白百合のカーラは死にたくない 〜正義感だけは英雄並みの転生令嬢は守護勇者に頼った生存戦略から脱却する〜

楠嶺れい

文字の大きさ
29 / 50

第29話 古書の精霊モザイカ

しおりを挟む
 夕食はビエレッテの作ったキノコ鍋で香味野菜、葉物野菜、白菜のようなものとキノコが煮込まれ、キノコ等の出汁が出た薄い塩味の薬湯料理のようなものだ。主食は芋の蒸し焼きとシンプル極まりない。

 シンプルと言っても、自然の中で食べる料理はとてもおいしい。
 ビエレッテがいてよかったと思う瞬間だった。

 食事は和やかに終わり、双子は残り物を平らげていた。
 みんなが双子の食べっぷりに驚き、どこに入るのか気にしている。

「そういえば、カーラ様はウリス湖底に眠る乙女の伝承のこと知ってますか?」
「湖底の乙女?」
「オスカーその話、かなりマイナーだぞ。他領の人は知らぬ」
「そうなんだけど、僕の好きな話なんだよね」
「よし、それなら私が語り部になってやろうじゃないか!」

 ビエレッテの語る話は切ない物語。エバートの初恋の人が魔女の呪いを受けて、呪いを広めないため湖に入水する話である。旅から戻ったエバートはことを聞き及び覚醒、魔女討伐することになるのだとか。

 雑な話だったけど、いつか調べてみたいと思ってしまった。
 テーマは好きだから。

「オスカーは乙女の手により覚醒したい。そんな願望を抱いてるのか? 青いな!」
「ちがう! 僕は好きな人のために戦えるエバートが理想なんだ」
「熱く語るね、オスカー。英雄エバートは愛に生きた人だよ」

 ビエレッテはオスカー君の頭をクシャクシャにしながら戯れる。
 仲が良くて羨ましい。

 ちょっと嫉妬しているのかもしれない。

「初恋の人が眠る湖。神秘的ね」
「なんといってもカーラ様のご先祖様だからな。辺境伯家とは縁があるのだろう」

 ビエレッテは笑いながら手を振って見張りに立つようだ。
 夜になり双子は早めに寝かせてしまい、私はオスカー君にら郷土のことを教えてもらう。



 明日の朝に備えて眠ることにした。私は牛荷車の荷台に登り寝転がって星空を眺める。

 さて、オスカー君に勧められた敵と味方についてモザイカに質問しなくては、それに最近感じる違和感、疑問も含めて問いたださないと。

 黒の手帳を取り出して私はモザイカを呼び出した。

「モザイカ、聞きたいことがあるのだけれど」
『主様、なんでございましょう?』
「あなたは何者なの」
『古書の精霊モザイカにございます』
「私は想い込みが激しいからスルーしてたけど、精霊なのよね?」
『はい、私は古文書に零体として縛られる精霊です』

 妖精と思い込んでたけど、やっぱり精霊。聖女ハリエットと会話しなければ混同したままだった。
 これも守護の一種なのかしら。
 チュートリアルとか名前変更は精霊のユーモアだったの? 
 いえいえ、そんなこと聞いても意味はない。

「古文書のことを教えてくれないかしら」
『約定はカーラ様とは結ばれておりません。残念ですがお答えは致しかねます』
「そう、約定を新たに結ぶか、制限を解除する方法はないの?」
『カーラ様の呪いを払い、覚醒されることが唯一の道です。これ以上はお答えできません』
「呪い? いったい何なのよそれ」
『不利な制限が多いと思われませんでしたか。ステータス然り、スキルもない』
「今の私は呪われてるのね。これ以上は話してくれないのでしょう?」
『解呪のための導きは可能です。既にクエストとして提案させていただいています』

 私は呪いを受けている。誰から?
 覚醒が必要ときた。

 そうだ、クルートと敵対勢力のことを確認しないと、教えてくれるならだけど。
 そもそも、モザイカはクルート陣営なのだろうか。

「質問を変えるわね。モザイカあなたはクルートの支援者なの?」
『違います。単に黒の手帳に宿っていて機能を掌握しております。クルート、敵対勢力のドラゲアのどちらにも属しません』
「クルートの手帳を乗っ取り、あなたの思うように扱えると。違うモザイカ?」
『さようにございます』

 また爆弾発言だよ。でも、助けてくれているのよね。私を。

「モザイカ、あなたが私を助ける理由は?」
『約定に定められしこと』
「また約定に縛られていて明確に答えられない。それなら守護勇者とはなに? クルートとも関係ないようだけど」
『約定によるとしか申し上げられません』
「女神たちの意志でもないわよね?」
『主様のおっしゃる女神は我々の妨害をしています。これがぎりぎりの回答でございます』

 私は何と戦っているのだろう。いや何に弄ばれているのか、呪い、女神の妨害、敵対勢力。
 もう訳が分からない。

 重要なことは生き残ること、生き延びることが私の目的なのは変わらない。


 では、やることは一つ。覚醒して呪いを解く。これしかない。
 行動すれば道は自ずと開ける。

「モザイカ、覚醒するためには何をすればいいの?」
『先ずは妖精の涙、そしてエバートの指輪が必要になります』
「案内はしてくれるのよね。ガイドかな?」
『はい、約定に定められしこと。嘘偽りはございません』
「わかったわ」

 今までの話の流れからいえること、それは妖精の涙が存在するということは確定した。
 そして、妨害もあるはず。

 妖精の涙を入手することの詳細はモザイカからは聞けない。
 これは、過去の経緯からそう考えられる。

 私の行いで道が開けてきたのだから間違いなどない。
 そう知れたのだ早く寝たほうがいい。


 朝霧が出たなら妖精に出会える。そんな気がする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

魔法使いの国で無能だった少年は、魔物使いとして世界を救う旅に出る

ムーン
ファンタジー
完結しました! 魔法使いの国に生まれた少年には、魔法を扱う才能がなかった。 無能と蔑まれ、両親にも愛されず、優秀な兄を頼りに何年も引きこもっていた。 そんなある日、国が魔物の襲撃を受け、少年の魔物を操る能力も目覚める。 能力に呼応し現れた狼は少年だけを助けた。狼は少年を息子のように愛し、少年も狼を母のように慕った。 滅びた故郷を去り、一人と一匹は様々な国を渡り歩く。 悪魔の家畜として扱われる人間、退廃的な生活を送る天使、人との共存を望む悪魔、地の底に封印された堕天使──残酷な呪いを知り、凄惨な日常を知り、少年は自らの能力を平和のために使うと決意する。 悪魔との契約や邪神との接触により少年は人間から離れていく。対価のように精神がすり減り、壊れかけた少年に狼は寄り添い続けた。次第に一人と一匹の絆は親子のようなものから夫婦のようなものに変化する。 狂いかけた少年の精神は狼によって繋ぎ止められる。 やがて少年は数多の天使を取り込んで上位存在へと変転し、出生も狼との出会いもこれまでの旅路も……全てを仕組んだ邪神と対決する。

処理中です...