺が食べてあげる」

臣に断られショックを受けていると
誠がフォークに突き刺しているブロッコリーを口に運んだ

僕が望んでいたのはそうじゃないのに…
2人の間を邪魔しようとしてもうまくいかないまま朝食が終わってしまった

誠はこの後、用事があると言うので帰ることに
臣の服をきて、荷物を持ち玄関に向かう誠の姿を僕は後ろから追いかける

真相は本人に聞けばいい

「ねえ、誠」

「ん?何?」

靴を履いて、ドアノブに手をかけようとしていた誠に声をかける

「あのさ…一つ聞きたいんだけど…」

「うん」

「誠ってさ、臣のこと…」

「うん」

「好き?その…恋愛的な意味で」

「は??」

その瞬間、2人の間には沈黙が流れる

「何言ってんの??」

誠は僕に対して冷たい目を向ける

「いや!だって2人って異様に距離近い感じするし、仲もすごいいいし…
もしかしたら誠が臣のこと好きなのかななんて…」

チラチラと誠の顔を見ながら話すけど、未だに理解できないと言った様子で冷めた目をして僕を見ている

「あのね…千秋さん」

誠は首元に手を回して、引き寄せると耳元にフッと息を吹きかけた

「ひゃっ」

びっくりして声が出てしまう

「俺はね、男だろうと女だろうと可愛い子しか眼中にない
だから臣みたいな可愛さのかけらもないやつは明らかに対象外」

「男だろうと、女だろうと?」

「意味わかる??」

誠は再び僕の耳にフッと息を吹きかけた後、低いトーンで色気のある声で囁いた


「千秋さんみたいな可愛い子は狙うよって話」

「…へ?」

誠の顔を見上げると片方の口角だけをあげて、意地悪そうな笑みを浮かべていた
そして、指先で僕の頬をそっと撫でる


「じゃあね、千秋さん気をつけて」


最後の言葉の意味はわからない
誠はそのまま部屋を出て行ってしまった

けど、誠が臣を狙ってないという言葉に一安心
最後の言葉は引っかかるけど、そんなこと今となってはどうでもいい


臣のところに行こうとすると扉の前には臣が既に立っていた

「さっき誠に何言われたの?」

「えっと…可愛い子は狙うとかなんとか…??」

「そう、じゃあこっち来て詳しく伝えて」

そんな臣の顔は笑っているけど、無理して笑っているのがわかる
この後、臣に誠がどれだけ要注意人物かと熱弁されたけど、僕は先ほどの安心感から臣の話は入ってこなかった
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