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第3章 青年と子供達
青年と子供達 1
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二十代半ばと言った青年が、魔術研究機関の研究室棟を早足で進んでいた。研究員としてはいささか若いが、助手や何かと考えればそれ程違和感はない。
「ウィル先生!ウィル先生も漸く生徒を受け入れてくれる気になったって本当ですか!?」
その青年の後ろから掛けてくる少年の影が二つ。どうやら青年に話したいことがあるようだった。若々しい健脚を生かしてすぐにその青年……ウィルフレッドに追い付いていく。
「……何処からその噂を聴いた?ヴェストファーレン兄弟」
どうやら、この少年二人は兄弟であったらしい。そう言われれば、確かに似ていなくもないなと思えてくる。そんな兄弟だった。驚きとともに問われた質問に答えたのは、弟の方の様だ。
「スタッフォードさんが教えてくれましたよ。是非とも申請しに行ったらって仰って下さったんです」
ウィルはそれを聞くと軽く舌打ちをして、頭を抱えだした。どうやら、それはまだ公開しない筈の情報だったらしい。どうしてもウィルの教室にすがるしかない理由があるのか、兄の方が更に嘆願を重ねる。
「お願いしますよウィル先生!俺達、どうしてもウィル先生の教室に入りたいんです。というか、もうウィル先生の所しか無いんです!」
双子での相互効果を狙った魔術は割とよくあるが、兄弟で似たような効果を出そうとするのが彼らの家、ヴェストファーレン家だった。
それは余りにも珍しく、そんな試みをしているのは彼らの家だけである故どの教授も手をつけられずにいたのだ。しかも、彼らは一族稀に見る天才児で、二人揃って下手をすればその辺の教授連中よりも高度な術式を扱えてしまったのもそれに拍車を掛けていく理由となっていた様で。
ウィルも、彼らが様々な教室を盥回しにされたのを知っているので、無碍に返すのも心苦しくなってしまう。
「……募集は来週からの予定だったので、予約という形でいいだろうか」
そんなウィルの言葉を聞き、二人は嬉しそうに目を輝かせた。こういう表情を見ていると、自分の事でもないのについ嬉しくなってしまうのはどうしてなのだろうと、ウィルは思案する。
「ありがとうございます、ウィル先生!じゃあ、俺達が先生の直属の生徒第一号って事ですよね!」
直属の生徒。それはこそばゆいような、そんな響きを持っていた。自分を必要としてくれる子達がいる。そう、教えてくれる響きだったからだろうか。
「嗚呼。そうだとも。教室の場所などは追って伝えるから、今日はここまでな」
はい!と元気な返事をして彼らは去っていく。
「コンラート君とヴィルヘルム君、やはり彼らは行動が早いね。そういう人が人生において成功を掴みやすいんだってさ。ウィルはどう思う?」
「ローラン!お前、なんで公開前の情報をそうホイホイと教えるんだ。彼ら以外に教えたのは?」
「いないよ。あの兄弟、凄く頑張ってたからさ。ついチャンスを与えたくなったんだよ。誰よりも早くね」
そう聞くと、ウィルも怒鳴るわけにはいかなかったようだ。行くぞ。と一言ローランに声をかけ、新しく与えられた研究室へと向かって行った。
「ウィル先生!ウィル先生も漸く生徒を受け入れてくれる気になったって本当ですか!?」
その青年の後ろから掛けてくる少年の影が二つ。どうやら青年に話したいことがあるようだった。若々しい健脚を生かしてすぐにその青年……ウィルフレッドに追い付いていく。
「……何処からその噂を聴いた?ヴェストファーレン兄弟」
どうやら、この少年二人は兄弟であったらしい。そう言われれば、確かに似ていなくもないなと思えてくる。そんな兄弟だった。驚きとともに問われた質問に答えたのは、弟の方の様だ。
「スタッフォードさんが教えてくれましたよ。是非とも申請しに行ったらって仰って下さったんです」
ウィルはそれを聞くと軽く舌打ちをして、頭を抱えだした。どうやら、それはまだ公開しない筈の情報だったらしい。どうしてもウィルの教室にすがるしかない理由があるのか、兄の方が更に嘆願を重ねる。
「お願いしますよウィル先生!俺達、どうしてもウィル先生の教室に入りたいんです。というか、もうウィル先生の所しか無いんです!」
双子での相互効果を狙った魔術は割とよくあるが、兄弟で似たような効果を出そうとするのが彼らの家、ヴェストファーレン家だった。
それは余りにも珍しく、そんな試みをしているのは彼らの家だけである故どの教授も手をつけられずにいたのだ。しかも、彼らは一族稀に見る天才児で、二人揃って下手をすればその辺の教授連中よりも高度な術式を扱えてしまったのもそれに拍車を掛けていく理由となっていた様で。
ウィルも、彼らが様々な教室を盥回しにされたのを知っているので、無碍に返すのも心苦しくなってしまう。
「……募集は来週からの予定だったので、予約という形でいいだろうか」
そんなウィルの言葉を聞き、二人は嬉しそうに目を輝かせた。こういう表情を見ていると、自分の事でもないのについ嬉しくなってしまうのはどうしてなのだろうと、ウィルは思案する。
「ありがとうございます、ウィル先生!じゃあ、俺達が先生の直属の生徒第一号って事ですよね!」
直属の生徒。それはこそばゆいような、そんな響きを持っていた。自分を必要としてくれる子達がいる。そう、教えてくれる響きだったからだろうか。
「嗚呼。そうだとも。教室の場所などは追って伝えるから、今日はここまでな」
はい!と元気な返事をして彼らは去っていく。
「コンラート君とヴィルヘルム君、やはり彼らは行動が早いね。そういう人が人生において成功を掴みやすいんだってさ。ウィルはどう思う?」
「ローラン!お前、なんで公開前の情報をそうホイホイと教えるんだ。彼ら以外に教えたのは?」
「いないよ。あの兄弟、凄く頑張ってたからさ。ついチャンスを与えたくなったんだよ。誰よりも早くね」
そう聞くと、ウィルも怒鳴るわけにはいかなかったようだ。行くぞ。と一言ローランに声をかけ、新しく与えられた研究室へと向かって行った。
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