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二章(2)

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次の日。
 昨日は母から食事を貰い、お腹いっぱいになってすぐ寝てしまっていた。……だから、父が帰ってきていたのに、気がつかなかったのだ。

 目を開けると、すぐに青色の瞳と目が合った。……その綺麗な青色の瞳を持った人物は、白髪のダンディなイケメンだった。俺を見つめ、にやにy……いや、にこにこしている。白髪な事から、自分の父親ではないかと推測した。……それは当たりだったようだ。

「……おはよう、リア。私の、私達の4人目の子ども。……本当に愛らしいね」

 そう言って俺の頬を指でつんつん、と何度も突く。「あうえ(やめて)」と言うと、今度は抱き抱えられた。

 ……高い。怖い。

 ……これまで抱き抱えてくれたのは母とガイア、ミナぐらいだったので、父に抱き抱えられると高い高い。190くらいあるんじゃないのだろうか。前世で眺めていたよりも高い景色を見るのは久しぶりで怖くなってしまい、思わず泣いてしまった。

「うえぇ~~~ん!!!」

「リア!?!?」
 これには父も慌てた様子だ。
「う~ん……高い所が怖かったのかな……それとも私がまだ名乗ってないし、見た事ない人だったからかな……リア、君のお父様のアルドア・ユークリウッドだよ~……!」

 やはり父だったようだ。父、アルドアはまだ泣いている俺に困り果てて、必死に俺をあやして、泣き止ませようとしている。……丁度その時、後ろから声が聞こえてきた。

「……あなた!私が代わりますから、リアを私に渡してください」

「……リ、リイナ……!」

 父が後ろを振り返る。「リイナ」と呼んだのは、母だった。母はリイナと言うのか……初めて知った。

「よしよし、リア。久しぶりにあんなに泣いたわね、元気そうで良かったわ」

「え!?久しぶりに、泣いた……?ひょっとして、私、嫌われてる!?」

 ガーン!と効果音が思わず聴こえてきてしまうほど父は落胆している。その様子に、申し訳ないけれど、少し笑ってしまう。

「あら、リアが笑ってるわ!嫌われていないみたいで良かったですね、あなた」

 母が微笑むと、父もホッとした様子で、すぐに笑顔になった。

「あぁ。……リイナ。……本当に、この子は愛らしいね。天使のようだ」

「ふふ。だって、私達の子どもなんですから、可愛いのは当たり前ですよ。ガイアもファーニアとネーニアも、リアも、みーんな可愛いですね」

「リイナ。私は本当に幸せ者だよ。愛しい君と結婚できただけでなく、4人も子どもを授かったんだ。……しかも、みんな男の子。跡取りに困らなくて良いなってみんなから言われるよ。ありがとう、リイナ」

「あら、私はまだ女の子が欲しいわ!可愛い服を着せてあげるんです」

「ふふ、そうだね……頑張らなくては」

 父が母を抱き寄せ、優しく頭を撫でて、それから腰に手を回す。そして、2人の顔は段々と近づき……。


 ……あーはいはい!!!仲良いですね!!!夫婦円満はこっちも嬉しいですよこんちくしょう!!!
 非リアの俺は内心毒を吐きまくっていた。……良いもん、俺だって神に貰ったチート能力でモテモテになって可愛い子と結婚するんだから……って、そろそろ聞いててこっちが恥ずかしくなって来た頃合いですよ父さん母さん!!!帰ってこい!!!

 部屋の隅に控えていたハーデスが咳払いをし、「朝食の準備が整いました。旦那様、奥様」と言ったことで、父と母は、はっ、と気が付いた様子だった。グッジョブハーデス!!!

 そうして俺達は部屋を移動したのだった。


♢♢♢


「……リア!!!」

 食堂?に着くと、双子の他に、ガイアが座っていた。ガイアは俺を見るとすぐに駆け寄ってきた。

「ガイアったら初等学校に無理言って休みは家で過ごしたいなんて言って……ガイア、勉強できないとリアに笑われちゃうわよ」

「奥様。ガイア様は学年トップですよ」

「あら!そうなの!?凄いじゃないガイア!」

 前に見た事のある、母専属のメイドが母にそう伝えると、母の表情はたちまち明るくなった。そして、ガイアの頭を撫でた。

「それよりも、リア!俺にリアを抱かせてください母様!」

「あら、母様よりもリアの方が大事なの?もっと撫でて髪をボサボサにしてリアに笑われるような髪型にしてやろうかしら……それ~っ!」

「わ~っ!母様やめてください!大事です!2人とも大事ですよう!」

 2人の微笑ましいやり取りを見て、家族も使用人もみんな笑顔になる。……俺は実は、貴族というから、ユークリウッドは本当は前世でブームになってた悪役の子息や令嬢の家庭だったらどうしようかと思っていたのだ。しかし、それとは随分とかけ離れた、見ているだけで暖かい家庭だ。使用人も笑顔なんて、本当にすごいんじゃないだろうか。

「母様!ご飯冷めちゃうよ!ボクもお腹空いちゃった!」

 ファーニアが母に呼びかけ、ようやく朝食の時間だ。俺はまだ食べられないが、見ているだけで涎が出てしまうくらい、目の前に美味しそうな食事が広げられている。焼きたてのパンに、綺麗に焼けた目玉焼きにウインナー。キラキラ輝くフルーツ。定番の、洋風な朝食だ。

「「いただきます!」」


 こうして、ユークリウッド家の優雅な1日が始まるのだった。
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