14 / 22
第13話 影に憑依された?
しおりを挟む
空洞に落下して姿勢を正そうとした瞬間、いきなり水中に落下した。鼻や口から水が入り息を止める。下水かと思ったが臭くない。でも浮上しなければ。方向感覚がなくなって、どっちが上かわからない。そうだ、力を抜くと浮かぶはず。
正解、今ゆっくりと浮上している。
私は水面に顔を出し照明魔法を唱える。天井は高くて、かなり下層に落とされたようだ。右手側には煉瓦でできた壁があり、左手には石段が見える。私は迷いなく左側に向かって泳ぎだす。
後ろに何かいる。水は渦を巻いて波が照らしだされる。
水生の魔物かもしれない。
魔物は光を嫌うのか近づいてこないようだ。しかし、いつ気が変わるかわからない。私は全力で泳ぎだす。魔物は左右に位置を変えてついてくる。もう嫌だ。死ぬ気で泳いでいると石段がすぐそこに迫っていた。私は渾身の力を振り絞って石段の上に這い上がった。
背後を見ると魔物が私を見つめている。
魚のような生物。
私は後ろに下がって距離をとる。魔物は陸に上がれないようで水面近くを泳いだり、ジャンプしたりして落ち着きがない。私と行動パターンが似ているから何を仕出かすかわからない。
とりあえずもっと距離を置こう。
魔物から離れて追ってこないのを確認してから、下級の治療魔法で足の応急処置をした。負荷をかけるなど無理をしなければ行動に制限はない。しかし、ここはどこだろう。地下にこんな場所があるなんて、少なくとも郷土史を思い起こしても該当施設はない。
放心状態で休憩していると現実逃避していたようだ。この場所は地下壕なのだろうか、それとも地下納骨堂なのだろうか。水場の存在から考えると地下壕ではなさそうだけど、探索しないと何もわからない。
まずは水場の反対方向に向かうことにした。
しばらく歩いていると所々に鉄格子の入った部屋がある。中を照らすと壁一面に穴が開いていて棺桶が突っ込んである。間違いなく墓地。それも古そうで何世紀か前の納骨堂だろう。だって、アンデッド除けの魔術式か書き込まれた鉄格子があるから。
まだ死者が生ける屍になる時代の墓地。
危険極まりない。
聖水を作る授業を受けたはずだが、まったく記憶に残ってない。もしも何か出たらどうしよう。レイスとかグールとかスケルトンにリッチ、そのあたりがお出ましになると失神しそうだ。しかし、古代の魔物など、どうでもいいことは良く覚えている。
真っすぐ進んでいると霊廟の様な怪しい構築物が現れた。しげしげと眺めていると対になった鎖付きの鉄輪がぶら下がっている。あれを引っ張ったらこの施設が崩壊するか、霊廟の主が登場するパターンだろう。八方塞がりだから試してみたいような。
悩んだ末に結論は先送りすることにしたのだが、探索を続けても目ぼしいものは他になかった。霊廟に戻り、二つの鉄輪を手に取り覚悟を決めて引っ張った。何かが壊れた音がする。
古代魔道具が発動してしまったに違いない。
不自然に拡散する鈴の音が遠くから聞こえてくる。それとは別に私の足元に黒い影が広がり魔法照明が揺れ動く。私の影は悪魔のような角があり、両手剣ほどある大剣を片手で握り、逆手には盾のようなものを掲げているように見える。
黒く大きな影はみるみるうちに更に大きくなり、左手に明るく輝く緑色の宝石のブレスレットがはまってっている。私に注意を向けているようで、何者なのかわからないが悪意は感じられない。それは、例えるなら純粋無垢な子供の好奇心のように感じられた。
何処からともなく子供の笑い声が聞こえてくる。狂ってしまったのか、狂う寸前なのか、頭がおかしくなりそうだ。
もしかして、憑依されたのだろうか。
正解、今ゆっくりと浮上している。
私は水面に顔を出し照明魔法を唱える。天井は高くて、かなり下層に落とされたようだ。右手側には煉瓦でできた壁があり、左手には石段が見える。私は迷いなく左側に向かって泳ぎだす。
後ろに何かいる。水は渦を巻いて波が照らしだされる。
水生の魔物かもしれない。
魔物は光を嫌うのか近づいてこないようだ。しかし、いつ気が変わるかわからない。私は全力で泳ぎだす。魔物は左右に位置を変えてついてくる。もう嫌だ。死ぬ気で泳いでいると石段がすぐそこに迫っていた。私は渾身の力を振り絞って石段の上に這い上がった。
背後を見ると魔物が私を見つめている。
魚のような生物。
私は後ろに下がって距離をとる。魔物は陸に上がれないようで水面近くを泳いだり、ジャンプしたりして落ち着きがない。私と行動パターンが似ているから何を仕出かすかわからない。
とりあえずもっと距離を置こう。
魔物から離れて追ってこないのを確認してから、下級の治療魔法で足の応急処置をした。負荷をかけるなど無理をしなければ行動に制限はない。しかし、ここはどこだろう。地下にこんな場所があるなんて、少なくとも郷土史を思い起こしても該当施設はない。
放心状態で休憩していると現実逃避していたようだ。この場所は地下壕なのだろうか、それとも地下納骨堂なのだろうか。水場の存在から考えると地下壕ではなさそうだけど、探索しないと何もわからない。
まずは水場の反対方向に向かうことにした。
しばらく歩いていると所々に鉄格子の入った部屋がある。中を照らすと壁一面に穴が開いていて棺桶が突っ込んである。間違いなく墓地。それも古そうで何世紀か前の納骨堂だろう。だって、アンデッド除けの魔術式か書き込まれた鉄格子があるから。
まだ死者が生ける屍になる時代の墓地。
危険極まりない。
聖水を作る授業を受けたはずだが、まったく記憶に残ってない。もしも何か出たらどうしよう。レイスとかグールとかスケルトンにリッチ、そのあたりがお出ましになると失神しそうだ。しかし、古代の魔物など、どうでもいいことは良く覚えている。
真っすぐ進んでいると霊廟の様な怪しい構築物が現れた。しげしげと眺めていると対になった鎖付きの鉄輪がぶら下がっている。あれを引っ張ったらこの施設が崩壊するか、霊廟の主が登場するパターンだろう。八方塞がりだから試してみたいような。
悩んだ末に結論は先送りすることにしたのだが、探索を続けても目ぼしいものは他になかった。霊廟に戻り、二つの鉄輪を手に取り覚悟を決めて引っ張った。何かが壊れた音がする。
古代魔道具が発動してしまったに違いない。
不自然に拡散する鈴の音が遠くから聞こえてくる。それとは別に私の足元に黒い影が広がり魔法照明が揺れ動く。私の影は悪魔のような角があり、両手剣ほどある大剣を片手で握り、逆手には盾のようなものを掲げているように見える。
黒く大きな影はみるみるうちに更に大きくなり、左手に明るく輝く緑色の宝石のブレスレットがはまってっている。私に注意を向けているようで、何者なのかわからないが悪意は感じられない。それは、例えるなら純粋無垢な子供の好奇心のように感じられた。
何処からともなく子供の笑い声が聞こえてくる。狂ってしまったのか、狂う寸前なのか、頭がおかしくなりそうだ。
もしかして、憑依されたのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる