冴えない女なのに美男子に言い寄られてます。

ぽぽ

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「で、でも……」

「蓮介が先に名前で呼ばれてるのは、やけちゃうなぁ」

唇を少し尖らせながら、横目で私をちらちら見る。

その仕草が妙に可愛く見えてしまう。

これが母性本能ってやつなのかは分からないけど。

「その、た……きくん……」

「え?? 俺、たきくんじゃないんだけどなあ」

伊藤くんは揶揄うような笑みを浮かべながら、横から私の顔を覗き込んでくる。

近い。近いって。

「……た、たまきくん」

「はい、よく言えました」

環くんは満足そうに笑って、ぽんぽんと私の頭を撫でた。

漫画でよくある“頭ぽんぽん”なんて、そんなにときめくもの?と半信半疑だったけれど。

今ならわかる。

撫でられた場所がじんわり熱を持っている気がして、思わず自分の手で触れてしまう。

「頭撫でられて反応しちゃうところも、ユイさんは可愛いよね」

「いやっ、可愛くは!」

怒涛の“可愛い”攻撃に、どう反応していいかわからない。

多分、人生で親以外に“可愛い”と言われた回数の最高記録を更新している。

彼は私の困惑する様子を見て、くすくすと笑った。

……なんだ。やっぱり揶揄ってるだけ?

少しだけむっとする。

「ねえ、ユイさん。そろそろお腹空かない?」

「うん、空いてきたかも」

「じゃあ昼ご飯食べに行こっか」

水族館内のレストランへ向かうと、なかなかの混雑ぶりだった。

メニューを見ると、どれも結構なお値段。

いわゆる“水族館価格”だ。

こんなに高いなら、お弁当を作ってくればよかったかも……と、つい貧乏思考が働く。

しばらく並んで席に案内されると、ウェイターの女の子が環くんを見て頬を赤らめている。

……あれ。この光景、前にも見たよね?

環くんと一緒にいる限り、こういう反応はきっと珍しくなくなるんだろう。

「さて、何食べよっか?」

環くんはメニューを、私が見やすい向きにして開いてくれる。

そんな細かい気遣いまで。

今まで男性にこんな風に扱われたことなんてないから、優しさに戸惑いながらも、素直に嬉しい。

「えっと……私は……」

どれも高い。

正直、端に載っているお子様ランチでもいいくらいだ。

それに今回は、環くんに奢りたいと思っている。

そのためには、自分の分をできるだけ抑えなきゃ。

「どう? 決まった?」

「その……じゃあ、このスープで」

指さしたのは、一番安いコーンスープ。

いっそこれだけにしてしまおうか、と考えた瞬間。

「あとは?」

予想外の一言。

慌てて次に安いものを探す。

「え?! えっと……あと、このパン!」

横に載っていたパンを指す。

これだって普通に考えれば高いけど。

「他には?」

「こ、これで大丈夫!!」

環くんはぽかんとした顔で私を見る。

「あの……それだけで足りる?」

「う、うん!! 足りるよ!
私、太ってるけど意外と少食だったり……」

もちろん嘘だ。

普段は普通に食べる。

見栄もあったし、奢らせたくない気持ちもある。

嘘をついているからか、だんだん声が小さくなっていく。
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