245 / 296
冬は総括
意外な解決策
しおりを挟む
「それだよ」
「えっ!?」
燈梨は、私が何を言ってるのか分からない様子だったので私は言った。
「結衣が部取りしていらなくなった部分の合わせ技で、1脚作るんだよ」
「そうかぁ!」
燈梨が明るい表情で言うと、ちょうど一部始終を見ていたおじさんから
「よくそこに気付いたなぁ、ナイスアイデアだぞ。お金もかからないし、部車にピッタリだぁ」
とニコニコしながら声をかけられた。
うん、そうなんだよ。でもって、売ってる立場のおじさんが、自ら『お金もかからない』なんてアピールしてるところに、おじさんの人の良さが表れてるよね。
そうだよ、新品みたいな綺麗なシートだと、みんな気後れしちゃうでしょ、だから、これくらいがピッタリだよ。
よし、今日のうちに3つを1つに纏めちゃおう。
まずは、どれのフレームを生かすかだなぁ……。
目の前にあるのは、右脇の布が破れちゃってるのと、ダイヤルとかが無くて、背中の布が結衣に追いはぎされて裸にされたのと、捩じれてる上に座面と背面が追いはぎされてて、煙草の焦げ穴が開いてるやつかぁ……。
「マイ! 人聞きの悪いこと言うなよ!」
なんだよ結衣、私は事実を箇条書きに言ってるだけだよ。
まずは、捩じれてるのは、きっとフレームが曲がってて、直らないから手堅くパスだね。
あとの2つは、フレームはしっかりしてそうだったよ。
「どうして分かるの?」
あぁ、燈梨。
大したことじゃないよ。全部勘だよ。
見た目に曲がってないし、中のウレタンも崩れてなさそうに見えるし、まずは見た目。
これって、バカにしがちだけど、結構重要なんだよ。
車でも家でも、なんでもそうだけど、まずは見た目の第一印象が悪いそれらってのは、大抵、何かしらのトラブルを抱えてたりするもんだよ。
人間の見た目からビビッとくる勘ってのは、バカにならないもんだよ。
爺ちゃんも言ってたけど、旅館とかでも『ここ、なんか嫌な感じがするな』とか『説明できないけど、見た目的に嫌だな』とか思う部屋は大抵出るんだってさ。
爺ちゃんは、そうやって見た目に嫌な気分がするって、無理言って部屋を変えて貰ったら、夜中に元々泊まるはずだった部屋が土砂崩れで埋まっちゃった事があるらしいよ。
「へぇー」
そうなんだ。もし、この勘を押し殺していたら、私はいなかったかもしれないと思うと、ちょっとゾッとするね。
「マイなんか~、そのまま生まれて来ない方が、世のためだい~!」
この野郎! 柚月! さっきから、モグラ叩きみたいに、ひょこひょこと現れては、何の役にも立たないチャチャばかり入れやがってぇ……。
待てっ!! 今度という今度は許さないからなぁ! コラっ! このっ! このっ! どうだっ!
「参りました~、ゴメンなさい~!」
いーや、許さないぞ!
私は柚月の口の両端に指を入れて、思いっきり引っ張った。
さぁ、柚月、これから30秒以内に『学級文庫』って3回言えたら、許してやらない事もないぞ。
「ううう~、学級う●こ~」
誰が、そんな汚い言葉を言えって言ったんだよ! やっぱり言えなかった柚月さんには、罰ゲームとして、ケツバットだぁ!
「イヤだぁ~!」
そうはいくか! 今度は3人がかりだからね。
燈梨、結衣。柚月をちゃんと抑えててね。
私は落ちていた塩ビパイプを拾い上げると、柚月のお尻目がけて振り下ろした。
「痛ぁぁぁぁぁいーー!!」
当たり前だ。
仏の顔も三度までだぞ、柚月。
のたうち回る柚月を尻目に、私と燈梨はシートの見極めに戻った。
「マイのサディスト~! お尻が割れちゃったら、どうしてくれるんだよぉ~!」
邪魔をするな、柚月。
そもそも割れてないお尻だったら、その段階で病院に行かなきゃダメだろーが!
どしたの、燈梨?
え? 柚月がフー子さんと同じこと言うから、思い出しておかしくなったって?
フー子さんって、この間、文化祭の時に会った、ロードスター乗ってるお姉さんだね。
確かに、あの人も、炭酸飲料を噴射させたり、お化け屋敷の壁に穴開けたり……とか、柚月と同じ匂いのする人だったもんね。
「フー子さんはね、ストッパー役がいないと、バカみたいなことばっかりするからね」
そのうち見ることがあるかもね? だって。
そう言われてみれば、この間、そのうちに鍋でもやるから、来なよって言われたなぁ……。
さて、突然乱入した地球外生命体のおかげで、大幅に脱線しちゃったんだけど
「私は~、地球外生命体じゃない~」
まだいたのか、お尻が割れてない生物なんて、地球外生命体以外に考えられないだろうが、本来なら、研究機関に通報して実験生物として引き取ってもらうところだけど、特別に勘弁してやるから、とっとといなくなっちゃえ。
「覚えてろよ~!」
まったく、1日に何回その台詞言うつもりなんだろ。
よし、今度こそ本題に戻って、あとは背もたれを持って揺すってみたりしたんだ。
それでガタつきが出てなかったから、大丈夫だって判断したんだよ。
「そうなんだ。ホントだね」
燈梨は言いながら、実際にシートの背もたれを揺すってみて言った。
ふむ、それで燈梨はどう思う?
どっちをベースに部取りして3脚で1脚のシートに纏めた方が良いと思う?
「うん……」
燈梨は、ちょっと唸った後、今度は黙って考え込んでいた。
そして、実際のシートを触ったり、座ったりしてみながら考えた結果。
「これっ!」
と言うと、結衣が裸にしたシートを軽く手で触れた。
ちなみに、その根拠は?
「まず、布が破れてる方は、中のウレタンが乾燥してボロボロになって変形してるけど、こっちは、全然大丈夫だからね。それに、座面の布もずっと丈夫だし、なにより、ヘタってないもん」
なるほどね。
でも、表面はどっちから取るの?
「この捩じれてる方。煙草の穴も目立たないレベルだし、臭いも、何度か洗濯すれば消えるからね。フレームはこれで、表面は捩じれてる方、ダイヤルとかは破れてる方から貰う事にするよ」
燈梨は、ニコッとしながら言った。
うん、パーフェクトだよ。
燈梨もここまでの回答ができるなら、もう、自動車部は安泰だよぉ。
「そうかな?」
そうだよ。
じゃぁ、早速、取るものを取って、必要なものを積んでいっちゃおう。
「えっ!?」
燈梨は、私が何を言ってるのか分からない様子だったので私は言った。
「結衣が部取りしていらなくなった部分の合わせ技で、1脚作るんだよ」
「そうかぁ!」
燈梨が明るい表情で言うと、ちょうど一部始終を見ていたおじさんから
「よくそこに気付いたなぁ、ナイスアイデアだぞ。お金もかからないし、部車にピッタリだぁ」
とニコニコしながら声をかけられた。
うん、そうなんだよ。でもって、売ってる立場のおじさんが、自ら『お金もかからない』なんてアピールしてるところに、おじさんの人の良さが表れてるよね。
そうだよ、新品みたいな綺麗なシートだと、みんな気後れしちゃうでしょ、だから、これくらいがピッタリだよ。
よし、今日のうちに3つを1つに纏めちゃおう。
まずは、どれのフレームを生かすかだなぁ……。
目の前にあるのは、右脇の布が破れちゃってるのと、ダイヤルとかが無くて、背中の布が結衣に追いはぎされて裸にされたのと、捩じれてる上に座面と背面が追いはぎされてて、煙草の焦げ穴が開いてるやつかぁ……。
「マイ! 人聞きの悪いこと言うなよ!」
なんだよ結衣、私は事実を箇条書きに言ってるだけだよ。
まずは、捩じれてるのは、きっとフレームが曲がってて、直らないから手堅くパスだね。
あとの2つは、フレームはしっかりしてそうだったよ。
「どうして分かるの?」
あぁ、燈梨。
大したことじゃないよ。全部勘だよ。
見た目に曲がってないし、中のウレタンも崩れてなさそうに見えるし、まずは見た目。
これって、バカにしがちだけど、結構重要なんだよ。
車でも家でも、なんでもそうだけど、まずは見た目の第一印象が悪いそれらってのは、大抵、何かしらのトラブルを抱えてたりするもんだよ。
人間の見た目からビビッとくる勘ってのは、バカにならないもんだよ。
爺ちゃんも言ってたけど、旅館とかでも『ここ、なんか嫌な感じがするな』とか『説明できないけど、見た目的に嫌だな』とか思う部屋は大抵出るんだってさ。
爺ちゃんは、そうやって見た目に嫌な気分がするって、無理言って部屋を変えて貰ったら、夜中に元々泊まるはずだった部屋が土砂崩れで埋まっちゃった事があるらしいよ。
「へぇー」
そうなんだ。もし、この勘を押し殺していたら、私はいなかったかもしれないと思うと、ちょっとゾッとするね。
「マイなんか~、そのまま生まれて来ない方が、世のためだい~!」
この野郎! 柚月! さっきから、モグラ叩きみたいに、ひょこひょこと現れては、何の役にも立たないチャチャばかり入れやがってぇ……。
待てっ!! 今度という今度は許さないからなぁ! コラっ! このっ! このっ! どうだっ!
「参りました~、ゴメンなさい~!」
いーや、許さないぞ!
私は柚月の口の両端に指を入れて、思いっきり引っ張った。
さぁ、柚月、これから30秒以内に『学級文庫』って3回言えたら、許してやらない事もないぞ。
「ううう~、学級う●こ~」
誰が、そんな汚い言葉を言えって言ったんだよ! やっぱり言えなかった柚月さんには、罰ゲームとして、ケツバットだぁ!
「イヤだぁ~!」
そうはいくか! 今度は3人がかりだからね。
燈梨、結衣。柚月をちゃんと抑えててね。
私は落ちていた塩ビパイプを拾い上げると、柚月のお尻目がけて振り下ろした。
「痛ぁぁぁぁぁいーー!!」
当たり前だ。
仏の顔も三度までだぞ、柚月。
のたうち回る柚月を尻目に、私と燈梨はシートの見極めに戻った。
「マイのサディスト~! お尻が割れちゃったら、どうしてくれるんだよぉ~!」
邪魔をするな、柚月。
そもそも割れてないお尻だったら、その段階で病院に行かなきゃダメだろーが!
どしたの、燈梨?
え? 柚月がフー子さんと同じこと言うから、思い出しておかしくなったって?
フー子さんって、この間、文化祭の時に会った、ロードスター乗ってるお姉さんだね。
確かに、あの人も、炭酸飲料を噴射させたり、お化け屋敷の壁に穴開けたり……とか、柚月と同じ匂いのする人だったもんね。
「フー子さんはね、ストッパー役がいないと、バカみたいなことばっかりするからね」
そのうち見ることがあるかもね? だって。
そう言われてみれば、この間、そのうちに鍋でもやるから、来なよって言われたなぁ……。
さて、突然乱入した地球外生命体のおかげで、大幅に脱線しちゃったんだけど
「私は~、地球外生命体じゃない~」
まだいたのか、お尻が割れてない生物なんて、地球外生命体以外に考えられないだろうが、本来なら、研究機関に通報して実験生物として引き取ってもらうところだけど、特別に勘弁してやるから、とっとといなくなっちゃえ。
「覚えてろよ~!」
まったく、1日に何回その台詞言うつもりなんだろ。
よし、今度こそ本題に戻って、あとは背もたれを持って揺すってみたりしたんだ。
それでガタつきが出てなかったから、大丈夫だって判断したんだよ。
「そうなんだ。ホントだね」
燈梨は言いながら、実際にシートの背もたれを揺すってみて言った。
ふむ、それで燈梨はどう思う?
どっちをベースに部取りして3脚で1脚のシートに纏めた方が良いと思う?
「うん……」
燈梨は、ちょっと唸った後、今度は黙って考え込んでいた。
そして、実際のシートを触ったり、座ったりしてみながら考えた結果。
「これっ!」
と言うと、結衣が裸にしたシートを軽く手で触れた。
ちなみに、その根拠は?
「まず、布が破れてる方は、中のウレタンが乾燥してボロボロになって変形してるけど、こっちは、全然大丈夫だからね。それに、座面の布もずっと丈夫だし、なにより、ヘタってないもん」
なるほどね。
でも、表面はどっちから取るの?
「この捩じれてる方。煙草の穴も目立たないレベルだし、臭いも、何度か洗濯すれば消えるからね。フレームはこれで、表面は捩じれてる方、ダイヤルとかは破れてる方から貰う事にするよ」
燈梨は、ニコッとしながら言った。
うん、パーフェクトだよ。
燈梨もここまでの回答ができるなら、もう、自動車部は安泰だよぉ。
「そうかな?」
そうだよ。
じゃぁ、早速、取るものを取って、必要なものを積んでいっちゃおう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる