魔術師達と彼方

本和 奏

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第1章 青年と少年

青年と少年 8

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 その日の朝は、扉をノックする音で起こされた。
  寝起きの悪いウィル先生は、何とも言えない東にある島国のヤのつく職業の人よりもひどい人相をしている。その顔で外に出ればその手の人と勘違いされそうだ。
 こんな先生を応対に使うわけにもいかないので、渋々僕が出ることにする。
「はーい、どちら様ですか?」
 扉を開けてみれば、立っていたのはルイーゼちゃんのお母様だった。こりゃあ何かあったな。と、見当をつける。
「あっ。あの、ルイーゼを知りませんか?」
「はへ?ルイーゼちゃん?えっと、お母様ですよね。何があったんですか?」
「朝起きたら、部屋にいなかったのです。宿の人に聞いても見ていないとのことでしたから、貴方方の部屋に行っていないかと思って……。特に、ウィルさんには懐いているようでしたから」
 間違いない。これは明らかにクライストの仕業だ。だが、少女一人のために動く必要は無いだろう。もう何十人も誘拐されているのだから、今更な話だ。予定通りの行動でいいだろう。
 ルイーゼちゃんとそのご両親には悪いが、魔術師なんてそんなものだ。基本が一般社会でやっていけないであろう不適合者の集まりなのだから、わざわざ実験の被害者一人を気にかけ、贔屓して守るような事はまずしない。
「失踪、ですか?」
 まさかのウィル先生が口を挟んできた。
 髪も梳かされていて、あの恐ろしい形相も緩和されている。
「ええ!そうです!だから、貴方方にも捜索を手伝って欲しくて」
「いいでしょう。セオと二人でお手伝いします」
 何事かと思った。誰よりも生粋の魔術師たる先生が、そんな事をいうなんて、と。
 念話で先生に驚いたことを伝えれば、ここで探さないと言うのも不自然だろうと返ってきた。確かにその通りである。
 僕達がそんな事を考えているとはを知らないルイーゼちゃんのお母様は、花のような笑顔でお礼を言ってきた。おそらく、旦那様と二人だけでは心細かったのだろう。
「ほら、セオ。準備をしよう。とっとと着替えたまえ」
「そうっすね!急ぎます」
 とは言っても、探すふりに時間を使うなんて、少し無駄な気もしてくる。だが、先生にそれをもう一度言うのもはばかられた。
 自分は案外、心が狭いのかもしれないと再認識する。
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