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第4話 愛の熱量
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王妃様は60歳くらいの年齢だったはずで原種のバラのように生命感あふれる素敵な方だ。病気と聞いたことはなく何故この依頼が飛び込んできたのか想像すらできない。意識がないということも気がかりである。
今回の依頼はイレギュラーで、事前に本人から希望を聞くことはできない。私が事前情報や関係者の話を聞いてプランニングするしかないのだ。
私はシナリオを作成して、ストーリーを紡いでいった。この術の難しいところは記憶素材や展開等は被術者の無意識から拾い上げるという制約があり、突飛な展開や現実離れした内容になりやすい。それは夢に縛られるからだと先人達は言っていた。
ある意味で即興芸術と何らかわらない。
離宮から王妃様の筆頭侍女が現れて私に深く頭を下げる。ついに夢現術を使う時が来たのだ。私は略式礼をとり侍女に連れ垂れて王妃様が眠られている離宮に向かった。
私は王妃様の傍らの専用寝具に横になり意識のリンクを開始した。ここから先は私も王妃様の意識に捕らわられる。食事と排泄は魔導寝具に組み込まれていて、慣れないうちは苦労したものだ。この状態で仮眠を維持する期間は、下手すると数日以上に及ぶことも。
私は王妃様の魂の輝きが少しずつ大きくなるのを意識空間で眺めている。
数日経過したころに王妃様の魂が燃え上がる。発火現象だ。
私は王妃様の夢に潜り込む。
私は覚醒する。
暗い空間。
私の目の前には数えきれない青白い焔が輝いている。私はそれを想いと呼ぶ。
想いの輝き方は異なり、まるで星空のようだ。
小さな炎から燃え尽きていく。
記憶と夢は違う。魂が求めてやまない埋もれた思い出、記憶から零れ落ちたものたち、それらはすでに記憶の彼方にある。忘れてしまったからこそ、見つけてもらいたくて魂は強く輝くのだ。忘れたくないという潜在意識、根拠のない渇望、無意識の欲求、他にもあるだろう。明るく輝く焔ほど、その想いは重いのだ。
焔が燃え尽きるとき、魂はひときわ強く光を放つ。
輝きは蓄積され、その輝きを目視できたのが魂の発火現象と言われている。
私は大きな焔を集めて一つにすると、燃え上がる焔は球状になり輝きを増す。私は念じる。
「さあ、開演よ!」
叫びに呼応するように空間は白く染まる。
目が慣れてくると夢の世界が広がっている。
見渡す限り白を基調にした土地、大地にはクレーターが至るところに散らばっている。前方には宮殿が聳え立ち、そこに続く石段と門柱が見えてくる。
宮殿の門に到着すると扉は自動的に開いていく。私の意思とは関係なく門の先にある闇に引き込まれてしまった。
闇には穏やかで大きな瞳が光り、こちらを瞬きもせず見つめている。やがて、暗雲は流れ去り、闇は散っていき光の帯が天より降り注いだ。
新たな世界が構築され始め、オーロラが湧き出し、星が降る。
そして世界は輝きに満たされた。
ここまでは夢の導入部分で王妃様の無意識が作り出す情景。そう、これからが私の腕の見せ所で創作夢の幕が上がる瞬間でもある。
早朝の湖、朝露に濡れる草 白い表皮の木々が湖に浸かっている。湖底からは二人の若い男女が浮き上がってくる。国王様と王妃様の若かりし姿だろう。
二人は見つめ合ったまま旋回している。そうなるのは足元にある円盤状の床が回っているからだ。
どう見ても服や髪が濡れてないが、突っ込まないことにした。しかし、出現の仕方は想定外だった。というより最初からシナリオ無視でスタートしている。
円盤の床からストーンサークルが伸びだして二人を包み込み、聖なる低木が周囲を彩る。
王妃様のティアラから新芽が吹き、風に揺れる若葉のベールになる。若かりし日の国王様は太陽神のように輝き、半裸で王妃様の前に跪いて手の甲にキスをする。
プロポーズの言葉が辺りに散っていく。王妃様は微笑みながら了承する。いつの間にか王妃様も半裸である。
王は立ち上がり王妃を抱き寄せ、熱いキスをしながら二人は天に昇っていく。隠すものなど何もなく裸体のままで抱き合っている。
幸せそうに微笑み合い、愛を語り合っているのだろう。
あぁ、わかった。時間がないからダイジェストなのだ。最初から私の制御を外れる理由はただ一つ。王妃様の寿命が尽きようとしている。
二人を中心に太陽が輝き花弁が舞う。世界が花に覆われた時。
一瞬であるが世界は輝きを増し、神々しいほど二人を照らしだした。やがて照明が消えるように暗黒が訪れる。
人生の終演である。
今回の依頼はイレギュラーで、事前に本人から希望を聞くことはできない。私が事前情報や関係者の話を聞いてプランニングするしかないのだ。
私はシナリオを作成して、ストーリーを紡いでいった。この術の難しいところは記憶素材や展開等は被術者の無意識から拾い上げるという制約があり、突飛な展開や現実離れした内容になりやすい。それは夢に縛られるからだと先人達は言っていた。
ある意味で即興芸術と何らかわらない。
離宮から王妃様の筆頭侍女が現れて私に深く頭を下げる。ついに夢現術を使う時が来たのだ。私は略式礼をとり侍女に連れ垂れて王妃様が眠られている離宮に向かった。
私は王妃様の傍らの専用寝具に横になり意識のリンクを開始した。ここから先は私も王妃様の意識に捕らわられる。食事と排泄は魔導寝具に組み込まれていて、慣れないうちは苦労したものだ。この状態で仮眠を維持する期間は、下手すると数日以上に及ぶことも。
私は王妃様の魂の輝きが少しずつ大きくなるのを意識空間で眺めている。
数日経過したころに王妃様の魂が燃え上がる。発火現象だ。
私は王妃様の夢に潜り込む。
私は覚醒する。
暗い空間。
私の目の前には数えきれない青白い焔が輝いている。私はそれを想いと呼ぶ。
想いの輝き方は異なり、まるで星空のようだ。
小さな炎から燃え尽きていく。
記憶と夢は違う。魂が求めてやまない埋もれた思い出、記憶から零れ落ちたものたち、それらはすでに記憶の彼方にある。忘れてしまったからこそ、見つけてもらいたくて魂は強く輝くのだ。忘れたくないという潜在意識、根拠のない渇望、無意識の欲求、他にもあるだろう。明るく輝く焔ほど、その想いは重いのだ。
焔が燃え尽きるとき、魂はひときわ強く光を放つ。
輝きは蓄積され、その輝きを目視できたのが魂の発火現象と言われている。
私は大きな焔を集めて一つにすると、燃え上がる焔は球状になり輝きを増す。私は念じる。
「さあ、開演よ!」
叫びに呼応するように空間は白く染まる。
目が慣れてくると夢の世界が広がっている。
見渡す限り白を基調にした土地、大地にはクレーターが至るところに散らばっている。前方には宮殿が聳え立ち、そこに続く石段と門柱が見えてくる。
宮殿の門に到着すると扉は自動的に開いていく。私の意思とは関係なく門の先にある闇に引き込まれてしまった。
闇には穏やかで大きな瞳が光り、こちらを瞬きもせず見つめている。やがて、暗雲は流れ去り、闇は散っていき光の帯が天より降り注いだ。
新たな世界が構築され始め、オーロラが湧き出し、星が降る。
そして世界は輝きに満たされた。
ここまでは夢の導入部分で王妃様の無意識が作り出す情景。そう、これからが私の腕の見せ所で創作夢の幕が上がる瞬間でもある。
早朝の湖、朝露に濡れる草 白い表皮の木々が湖に浸かっている。湖底からは二人の若い男女が浮き上がってくる。国王様と王妃様の若かりし姿だろう。
二人は見つめ合ったまま旋回している。そうなるのは足元にある円盤状の床が回っているからだ。
どう見ても服や髪が濡れてないが、突っ込まないことにした。しかし、出現の仕方は想定外だった。というより最初からシナリオ無視でスタートしている。
円盤の床からストーンサークルが伸びだして二人を包み込み、聖なる低木が周囲を彩る。
王妃様のティアラから新芽が吹き、風に揺れる若葉のベールになる。若かりし日の国王様は太陽神のように輝き、半裸で王妃様の前に跪いて手の甲にキスをする。
プロポーズの言葉が辺りに散っていく。王妃様は微笑みながら了承する。いつの間にか王妃様も半裸である。
王は立ち上がり王妃を抱き寄せ、熱いキスをしながら二人は天に昇っていく。隠すものなど何もなく裸体のままで抱き合っている。
幸せそうに微笑み合い、愛を語り合っているのだろう。
あぁ、わかった。時間がないからダイジェストなのだ。最初から私の制御を外れる理由はただ一つ。王妃様の寿命が尽きようとしている。
二人を中心に太陽が輝き花弁が舞う。世界が花に覆われた時。
一瞬であるが世界は輝きを増し、神々しいほど二人を照らしだした。やがて照明が消えるように暗黒が訪れる。
人生の終演である。
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