白百合のカーラは死にたくない 〜正義感だけは英雄並みの転生令嬢は守護勇者に頼った生存戦略から脱却する〜

楠嶺れい

文字の大きさ
34 / 50

第34話 仮面の女

しおりを挟む
 私たちは不気味な枯れ木を避けながら、禿山を目指して歩いている。正直にいえばお化け屋敷なみに怖い。

 風で枝が揺れると乾いた音が鳴り響き、思わず縮み上がってはキョロキョロと確認を繰り返す。心理的な圧迫はそれだけではない。道が開けたと思うと枯れ木林に突入するという、ホラー映画のような嫌がらせに私は涙する。

 しばらく進んでいると怪しい石畳の道が出現して、ビエレッテが罠を疑い調査をかってでた。
 手持無沙汰な私は道端にある怪しい石碑の存在に気づいてしまう。

 恐るおそる近寄って観察すると、石碑に枯れ木坂と書かれていた。

「フレデリック様、この道は正規の街道だったの?」
「昔は麓の町から禿山まで直通していたらしく、手入れを怠ったのか枯れ木に覆われたようです」
「そうなのね。多少なりとも歩きやすくなったから警戒しながら進みましょう」

 そういえばハリエットの言っていたことが気になってくる。獣騎士と守護勇者、それに聖女たちの関係を確認しておかなくては。思いだした時に聞く、これは忘れっぽい私に必要なこと。

 余計なことをあれこれ考えていたら、もう少しで忘れるところだった。

「ちょっと休憩するわよ」

 ビエレッテはお茶の準備をはじめ、みんな喜んで待っている。
 私はモザイカに確認。

 私は人を避けてモザイカを取り出した。
 質問内容を他者に聞かれてはならないからだ。そう、極秘なのだ。

「モザイカ、教えて頂戴」
『主様、なんでございますか?』
「獣騎士について話せる内容はあるのかしら?」
『守護勇者とは役割が異なります。主様と魂で繋がる存在です』
「なんとなく推測できたわ。私の呪いと辺境伯家の呪いは同じもの?」
『主様の呪いが影響を及ぼしています』

 予想していたことだわ。私が解呪しないと彼らの呪いは解けない。
 そして彼らが獣騎士の可能性が高い。

「守護勇者とは何者なの。精霊、人、それとも超常的な存在なの?」
『人として生まれ、この世界に選ばれしもの。これ以上は約定違反になります』
「聖女は?」
『聖女も世界の祝福を受けています』

 守護勇者、獣騎士、聖女は創造主か創造神に紐づく存在ということね。
 たぶん私も。

「聖女や教会とモザイカは敵対してるの?」
『大元は一つです。ただし、今の主様の状態では敵対に近いでしょう』
「いつの間にか在籍していたクルートとの関係かしら」
『はい、女神達の妨害の一つです』
「そもそも、女神が妨害する目的はなに?」
『クルートの手帳より推測できる情報がありません』

 待って、双子に出会ったのって女神の啓示だったはず。
 違ったかしら。

「女神の妨害って守護勇者関連でもあったの?」
「はい。何度も妨害を受けています」

 クルートとの関係、表面上は仲間でも実際は敵対しているのと変わらない。
 女神たちの妨害か……。

 時間があるときに出会いについてエリシャに聞いてみよう。
 スッキリしないこの話は。

 聖女ハリエットは苦手だけど、適切なタイミングでヒントを与えてくれる。
 モザイカよりもガードは緩い。でも腹を割って話せない。

 最悪な展開。




 質問を終えて仲間たちとお茶をする。私と敵対する勢力は多い。お茶が美味しく感じない。

 休憩を終えて禿山を目指して枯れ木坂を登っていく。
 景色は単調でほとんど変化しない。
 霧はいつ晴れるのだろうか。

「姫様、前方に人がいます」
「聖女たちかしら」
「違います。獣の臭いがします」

 獣ってなんだろう。魔物って言わなかったから獣人?
 この世界にいないはず。

「姫様、気づかれました。こっちに来ます」
「防戦の準備して」

 待ち構えていると3人の人影が現れる。霧を抜けてきたのは女が二人に男一名。

 二人は獣のような容姿、もう一人の女は白い能面のような仮面をつけている。
 これ敵対者ね。


 獣女が私たちを見て鼻を突きだし目を細める。

「おや、クルートの臭いがするわ」
「どうする?」
「私一人で大丈夫よ。貴方達は聖女を追って」

 獣たちは私をチラッと見てうなずく。仮面女だけが残って獣臭のする二人は霧に消えていった。
 この状況、戦うしかなさそうね。

「あなたは誰なの仮面の人」
「名乗ると思ったの。個人情報よ。教えるはずないでしょう」
「どこかで会ったことがある気がするけど?」
「さあどうでしょう? そうね私は餓鬼のほむらドラゲアの魔人候補エヴリンでいいわ」
「取って付けたような名前に投げやりな台詞……」

 女は手に何かを握っている。枯葉のついた蓑虫ミノムシみたいな物体だった。

「名乗ったことだし、敵対者の貴方を殺して我がものとしましょうか」
「まって、あなたも敵を捕食するの?」
「敵の能力を得るには必要な儀式よ。貴方たちはレベルアップの糧なのよ!」

 女は剣を抜き構えた。逆手にはミノムシを持ったままだ。
 何かのアイテムなのか不気味である。

 スキリアとビエレッテは女に向かっていき、エリシャは中間地点まで進み待機、オスカー君、フレデリック様は私の前で剣を抜く。

 相手の攻撃手段がわからないので変則な位置取りになっている。
 女は前に出る。


 ついに仮面の女とビエレッテが激突、打ち合っては後退を繰り返す。
 メアリーよりも基礎ができている。

 間合いの外側からスキリアが魔法攻撃を繰り出すと、仮面はミノムシで弾く。
 ビエレッテはスキリアの攻撃に合わせて剣戟を飛ばすが、曲芸のようにかわされていた。

 エリシャが設置魔法を各種展開するが効果が薄い。
 こちらの魔法と相性が悪いようだ。

「スキリア! 魔法きかない」

 スキリアも剣を作り出し近接戦闘に加わった。交互に攻撃したり、連携して同時に突き込んだりして女の攻撃を封じている。

 仮面の女は明らかに押されている。

「悔しいけど、ちょっとこちらが不利ね」

 女は回避が厳しくなりビエレッテの剣戟を被弾して、吹き飛ばされていく。受け身が取れない女は枯れ木にぶつかって、よろめきながら立ち上がる。

 ダメージはあるが致命傷には程遠い。


「よくも……。こうなれば奥の手を使う! 私は最強の魔人になる!!」
「おい、何を言ってるっ!」

 ビエレッテは怒鳴り、スキリアは女に向かって距離を詰めている。

「ホホホホ! この妖精エーベルを取り込んで深化レベルアップする」
「狂ってる」

 女は仮面をとって、手に持っていた妖精エーベルミノムシを咥えて飲み込んだ。


 私はその顔に見覚えがある。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

魔法使いの国で無能だった少年は、魔物使いとして世界を救う旅に出る

ムーン
ファンタジー
完結しました! 魔法使いの国に生まれた少年には、魔法を扱う才能がなかった。 無能と蔑まれ、両親にも愛されず、優秀な兄を頼りに何年も引きこもっていた。 そんなある日、国が魔物の襲撃を受け、少年の魔物を操る能力も目覚める。 能力に呼応し現れた狼は少年だけを助けた。狼は少年を息子のように愛し、少年も狼を母のように慕った。 滅びた故郷を去り、一人と一匹は様々な国を渡り歩く。 悪魔の家畜として扱われる人間、退廃的な生活を送る天使、人との共存を望む悪魔、地の底に封印された堕天使──残酷な呪いを知り、凄惨な日常を知り、少年は自らの能力を平和のために使うと決意する。 悪魔との契約や邪神との接触により少年は人間から離れていく。対価のように精神がすり減り、壊れかけた少年に狼は寄り添い続けた。次第に一人と一匹の絆は親子のようなものから夫婦のようなものに変化する。 狂いかけた少年の精神は狼によって繋ぎ止められる。 やがて少年は数多の天使を取り込んで上位存在へと変転し、出生も狼との出会いもこれまでの旅路も……全てを仕組んだ邪神と対決する。

処理中です...