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第09話 守りの盾って?
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翌朝、それも相当早く目を覚まし、見つかると厄介な兄や妹に出会わないように夜明け前に身支度をして外出した。モザイカの勧めで草原にいる害獣を餌として使うと依頼が円滑に進むという。
貴族令嬢らしく興味のないことは全然関心のない私は突き進むのみ。少しも理解してないが気晴らしも兼ねて草原で狩りをすることにして、現場に到着すると少女二人に害獣退治の指示を出した。
私は見学である。
少女たちは双子だけあって絶妙なコンビネーションで害獣を誘導しては5頭単位で追い込んでまとめて処理している。もはや曲芸師の特訓みたいに研ぎ澄まされた技能は見事である。
芸術よねと囁きながら見学していると麻のベルトにぶら下げた黒の手帳が震える。
気になるので覗き込むとモザイカからだった。
「取り込み中よ! いったい何?」
「主様、護身のためには戦闘経験が必要になります。積極的な戦闘訓練を提案します」
「あの子たち強いし、私が覚えないといけない理由がわからない、何か問題があるの?」
「過去のデータから推測しますと戦闘経験が生存率と比例します」
「えっ! 守護者任せではまずいってこと?」
「保有データより致死率、訓練、志向等の解析結果から明らかに身体防御と生存率に相関が認められます」
私は血の気が引いてきた。まずいじゃない。
「死にたくないわ……」
「主様の生存率の向上と守護者探しに守りは必須にございます」
「そうね! 忠告に従うわ。武器もあったほうがいいわよね」
「武器はショートソードを最初にお使いください。そのうち長いものに変更します」
「餌集め終わって、朝食を済ませてから買いに行くかな」
私たちは狩場を離れ、エリシャにエサの入った生き血の滴る麻袋を背負ってもらった。
飲食店では店員に嫌な顔をされながらも朝食にありついた。血の匂いがするけどこの際しかたない。
私はスープと硬めのパンで満腹になる。双子はというと驚くほど大食家で見ていて微笑ましかった。
食べたものがどこに消えていくのか。
謎である。
そして優雅な朝食が終わり、武器店が開くまでお茶をしながら待って、武器と必要なものをモザイカに見繕ってもらい購入した。剣は大量生産品で特徴はない。
武器を眺めながら思う。もしも、最初から戦えって言われていたら絶対に戦わなかったけれど、実際の戦闘のことを知った今なら防御の必要なことは理解できる。理解だけ……だけどね。
しかし、モザイカって策士よね。とても誘導がうまいわ。
でも、本音を言えば戦闘などやりたくない。
やる気の起きない私は足を引きずりながら武器を買ったその足で組合に向かい依頼を受注した。
受付嬢と軽く雑談した後で、狩場になる場所である海岸に面した荒れ地に出発した。
街道を道なりに荷車モドキに乗って移動している。組合で借りたもので牛に似た動物が牽引している。
複数人が立って乗れる戦車もあったけど、私のイメージではないので断ったらこうなった。
少女の御者と若い娘が突っ立つ荷車は異様である。これ、どう見ても戦う農民でしょ。
決めたっ! 次はキンピカの鎧と戦車にしよう。
海岸が見えてきた。荒れ果てた砂浜にはゴミや海藻が流れっぱなしになっていて、よく見ると動物の死体もある。なんだか海から風に乗って腐敗臭が漂ってくる。
この時点でギブアップ寸前である。
スカーフをぐるぐる巻きにするが効果なし。
「姫様そのうちになれるよ。それとね、黒くて弱い魔物が出るから用心してね」
「なんってことよ……。しかたないわね! やりますとも。私にとってデビュー戦よ!!」
「姫様がんばって!」
「任せて勇者たち! そして、出てこい魔物とやら」
叫ぶが早いか黒い魔物が一ダースほど浜から這い上がってくる。
私は剣を抜こうとするが鞘から抜けず四苦八苦。
黒い魔物は黒い剛毛に覆われ、口から赤い舌が覗き目鼻は剛毛で見えない。
「クキキキ! マヌケ!! クキキキキ!」
「魔物がしゃべった! 人語を解するなんて生意気。許さないんだからね」
私は笑われて赤面しながらどうにか剣を抜いた。いえ、抜いたと思ったのだけれど……。
剣は放物線を描いて後ろに飛んでいく。
「あれー――っ」
勢い良く振り出したのと、握力がないから剣をしっかり握れず招いてしまった醜態である。
「クキキキ! バカダヨ!! クキキキキ!」
「姫様、スキリアがとってくるから荷台から降りて防戦体制を!」
「エリシャはどうするの」
「守りの盾になりますね! 私の愛しき土壁よ! 土壁!! 私に力を貸して」
「魔法を唱えた?」
足元の地面から土でできた5輪の旋回する風車が砂塵を巻き上げて姿を現し、巨大な盾は回転しながら土埃を飛ばしエリシャの前に展開する。驚く暇もなく黒いのたちは風車の飛ばす砂礫でみじん切りになっていた。
「守りって何よ。 破壊の盾の間違いでしょ!!」
「強いのは倒せないよ。弾いて飛んでいくだけ」
「ぐっ……私と黒いのが等しく弱いってことね」
黒い毛むくじゃらは一瞬で消え去り、黒い抜け毛の剛毛だけが海に向かって飛ばされている。
まるで暴風、ハリケーンなのよね。
岩石風車、恐るべし。
放心から覚めるとスキリアが私の横に立ち剣を差し悪気なく微笑んでいる。
「あ、ありがとうスキリア。今度は剣を飛ばさないようにするね……」
「がんばれ! 姫様!!」
エリシャの応援にこたえて剣を構えて敵を待つ。海から毛むくじゃらがワラワラと沸き立って現れる。
まさに沸騰するように次々と出現して、私を目指し我先にと駆けてくる。
魔物はわき目も振らず集まってきた。
100匹単位なのでは……。
貴族令嬢らしく興味のないことは全然関心のない私は突き進むのみ。少しも理解してないが気晴らしも兼ねて草原で狩りをすることにして、現場に到着すると少女二人に害獣退治の指示を出した。
私は見学である。
少女たちは双子だけあって絶妙なコンビネーションで害獣を誘導しては5頭単位で追い込んでまとめて処理している。もはや曲芸師の特訓みたいに研ぎ澄まされた技能は見事である。
芸術よねと囁きながら見学していると麻のベルトにぶら下げた黒の手帳が震える。
気になるので覗き込むとモザイカからだった。
「取り込み中よ! いったい何?」
「主様、護身のためには戦闘経験が必要になります。積極的な戦闘訓練を提案します」
「あの子たち強いし、私が覚えないといけない理由がわからない、何か問題があるの?」
「過去のデータから推測しますと戦闘経験が生存率と比例します」
「えっ! 守護者任せではまずいってこと?」
「保有データより致死率、訓練、志向等の解析結果から明らかに身体防御と生存率に相関が認められます」
私は血の気が引いてきた。まずいじゃない。
「死にたくないわ……」
「主様の生存率の向上と守護者探しに守りは必須にございます」
「そうね! 忠告に従うわ。武器もあったほうがいいわよね」
「武器はショートソードを最初にお使いください。そのうち長いものに変更します」
「餌集め終わって、朝食を済ませてから買いに行くかな」
私たちは狩場を離れ、エリシャにエサの入った生き血の滴る麻袋を背負ってもらった。
飲食店では店員に嫌な顔をされながらも朝食にありついた。血の匂いがするけどこの際しかたない。
私はスープと硬めのパンで満腹になる。双子はというと驚くほど大食家で見ていて微笑ましかった。
食べたものがどこに消えていくのか。
謎である。
そして優雅な朝食が終わり、武器店が開くまでお茶をしながら待って、武器と必要なものをモザイカに見繕ってもらい購入した。剣は大量生産品で特徴はない。
武器を眺めながら思う。もしも、最初から戦えって言われていたら絶対に戦わなかったけれど、実際の戦闘のことを知った今なら防御の必要なことは理解できる。理解だけ……だけどね。
しかし、モザイカって策士よね。とても誘導がうまいわ。
でも、本音を言えば戦闘などやりたくない。
やる気の起きない私は足を引きずりながら武器を買ったその足で組合に向かい依頼を受注した。
受付嬢と軽く雑談した後で、狩場になる場所である海岸に面した荒れ地に出発した。
街道を道なりに荷車モドキに乗って移動している。組合で借りたもので牛に似た動物が牽引している。
複数人が立って乗れる戦車もあったけど、私のイメージではないので断ったらこうなった。
少女の御者と若い娘が突っ立つ荷車は異様である。これ、どう見ても戦う農民でしょ。
決めたっ! 次はキンピカの鎧と戦車にしよう。
海岸が見えてきた。荒れ果てた砂浜にはゴミや海藻が流れっぱなしになっていて、よく見ると動物の死体もある。なんだか海から風に乗って腐敗臭が漂ってくる。
この時点でギブアップ寸前である。
スカーフをぐるぐる巻きにするが効果なし。
「姫様そのうちになれるよ。それとね、黒くて弱い魔物が出るから用心してね」
「なんってことよ……。しかたないわね! やりますとも。私にとってデビュー戦よ!!」
「姫様がんばって!」
「任せて勇者たち! そして、出てこい魔物とやら」
叫ぶが早いか黒い魔物が一ダースほど浜から這い上がってくる。
私は剣を抜こうとするが鞘から抜けず四苦八苦。
黒い魔物は黒い剛毛に覆われ、口から赤い舌が覗き目鼻は剛毛で見えない。
「クキキキ! マヌケ!! クキキキキ!」
「魔物がしゃべった! 人語を解するなんて生意気。許さないんだからね」
私は笑われて赤面しながらどうにか剣を抜いた。いえ、抜いたと思ったのだけれど……。
剣は放物線を描いて後ろに飛んでいく。
「あれー――っ」
勢い良く振り出したのと、握力がないから剣をしっかり握れず招いてしまった醜態である。
「クキキキ! バカダヨ!! クキキキキ!」
「姫様、スキリアがとってくるから荷台から降りて防戦体制を!」
「エリシャはどうするの」
「守りの盾になりますね! 私の愛しき土壁よ! 土壁!! 私に力を貸して」
「魔法を唱えた?」
足元の地面から土でできた5輪の旋回する風車が砂塵を巻き上げて姿を現し、巨大な盾は回転しながら土埃を飛ばしエリシャの前に展開する。驚く暇もなく黒いのたちは風車の飛ばす砂礫でみじん切りになっていた。
「守りって何よ。 破壊の盾の間違いでしょ!!」
「強いのは倒せないよ。弾いて飛んでいくだけ」
「ぐっ……私と黒いのが等しく弱いってことね」
黒い毛むくじゃらは一瞬で消え去り、黒い抜け毛の剛毛だけが海に向かって飛ばされている。
まるで暴風、ハリケーンなのよね。
岩石風車、恐るべし。
放心から覚めるとスキリアが私の横に立ち剣を差し悪気なく微笑んでいる。
「あ、ありがとうスキリア。今度は剣を飛ばさないようにするね……」
「がんばれ! 姫様!!」
エリシャの応援にこたえて剣を構えて敵を待つ。海から毛むくじゃらがワラワラと沸き立って現れる。
まさに沸騰するように次々と出現して、私を目指し我先にと駆けてくる。
魔物はわき目も振らず集まってきた。
100匹単位なのでは……。
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