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第08話 白百合の装飾品
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依頼を受けるところまでは順調に進み、戦闘に向かいかけたところで閃いた。この子達って不自然なほど強いとして、さすがに素手で戦わせるわけにいかないよね。
そうよ、武器と防具を買いに行こう!
「次は武器と防具を買いに行くよ」
「お金ないよ?」
「いいのよ。私のお小遣いで揃えるから。私の守護者なんだから遠慮は無用よ」
「はいっ!」
私は入り口近くにいた優しそうな組合女性に武器や防具の販売店を尋ねて、組合から承認された武器・防具屋に向かった。
エレナと合流して目的地に移動した私は店の作りを観察する。
店は私の感覚からすると小汚いが、一般大衆から見るとそれなりの高級店なのか、ガラス越しから見る限り客は一切いないようだ。
店の入り口で待っていると老婆の店員が寄ってきた。
「あなた達、店員さんに選んでもらいなさい」
「はいっ!」
老婆はなぜか嬉しそうに双子を鋭い目線で見つめている。
「ふむ、稀にみる資質の娘たち、高級スキルが活かせる逸品を見繕ってあげようかね。戦闘は固有魔法が中心のようじゃな」
老婆はなぜか店の奥に入って何やら探し物を始めた。
見ただけで少女達が秀でてるとか、それ以前に私が少女を戦闘させるとなぜ把握したのか。
わからないわ。
双子の武器と防具のほかに私の防具と護身魔道具や冒険必需品の類までそろえることになった。
早速試着したのは、老婆から組合活動に繊細で優雅な普段着ではダメだと諭されたからである。
町娘のファッションに浮かれて私たちは浮かれて店を出た。とても新鮮。
代金は組合を経由することになり支払っていない。
なんだか優越感に浸れるわね。
最初の依頼は採取系ではなく討伐依頼で、何か所か回って指定の害獣を駆除することが依頼内容である。
例の組合フランス人形が言うには、ランクは適正レベルまで上げたといい、討伐可能なランクになっているらしい。諺にもあるように”使えるものはゴブリンでも使え”だ。私は貴族の模範に違いない。
まあ、興味がなかったので理解してないが、優遇されたことは確かだろう。
依頼は実質的には移動時間だけで片付く簡単なもので、護衛が言うには少女達の実力は王家の野戦騎士団のトップクラスを遥かに凌ぎ、王国きっての逸材だという。
護衛が実力的に私は必要ないですねと頭を抱えていた。
そんな護衛を憐れむように見るエレナは、まだ子供なのにと驚く始末。
やっぱり、この子達って優秀過ぎる。
組合活動を難なくクリアーして報告を済ませた私たちはタウンハウスに戻った。
服装を他の侍女や母に見られて咎められたり心配されたりしたが、私が頑固で一途なことを理解しているからこそ、ちょっとした小言で済んだのだろう。
母の話によると、父から重要な話があると聞いているようで、その足で父である侯爵のもとを訪れることになった。
私は父の執務室に入る前に侍女のエレナに指示をだし、少女たちを控えの間に案内させて、待たせることにしたのだ。二人がエレナに連れられて行くのを見届けてから、護衛に促されて執務室に入った。
部屋の中には父である侯爵が一人座っている。執務中のようだ。
「失礼します。お待たせして申し訳ございません」
「カーラか手短に話そう」
「はい」
「我家にはエバートの手記という古文書が残されていて、白百合の乙女のことが記されている」
「また白百合……」
「まあ聞きなさい。エバートの手記とは伝承のような具体性のない内容であるが、白百合の記述には妙に緻密なところがあり、お前の誕生の奇跡やその後の行動は奇妙なほど文書と一致している」
「もしかして、わたくしの今後のことも?」
「そうだ。この文書内容の開示には制約があって当主しか閲覧できない。さらに未来についてはおぼろげで話せる内容は少ない。古文書は気がつくと追記されていくので、今と照らし合わせることが正しい使い方なのかもしれない」
その古文書怪しすぎない? 前世の大予言の書みたいに解釈しだいでどうにでもなるものじゃないかしら。私が疑問視するのをお構いなしに父はなおも話を続ける。
「それはさておき重要なことは、お前には試練が待ち受け、守護者達との邂逅、世界終末の回避とある」
「そんなことがわたくしに可能なのでしょうか?」
「わからん。だが、今までの流れから考えると何らかの事件に巻き込まれることは間違いあるまい」
「であれば、連れ帰った二人の少女をわたくしの侍女にしたく。お告げにある勇者にございます」
「二人の少女、片方はしゃべらない娘だな? しかし、そこまで一致するのか……。これは許すしかなく定められたことなのだろう。そうと知れたのなら、今後現れる勇者についても事前に許可しておく。心置きなくお前の判断で進めなさい」
スキリアのことはまだ話してないのに当てちゃったよ。もしかしなくても本物の予言書のようね。モザイカよりも優秀かも。てか、まって、ご先祖様も同じ陣営なのかな。
と、とりあえず、会話を続けなくては。
「はい、承知しました」
「本来は護衛に監視させたいところであるが、おそらく我が配下では護衛など果たせないことは明白。古文書に従うことは親として歯がゆいが、かわりに先祖より託された守護のバングルを渡そう」
父は準備していた白金の緻密な装飾の入った腕輪を私に手渡す。
それは白百合のバングル。
私は想定外のことが多すぎて疲労回復のため、自室に戻ってくつろいでいる。展開が急すぎるのでモザイカに現状分析してもらい、注意すべきことや今後の行動についてアドバイスを求めた。
「そうだ、モザイカ。守護者ってどんなタイミングで現れるの?」
『ステージによって人数がランダムで増えます。従い毎回増えるとは言えません』
「今はステージ1なのに守護者が二人なのはどうして?」
『これもランダムです』
「守護者は召喚されていても出会えない系かな」
『行動エリアに起因するものと推測します。クエストなどが一例でしょう』
「難しいね」
『現在はステージレベルで開放されていない機能が多く実績が重要です』
結構というか、モザイカはとても優秀なAIで役に立つし、下手なブレインや取り巻きなど必要ないレベルである。明日は依頼レベルを上げて、依頼目標は丘陵地帯が吉と占いに出た。
なんの占いかわからないけど。
そうよ、武器と防具を買いに行こう!
「次は武器と防具を買いに行くよ」
「お金ないよ?」
「いいのよ。私のお小遣いで揃えるから。私の守護者なんだから遠慮は無用よ」
「はいっ!」
私は入り口近くにいた優しそうな組合女性に武器や防具の販売店を尋ねて、組合から承認された武器・防具屋に向かった。
エレナと合流して目的地に移動した私は店の作りを観察する。
店は私の感覚からすると小汚いが、一般大衆から見るとそれなりの高級店なのか、ガラス越しから見る限り客は一切いないようだ。
店の入り口で待っていると老婆の店員が寄ってきた。
「あなた達、店員さんに選んでもらいなさい」
「はいっ!」
老婆はなぜか嬉しそうに双子を鋭い目線で見つめている。
「ふむ、稀にみる資質の娘たち、高級スキルが活かせる逸品を見繕ってあげようかね。戦闘は固有魔法が中心のようじゃな」
老婆はなぜか店の奥に入って何やら探し物を始めた。
見ただけで少女達が秀でてるとか、それ以前に私が少女を戦闘させるとなぜ把握したのか。
わからないわ。
双子の武器と防具のほかに私の防具と護身魔道具や冒険必需品の類までそろえることになった。
早速試着したのは、老婆から組合活動に繊細で優雅な普段着ではダメだと諭されたからである。
町娘のファッションに浮かれて私たちは浮かれて店を出た。とても新鮮。
代金は組合を経由することになり支払っていない。
なんだか優越感に浸れるわね。
最初の依頼は採取系ではなく討伐依頼で、何か所か回って指定の害獣を駆除することが依頼内容である。
例の組合フランス人形が言うには、ランクは適正レベルまで上げたといい、討伐可能なランクになっているらしい。諺にもあるように”使えるものはゴブリンでも使え”だ。私は貴族の模範に違いない。
まあ、興味がなかったので理解してないが、優遇されたことは確かだろう。
依頼は実質的には移動時間だけで片付く簡単なもので、護衛が言うには少女達の実力は王家の野戦騎士団のトップクラスを遥かに凌ぎ、王国きっての逸材だという。
護衛が実力的に私は必要ないですねと頭を抱えていた。
そんな護衛を憐れむように見るエレナは、まだ子供なのにと驚く始末。
やっぱり、この子達って優秀過ぎる。
組合活動を難なくクリアーして報告を済ませた私たちはタウンハウスに戻った。
服装を他の侍女や母に見られて咎められたり心配されたりしたが、私が頑固で一途なことを理解しているからこそ、ちょっとした小言で済んだのだろう。
母の話によると、父から重要な話があると聞いているようで、その足で父である侯爵のもとを訪れることになった。
私は父の執務室に入る前に侍女のエレナに指示をだし、少女たちを控えの間に案内させて、待たせることにしたのだ。二人がエレナに連れられて行くのを見届けてから、護衛に促されて執務室に入った。
部屋の中には父である侯爵が一人座っている。執務中のようだ。
「失礼します。お待たせして申し訳ございません」
「カーラか手短に話そう」
「はい」
「我家にはエバートの手記という古文書が残されていて、白百合の乙女のことが記されている」
「また白百合……」
「まあ聞きなさい。エバートの手記とは伝承のような具体性のない内容であるが、白百合の記述には妙に緻密なところがあり、お前の誕生の奇跡やその後の行動は奇妙なほど文書と一致している」
「もしかして、わたくしの今後のことも?」
「そうだ。この文書内容の開示には制約があって当主しか閲覧できない。さらに未来についてはおぼろげで話せる内容は少ない。古文書は気がつくと追記されていくので、今と照らし合わせることが正しい使い方なのかもしれない」
その古文書怪しすぎない? 前世の大予言の書みたいに解釈しだいでどうにでもなるものじゃないかしら。私が疑問視するのをお構いなしに父はなおも話を続ける。
「それはさておき重要なことは、お前には試練が待ち受け、守護者達との邂逅、世界終末の回避とある」
「そんなことがわたくしに可能なのでしょうか?」
「わからん。だが、今までの流れから考えると何らかの事件に巻き込まれることは間違いあるまい」
「であれば、連れ帰った二人の少女をわたくしの侍女にしたく。お告げにある勇者にございます」
「二人の少女、片方はしゃべらない娘だな? しかし、そこまで一致するのか……。これは許すしかなく定められたことなのだろう。そうと知れたのなら、今後現れる勇者についても事前に許可しておく。心置きなくお前の判断で進めなさい」
スキリアのことはまだ話してないのに当てちゃったよ。もしかしなくても本物の予言書のようね。モザイカよりも優秀かも。てか、まって、ご先祖様も同じ陣営なのかな。
と、とりあえず、会話を続けなくては。
「はい、承知しました」
「本来は護衛に監視させたいところであるが、おそらく我が配下では護衛など果たせないことは明白。古文書に従うことは親として歯がゆいが、かわりに先祖より託された守護のバングルを渡そう」
父は準備していた白金の緻密な装飾の入った腕輪を私に手渡す。
それは白百合のバングル。
私は想定外のことが多すぎて疲労回復のため、自室に戻ってくつろいでいる。展開が急すぎるのでモザイカに現状分析してもらい、注意すべきことや今後の行動についてアドバイスを求めた。
「そうだ、モザイカ。守護者ってどんなタイミングで現れるの?」
『ステージによって人数がランダムで増えます。従い毎回増えるとは言えません』
「今はステージ1なのに守護者が二人なのはどうして?」
『これもランダムです』
「守護者は召喚されていても出会えない系かな」
『行動エリアに起因するものと推測します。クエストなどが一例でしょう』
「難しいね」
『現在はステージレベルで開放されていない機能が多く実績が重要です』
結構というか、モザイカはとても優秀なAIで役に立つし、下手なブレインや取り巻きなど必要ないレベルである。明日は依頼レベルを上げて、依頼目標は丘陵地帯が吉と占いに出た。
なんの占いかわからないけど。
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