冴えない女なのに美男子に言い寄られてます。

ぽぽ

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田中くん、だっけ。
たしかそんな名前だったはずだ。

誰かと待ち合わせしているのだろうか。
こちらの存在なんて、向こうはもう覚えていないかもしれない。突然声をかけられても困るだろうし、そもそも私から話しかける理由もない。

そう思い、そのまま距離を保って様子を見ていると、一人の女の子が田中くんのもとへ小走りで近づいていった。


「裕也!お待たせっ!」

「お、やっと来た。遅いじゃん」



駆け寄ってきた女の子は、思わず見とれてしまうほど可愛かった。明るい髪色に、華奢な体つき。服装も洗練されていて、いかにも“今どき”という感じだ。

……彼女、なのだろうか。

自然とそう考えてしまう。
二人が並んで立つ姿は、まさに美男美女で、文句のつけようがないほどお似合いのカップルだった。

一つだけ、どうしても頭に浮かぶ疑問がある。
この前、合コンをしたばかりだったはずだ。そのとき、彼女の存在を匂わせるような話は出ていただろうか。

けれど、そんなことを考えるのは完全に余計なお世話だ。
合コンをしたからといって、誰かと付き合っていてはいけない理由なんてない。

じっと見ていたら、不審に思われそうだ。
そう感じて視線を逸らし、特にすることもないまま、スマホの画面を眺める。画面を点けては消し、意味もなくスクロールする。

そうしてしばらく待っていると、伊藤くんからメッセージが届いた。

"今、着きました"

その一文を見た瞬間、少し落ち着いていたはずの心拍数が、また一気に跳ね上がる。

もうすぐ、来る。
どういう表情を浮かべればいいんだろう。
なんて声をかければいい? 笑ったほうがいい? それとも、落ち着いた感じのほうがいい?

さっきの雑誌、ちゃんと読んでおけばよかった!!

後悔が頭をよぎる。
次から次へと疑問が押し寄せてきて、思考が追いつかない。

改札のほうへ目を向けると、伊藤くんが少し早歩きで出てくるのが見えた。
キョロキョロと辺りを見渡していて、明らかに誰かを探している様子だ。

身長が高いのもあるけれど、それ以上に、顔がいい。
遠くからでも、すぐに分かってしまう。歩いているだけなのに、まるでモデルがランウェイを歩いているみたいな、不思議なオーラがある。

伊藤くんが私を見つけると、ぱっと表情が明るくなり、あの眩しい笑顔を浮かべて手を振りながら駆け寄ってきた。

……これは、直視したら心臓がもたない。
テレビやスマホの画面越しだからこそ見られるレベルの眩しさだ。

私は小さく、控えめに手を振り返すけれど、やっぱり目を合わせ続けることはできなかった。


「ユイさん!すいません、遅くなりました!」

「……いえっ!大丈夫ですよ!
それに、まだ待ち合わせ時間も過ぎてないですし……」


声が少し裏返ってしまった気がする。
彼を間近で見ると、想像以上にかっこよくて、思わず言葉を失いそうになる。

この前会ったときも十分すぎるほどだったけれど、服装や髪型が変わるだけで、こんなにも雰囲気が変わるなんて。
改めて思う。美男子って、恐ろしい。


「じゃあ、行きましょう」


そう言って微笑む伊藤くんの隣に立った瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられる。

本当に、私でいいの?

ここに来るまでに何度もよぎった思考が再び顔を出す。

そう思いながら、彼と並んで歩き出そうとした、そのとき。

不意に、後ろから声が聞こえてきた。
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