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第2章 少年と友人
少年と友人 8
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アレッサンドロさんは、その時既に完成された『何か』があった。大物としての、天才としての何かがあった。そんな所に圧倒されて、僕は取り敢えず緊張するだけして、他のことは何も出来なかった。
「アレク、アイツらは?まだこの辺にいる?」
「今の所、いるな。ドアの前で屯している。まるで東国の不良だ」
それは、まだここから出ない方が良いと言うことだろう。招いてもらった所で、何をしたらいいのかわからない。研究室とはいえ、ここは門下生がいる訳では無いらしい。偶に、教師ではなくても、研究機関の方ではなくこちらに研究室を置く魔術師がいることもあると聞いたからおそらくそれだったのだろう。
「アイツら馬鹿なの?授業に戻ろうとか思わないのかな。ボクには理解出来ないや」
「俺にも理解は出来ないがな。そうだ、茶はいるか?茶葉に種類があるかと言われれば否だが。珈琲もあるぞ」
突然話を振られたことに、緊張で震え上がりつつ有り難くお茶を頂く事にした。お茶を入れるのはウィルの仕事らしかった。曰く、アレッサンドロさんは珈琲を入れるのは上手だが紅茶を入れるのはセンスが無いだとか何だとか。
「だって、何度入れ方を説明しても間違えるんだぞ?コイツ、普段はそこまで馬鹿じゃないのに紅茶となると途端に駄目なんだ。おかしいだろ」
「適材適所と言うものだろう。俺には紅茶はまともに入れられないが、珈琲は入れられる。その点ウィルは珈琲は苦手だからな。待つことが出来ない」
確かにウィルフレッドは短気だ。でも、ここでお互いに任せているのはそれぞれ別の理由がある気がした。
……いや、分ける様に振る舞う理由だ。それに何か暖かいものを感じた。家族としての形と言うか、愛情の形と言うようなものを。
出してもらった紅茶だが、確かに物凄く美味しかった。確かにウィルフレッドは紅茶を入れるのが文句無しに上手かった。意外な特技を知った瞬間である。
今日は、どこか近くて遠い存在だったウィルフレッドを、確かに近くに感じられる程に新しい発見があった。
「さて、どうする?アイツらは目の前にいるぞ。此の儘引き篭もっていたって、拉致があかないだろう。あと、次の授業も休むのは不味いと思うのだが」
たしかにその通りだ。出席は取ってしまったのだから、居ないのは理由もないサボリと同じだ。ウィルフレッドはイラついた事を隠そうともせず頭を掻きながら溜息をついた。
「分かってるよ。アイツらなら外聞を大事にするだろうから授業は受けるだろうとかほんの少しでも考えたボクが甘かった。アレク、力で押せるよな?アイツらぐらい」
力で押せる。つまり、魔術で圧倒できるということだ。ラナードは腐っても名門の子息。そして中々の天才として名を馳せていた。それに対して力で押せるというのなら、かなりの魔術の腕を要求される。勿論、知識でそれを賄って対抗する事も出来るのだが、当時の僕はそんな事を考え付きもしなかった。
「応とも!任せておけ。ウィルフレッドとローラン、この部屋の事は任せたぞ。少しだけ手薄になるからな、万が一も考えてだ」
さらっと重要な役割に自分も組み込まれたことに気が付き、僕は震えるしか無かった。
「アレク、アイツらは?まだこの辺にいる?」
「今の所、いるな。ドアの前で屯している。まるで東国の不良だ」
それは、まだここから出ない方が良いと言うことだろう。招いてもらった所で、何をしたらいいのかわからない。研究室とはいえ、ここは門下生がいる訳では無いらしい。偶に、教師ではなくても、研究機関の方ではなくこちらに研究室を置く魔術師がいることもあると聞いたからおそらくそれだったのだろう。
「アイツら馬鹿なの?授業に戻ろうとか思わないのかな。ボクには理解出来ないや」
「俺にも理解は出来ないがな。そうだ、茶はいるか?茶葉に種類があるかと言われれば否だが。珈琲もあるぞ」
突然話を振られたことに、緊張で震え上がりつつ有り難くお茶を頂く事にした。お茶を入れるのはウィルの仕事らしかった。曰く、アレッサンドロさんは珈琲を入れるのは上手だが紅茶を入れるのはセンスが無いだとか何だとか。
「だって、何度入れ方を説明しても間違えるんだぞ?コイツ、普段はそこまで馬鹿じゃないのに紅茶となると途端に駄目なんだ。おかしいだろ」
「適材適所と言うものだろう。俺には紅茶はまともに入れられないが、珈琲は入れられる。その点ウィルは珈琲は苦手だからな。待つことが出来ない」
確かにウィルフレッドは短気だ。でも、ここでお互いに任せているのはそれぞれ別の理由がある気がした。
……いや、分ける様に振る舞う理由だ。それに何か暖かいものを感じた。家族としての形と言うか、愛情の形と言うようなものを。
出してもらった紅茶だが、確かに物凄く美味しかった。確かにウィルフレッドは紅茶を入れるのが文句無しに上手かった。意外な特技を知った瞬間である。
今日は、どこか近くて遠い存在だったウィルフレッドを、確かに近くに感じられる程に新しい発見があった。
「さて、どうする?アイツらは目の前にいるぞ。此の儘引き篭もっていたって、拉致があかないだろう。あと、次の授業も休むのは不味いと思うのだが」
たしかにその通りだ。出席は取ってしまったのだから、居ないのは理由もないサボリと同じだ。ウィルフレッドはイラついた事を隠そうともせず頭を掻きながら溜息をついた。
「分かってるよ。アイツらなら外聞を大事にするだろうから授業は受けるだろうとかほんの少しでも考えたボクが甘かった。アレク、力で押せるよな?アイツらぐらい」
力で押せる。つまり、魔術で圧倒できるということだ。ラナードは腐っても名門の子息。そして中々の天才として名を馳せていた。それに対して力で押せるというのなら、かなりの魔術の腕を要求される。勿論、知識でそれを賄って対抗する事も出来るのだが、当時の僕はそんな事を考え付きもしなかった。
「応とも!任せておけ。ウィルフレッドとローラン、この部屋の事は任せたぞ。少しだけ手薄になるからな、万が一も考えてだ」
さらっと重要な役割に自分も組み込まれたことに気が付き、僕は震えるしか無かった。
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