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第6話 想い人
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私は国立王都魔術医院のポータルから出て受付カウンターを目指していた。月に一度は訪れるこの医院は第二の職場と言っていいほどお馴染みの場所だ。エントランスを潜ると予約確認カウンターがあり、魔導パネルに手をかざす。
一瞬待ち受け画面になり、パネルは受付完了と表示されて担当医師が表示された。私は担当医の部屋に移動して、椅子に腰かけ順番待ちをする。私は最初に予定の立てにくい自身の診察を済ませてから、彼のお見舞いに行くことにしたのだ。
病院や行政府の受付は魔導革命で大きく変化した。対人業務がかなり減り、待ち時間も短出されたのは歓迎すべき変化だろう。それにしても、今日はそれなりに患者がいて落ち着かない。
ぼんやりと魔導モニターのニュースを見ていると、誰かがテロの特集に番組を変えてしまった。ちょっとイラっとしたがそのうち呼ばれるので、気にせず番組を見ていると呼び出し案内がある。
私は慌てて診察室に入り医師に挨拶した。
問診と簡単な魔導検査で病気の有無を判断するようだ。簡単な検査が終わり一度部屋を出ようとすると呼び止められた。
「ちょっとまってください。結果が出ましたから説明します」
「え、はい。お願いします」
私はさっきまで座っていた椅子にまた腰かけた。医師は少し困ったような顔をして話し出す。
「循環器不全の疑いがありますね。健診結果から言えることは、専門医院で精密検査を受けることが望ましい、とお勧めします。承知いただけるなら紹介状を書きますので申しつけください」
「はい……あの、それほど数値が悪いのでしょうか?」
「良し悪しで言えば、早めの精密検査をお勧めするほど悪いですね。最近頭痛や疲労感が取れないなどの症状に心当たりありませんか?」
「確かに疲れは取れないですし、顔色が悪いといわれることも多いです」
「ご自覚があるなら早めの対応を」
私は驚いたこともあり、紹介状を手にそそくさと退室した。
気落ちして彼の入院している病棟に移動していると看護師に声を掛けられる。彼を担当する看護師の一人だ。
「今日もお見舞いですか。今日は朝からリラックスされてますから、お顔を見せてあげてください。例え意識がなくともお気持ちは伝わりますからね」
「いつもありがとうございます」
「いえいえ、仕事ですから」
「そういえば相室の方は眠られてますか?」
「その件ならご心配なく、事情があって退院されましたので普通に話されて怒る人はいません」
「安心しました」
小声で話しても小言や文句を言われるので、あの老人はとても苦手だった。まあ、意識の戻らない人に語りかける時点で私の行動もおかしいのだけど。
「そういえば、顔色悪いですね。体調が悪ければ付き添いますよ?」
「いえ、結構です。ご心配ありがとうございます。それではこれで」
「はい、無理なさらないでくださいね」
また顔色が悪いといわれてしまった。やっぱり早めに精密検査を受けに行こう。私は立ち止まって、紹介された医院に連絡して最短の予約を入れた。当日は無理で2日後に受診することになる。
彼のフロアの看護師控室に立ち寄り、軽く挨拶した後で彼の部屋に直行する。彼は穏やかな顔をして眠っていた。栗色の髪は短く刈られていて無精髭が生えているのはいつものことだ。確かに穏やかそうで少し安心してしまう。
私は眠って起きることのない彼の手を取り優しく話しかけた。
「今日は機嫌好さそうで安心したわ。あなたの好きだった好物のお菓子を置いておくわね。お母様と食べて頂戴ね」
「それとね、ここに来る前に診察を受けたのだけど、他の病院で精密検査を受けなさいって勧められたの」
「心配しないで、たぶん疲れているだけだと思うから。大丈夫だよ」
私は一人で話している。会話になってないのに気にしないふりして話している。慣れっこになっても寂しさは蓄積されていく。気がつくと涙が流れていた。
「ごめんなさい。私ったら……貴方の手まで濡らして」
すすり泣きが止まらない。精密検査のことで弱気になったのだろう。何年も泣いて無かったというのに。とても情けない。
「ごめんなさい。涙がこぼれなくなったら帰るね。それまで手を握らせて……」
「ありがとう」
私は貴方の優しさと同室に人が居ないことを神に感謝した。
一瞬待ち受け画面になり、パネルは受付完了と表示されて担当医師が表示された。私は担当医の部屋に移動して、椅子に腰かけ順番待ちをする。私は最初に予定の立てにくい自身の診察を済ませてから、彼のお見舞いに行くことにしたのだ。
病院や行政府の受付は魔導革命で大きく変化した。対人業務がかなり減り、待ち時間も短出されたのは歓迎すべき変化だろう。それにしても、今日はそれなりに患者がいて落ち着かない。
ぼんやりと魔導モニターのニュースを見ていると、誰かがテロの特集に番組を変えてしまった。ちょっとイラっとしたがそのうち呼ばれるので、気にせず番組を見ていると呼び出し案内がある。
私は慌てて診察室に入り医師に挨拶した。
問診と簡単な魔導検査で病気の有無を判断するようだ。簡単な検査が終わり一度部屋を出ようとすると呼び止められた。
「ちょっとまってください。結果が出ましたから説明します」
「え、はい。お願いします」
私はさっきまで座っていた椅子にまた腰かけた。医師は少し困ったような顔をして話し出す。
「循環器不全の疑いがありますね。健診結果から言えることは、専門医院で精密検査を受けることが望ましい、とお勧めします。承知いただけるなら紹介状を書きますので申しつけください」
「はい……あの、それほど数値が悪いのでしょうか?」
「良し悪しで言えば、早めの精密検査をお勧めするほど悪いですね。最近頭痛や疲労感が取れないなどの症状に心当たりありませんか?」
「確かに疲れは取れないですし、顔色が悪いといわれることも多いです」
「ご自覚があるなら早めの対応を」
私は驚いたこともあり、紹介状を手にそそくさと退室した。
気落ちして彼の入院している病棟に移動していると看護師に声を掛けられる。彼を担当する看護師の一人だ。
「今日もお見舞いですか。今日は朝からリラックスされてますから、お顔を見せてあげてください。例え意識がなくともお気持ちは伝わりますからね」
「いつもありがとうございます」
「いえいえ、仕事ですから」
「そういえば相室の方は眠られてますか?」
「その件ならご心配なく、事情があって退院されましたので普通に話されて怒る人はいません」
「安心しました」
小声で話しても小言や文句を言われるので、あの老人はとても苦手だった。まあ、意識の戻らない人に語りかける時点で私の行動もおかしいのだけど。
「そういえば、顔色悪いですね。体調が悪ければ付き添いますよ?」
「いえ、結構です。ご心配ありがとうございます。それではこれで」
「はい、無理なさらないでくださいね」
また顔色が悪いといわれてしまった。やっぱり早めに精密検査を受けに行こう。私は立ち止まって、紹介された医院に連絡して最短の予約を入れた。当日は無理で2日後に受診することになる。
彼のフロアの看護師控室に立ち寄り、軽く挨拶した後で彼の部屋に直行する。彼は穏やかな顔をして眠っていた。栗色の髪は短く刈られていて無精髭が生えているのはいつものことだ。確かに穏やかそうで少し安心してしまう。
私は眠って起きることのない彼の手を取り優しく話しかけた。
「今日は機嫌好さそうで安心したわ。あなたの好きだった好物のお菓子を置いておくわね。お母様と食べて頂戴ね」
「それとね、ここに来る前に診察を受けたのだけど、他の病院で精密検査を受けなさいって勧められたの」
「心配しないで、たぶん疲れているだけだと思うから。大丈夫だよ」
私は一人で話している。会話になってないのに気にしないふりして話している。慣れっこになっても寂しさは蓄積されていく。気がつくと涙が流れていた。
「ごめんなさい。私ったら……貴方の手まで濡らして」
すすり泣きが止まらない。精密検査のことで弱気になったのだろう。何年も泣いて無かったというのに。とても情けない。
「ごめんなさい。涙がこぼれなくなったら帰るね。それまで手を握らせて……」
「ありがとう」
私は貴方の優しさと同室に人が居ないことを神に感謝した。
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