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しおりを挟むそして、味はあまり感じないもののとりあえずありきたりな感想を言った。
「美味しい、すごく」
「そう?よかった」
蒴はほっとしたような笑みを浮かべる。
蒴から笑みを向けてもらえるのはいつぶりだろうか。菫はほんのりと胸が暖かくなる。
「その…話って何?」
「美香から聞いたんだけどさ」
その言葉に体が強張る。あのことを言われるのだろうか。
「どうしてそんな目見開いてるの?
なんかあった?」
蒴は菫の表情を見て笑みを浮かべながら、周りを見渡す。
「いや、別に…で、なに?」
「菫に悪いことしちゃったかもしれないって」
「悪いこと?」
「そう、美香がこの前菫の家に突然行っちゃったから迷惑してたのかもしれないって言ってたんだ。大丈夫だった?」
「うん…」
「そっか、ならよかった」
蒴はほっとしたような顔をして、口元にコーヒーカップを持っていく。
どうやら蒴は関わらないでくれと言った話を美香から聞いていないようだった。それが菫の評価を下げないための美香からの親切心だったのだろうが内心苛立ちを覚えた。
いっそのことボロクソに言ってくれれば、こちらも気兼ねなく悪く言えたのに、同じ悪者になれたのにと思ってしまう。
「迷惑なんてしてないよ
もう関わらないでくださいって言っただけ」
「え?」
いっそのこと後から言われるのであれば自分から言ってしまえと開き直った。
自分の喉奥に詰まっているような感じがしているのが気持ち悪くて言ってしまったが、さっきまでにこやかだったはずの蒴の眉間に皺がよった。
「なんでそんなこと言ったの?
別にそんなふうに遠ざけることないでしょ」
落ち着いた口調ではあるものの、明らかに声のトーンは下がっている。
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