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え…僕今何してる??

目の前には、長いまつ毛を伏せて目を閉じているりっくんの姿

唇の重なっている数秒間が、分単位に感じる

伏せられていた目が薄く開いて、互いの唇が離れていく


「えっ……」


あまりに突然のことで、口を開いたまま固まってしまう


「びっくりした?
俺好きな子には強引にいき…」


「馬鹿たれ!!!」


「いたっ」


余裕そうな笑みを浮かべていたりっくんの頭を勢いよく叩く
力が弱かったせいかペチンという生温い音が鳴る

まずい、叩いてしまったという気持ちが一瞬湧いたけど、今は叩いてしまったという後悔より、りっくんへの説教が先だ


「何やってんの!!
付き合ってもない女の子に対していきなりキスするなんて!!
イギリスにいようが、日本にいようがそんなことしちゃダメでしょ!!!」


「は?イギリス??」



りっくんは僕に叩かれた頭に手を当て、さすりながら僕の目を捉える

その時、興奮のあまり口を滑らしてしまったことに気づき咄嗟に誤魔化そうと頭の中で適当な言葉を並べる

僕は今りっくんがイギリスに住んでたことなど知らない、出会ったばかりの千夏なのだ


「えっと……イギリスなんて言ってない!!
伊勢崎って言った!!」


「なんで伊勢崎??」


「う、うるさい!!
とにかく反省しろ!!」


「わかったよ
もうそんなことしない
これからは許可とってするね、"ちぃ"」


「うん、そうしてよ
今度からそんなことしちゃダメなんだからね!!…って…今なんて……??」


言葉の最後にただ1人にしか呼ばれないあだ名を呼ばれたのは、僕の気のせいだろうか


「ん??許可取ってからするねって」


「ち、違う!!そのあと!!」


「"ちぃ"でしょ
わかんないと思った??」


りっくんは教卓に座ったままの状態の僕とまた距離を縮めてきた


「ちぃ、キスするね」


薄い唇をこっちに向かって近づけてくるりっくんの胸元を両手で押し退ける


「ちょ!!ちょっと待って!!
色々と処理が追いつかないって!!」








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