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六章(4)

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「本当に、なんとお礼を申し上げたら良いか……!ありがとうございます!おかげで死なずに済みました……!」

 この人はユークリウッド家と同じくエルデント国の侯爵家、ミルドゥーク家の当主だと言う。
 俺は2歳からずっと教会や他国に行っていて忙しく、貴族のパーティーなどには参加した事がないから全然他の貴族を知らない。王や王子も知らない。知ろうとするとことごとく邪魔が入る。父とかガイアとかガイアとか。……まあ別に良いんだけど!可愛い令嬢なんて興味ないから!!別に他の兄弟にバンバカ縁談が来る事の負け惜しみじゃないから!!!

「これから聖者様はどのようなご予定で?」

「僕はエルデント王国に帰る予定です。久しぶりに家族に会うので、とても楽しみですね。ミルドゥーク様は?」

 笑顔を作って対応する。俺は自分では「僕」と言う。可愛い見た目のリアがいきなり「俺」なんて言い出したらびっくりするだろう。ましてや中身が30(+17)のおっさんだなんて知ったら両親は倒れてしまいそうだ。

「私とこの子も帰る予定なんです。隣国の伯爵家に商会についての交渉の用事があったから1ヶ月ほど滞在していたのです」

「それはお疲れ様です!僕も一応貴族なんですけど、なかなか交渉などで訪れる機会は無いですね……」

 ミルドゥーク家は商会に支援し、貴族の中でもお金持ちの家だ。他の国の貴族にも恥ずかしくないように、屋敷がとても豪華だった気がする。チラッとしか見てないから自信を持って言えないけど。

「それでは明日、ご一緒にエルデント王国に帰りましょう!お礼もしたいですし、ぜひ我が家に寄っていってください!」

 手を掴まれ、グッと身を近づけてきたので、少し引いて距離を保つ。

「そ、それはちょっと……。僕も教会に寄ったりなど予定がありますし、ミルドゥーク様のお屋敷にお邪魔させていただくわけには……」

「……そうですか……聖者様も忙しいですものね」

 あっさりと諦めてくれてホッとする。目がなんだかギラギラしていて怖かったのだ。

「それではミルドゥーク様、おやすみなさいませ。お大事にしてくださいね」

「は、はい!」

 大きな声で返事をしてくれた。元気になって良かった。
 俺はミルドゥークが戻った事を確認すると、元の席に座り、お腹が空いていたのでまたバイキングで食べ物を持ってきて、食べ始めたのだった。

 レイヤが凄く不機嫌そうな顔をしていたのはもう知らない。
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