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しおりを挟む美香はポロポロと涙を流しながら、部屋へと戻っていく。しかし、美香が家に戻ろうとしたと同時に蒴の部屋の扉が開いた。
蒴らちょうど出かける用事があったらしく、片手には鞄が握られていた。そして、美香のないている姿を見て驚いている。
菫自身も蒴に振られて以来会うことを避けていたため、突然の登場に驚く。
2人して目を丸くした状態で目があった。
「え?何で泣きそうになってるの?」
蒴が美香の華奢な肩を抱くと、美香は両手で顔を覆いながら朔の胸へと顔を預けた。
蒴の攻め立てるような鋭い視線が菫へと向けられる。
「知らない」
事情も知らないのに美香の態度だけをみて、悪者扱いをされたことに苛立ちと悲しみが一気にのしかかり、居心地の悪くなった菫は扉をしめて家の中に入ろうとするも、蒴に扉を掴まれる。
「ドアから手放してよ」
「ちょっと待って、ちゃんと話しよう
美香、ごめん
部屋に戻っててもらっていい?」
美香は胸元から顔を上げると、静かに頷き蒴の部屋の中へと戻っていく。
「私は話すことない
全部、美香さんから聞けばいいじゃん!」
「それだと美香の意見に偏りが出るだろ」
美香の味方であるくせに、なにを今更中立の立場を保とうとしているのか。
さっきまでのことを朔に話したとしても、結局朔が菫の肩を持つことはないことはわかってる。
「いいよ、どうせ私が悪いんだし
蒴ちゃんは美香さんの味方なんだから」
こんなこと言うのは子供じみてるなんてことはわかっていたけど止められなかった。
投げ捨てるように言葉を放って、蒴の鋭い視線から目を逸らす。
「菫が悪いなんて誰も言ってない」
蒴は相変わらず落ち着いたトーンで話し続けるが、その中に多少のイラつきが混じっていることに菫は気づいていた。
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