冴えない女なのに美男子に言い寄られてます。

ぽぽ

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「てか、萌が離れればいい話なんだよ」

伊藤くんがそういうと、萌ちゃんは不満げな顔を浮かべた。

「嫌だ。だって萌も環とデートしたいもん」

「俺の周り、ろくな奴いない……」

その後も、伊藤くんとゆっくり話せる瞬間はなかなか訪れない。

そんな中、隣を歩く蓮介くんが、私に気を遣ってか話しかけてくれる。

「ユイさん、楽しい?」

「え、あ、うん! 楽しいよ」

つい周りの魚に夢中になってしまい、歩くペースが遅くなる。

水槽の中をゆらゆらと泳ぐ魚たち。
光が揺れて、時間までゆっくり流れているみたいだった。

「ゆっくり見たかったら、また逸れればいい話だから」

「蓮介くん、もうそれはダメだよ」

「蓮介、聞こえてるから」

前から伊藤くんの声が飛んでくる。

「聞こえてたか。残念」

ひと通り水族館の中を見終え、入口の方へ戻ってくる。

すると、萌ちゃんがなぜか不満そうな顔をしていた。

「ねえ、萌。お腹空いてきた」

「はい、じゃあ二人で食べておいで~」

伊藤くんは蓮介くんの腕を引くと、そのまま萌ちゃんの前に差し出す。

「え! 一緒に行こうよ!」

「もうさすがに限界。……ユイさん、行こう」

そう言って、伊藤くんは私の腕を取る。

引かれるまま、私はついていった。

「待ってよ! 環!」

後ろから萌ちゃんの声が聞こえるけれど、伊藤くんは振り返らない。

「伊藤くん、大丈夫なの?」

「うん、全く問題なし。やっとうるさいのがいなくなった」

横目でちらりと彼の顔を見る。

さっきまでの不機嫌そうな表情は、確かに消えていた。

それを見て、私も少し安心する。

「そういえば、萌ちゃんって大学の友達なの?」

「ああ、萌ね……あいつはただのモデル仲間」

「あ! やっぱりモデルなんだ! 可愛いと思った!」

「そうかな?」

「多分、可愛い子に囲まれすぎて感覚鈍っちゃったんだよ」

冗談っぽく言ってみる。

毎日のように美男美女を見ていれば、最初は驚いても、だんだん目が慣れていくのかもしれない。

私には、その感覚はよくわからないけど。

「そういえばさ……」

「ん?」

「何で俺は苗字なのに、蓮介は名前なの?」

言われてみれば、確かにそうだ。

自分ではあまり気にしていなかったけど、どうしてだろう。
蓮介くんの名前のほうが呼びやすかったから……?

「特に理由はないよ! たまたまかな?」

「じゃあ、俺のことも名前で呼んでよ」

「え!!」

思わず声が裏返る。

「そんなに驚く?」

「う、うん……」

「俺だって、できるだけ距離縮めたいからさ」

そう言って、伊藤くんは私の手に自分の手を重ねた。

さっき落ち着いたはずの顔の熱が、またじわっと上がっていく。

恋愛経験なんてほとんどないのに、
こんな一言と仕草で簡単にときめいてしまう自分に、少し驚いた。
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