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しおりを挟む世話をするのが蒴ではなく、恭弥に変わったと言うことくらいだ。
別に家を言っても問題ないとは感じつつ菫は言った。
「と、友達の家…」
「友達ねえ
それは学校の友達?」
「うん、そうだよ…」
「そうなんだ」
蒴が意外にもすぐに納得してくれたことに驚きつつ、菫は笑みを浮かべる。
「だから心配ないよ」
「そっか」
「うん、蒴ちゃんも美香さんと仲良く暮らしてね」
「あのさ、菫」
蒴は菫の髪に手を伸ばすと、指先で髪をすく。
「俺がそんな嘘に騙されると思った?」
蒴が色素の薄いサラサラとした前髪をかき上げると、彫刻のような美しい顔が無表情のまま菫を見下ろしている。
蒴は一つため息をつくと、蒴は部屋の中へと足を進める。
「ちょっと、蒴ちゃん
どうしたの?」
「友達の家に引っ越しなんて嘘でしょ」
「本当だよ!」
「連絡先が俺と家族と恭弥くらいしかいないのに??」
「…いつみたの?」
「菫が俺の隣に座った時にたまたま見えた
それについて何か聞くのも悪いかなと思って言わなかったけど」
蒴は菫の腰と膝裏に腕を回すと軽々と持ち上げ、ベッドの上に放り投げる。
「な、何?
どうしたの?」
「これがどう言う意味かもわからないような子を俺の離れたところに置くと思う??」
蒴はベッドの上に倒れ込んだ菫の上に覆い被さり、菫の後頭部に手を回し顔を近づけた。
「友達の家に住むっていうのも嘘だし
恭弥と付き合ってるって言うのも嘘でしょ」
「え…嘘じゃないよ…」
「菫は嘘をつく時、そうやって目を逸らすんだよね
すっごいわかりやすい」
「嘘じゃないって!」
「じゃあ俺の目を見て言って
恭弥と付き合ってるって」
鼻と鼻が触れ合うような距離で見つめられ、菫を目を合わせられない。
「…つ、付き合ってる」
「嘘つき」
目を逸らしながらいう菫の頬に蒴は手のひらを添えた途端、菫の頬に蒴は手のひらを添えると、どこからか携帯の振動する音が聞こえた。
「蒴ちゃんの携帯じゃないの…会社の人にからかもよ…それか美香さんか…」
「今は菫とのことの方が大事だから」
「いつも私のことなんか優先してくれなかったくせにっ…蒴ちゃんなんてきら」
菫が嫌いと言おうとした途端、蒴は菫の口元を手のひらで塞ぐ。
「嫌いは禁止」
「こんな蒴ちゃん嫌いだもん…」
菫が涙ぐんだ声を出した時、菫の部屋のインターホンが鳴る。その音で蒴の体が少し離れ菫は蒴の体の下から脱げ出す。
インターホンのモニターを見に行くと、そこにはなぜか恭弥の姿があった。
菫はインターホンの通話ボタンを押す。
「……恭弥くん??何いるの??」
「何でいるの?ってお前さあ
俺に昼間引っ越しの準備間に合うかどうか不安になってきたとか送ってきたから様子見に来たのに冷たくない?
恭弥くん泣いちゃうよ?」
恭弥はインターホンのカメラの前に菫の好きなお菓子屋の紙袋を掲げる。
菫が話していると、菫の背中に蒴が覆い被さり腹に腕が回される。
「誰?」
「恭弥くん!」
菫は蒴の腕を下からすり抜け、玄関を走る。
扉を開けて恭弥に勢いよく抱きついた。
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