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梅雨入り
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高城が受付で診療代を払っていると、急ブレーキをかける摩擦音が耳に響いてきた。視線を横にずらすと、病院の出入り口と直結する脇の停車場で、黒のワゴン車と危うく正面衝突しかけたのだろう、古くさい水色のセダンがそこにいた。
「……おい。」
傘越しに運転席の窓を叩くと、男がひょいと顔をのりだす。
「あ、信次さん!」
呆れるほど弾んだ声を返してきた男に高城は説教でもしてやろうかと考えたが、ひとまず言葉を呑み込んで病院の敷地を出ることにした。
「急ブレーキをかけたせいで、車がエンストして動かなくなったんだろう。ちょっと貸してみろ。」
「……あ、お願い、します。」
背ばかり高く幼顔の男を掃き出すようにして車に乗り込むと、高城はすかさずエンジンをかけてみせた。
「わあ、すごい! やっとエンジンがかかった。」
「マニュアル車の扱いが下手なんだよ、お前は。」
湊との出会いは高校時代にまで遡る。無論、その時の高城には湊との出会いが数年後の未来に繋がっていくとは知る由もなかったが。
「……おい。」
傘越しに運転席の窓を叩くと、男がひょいと顔をのりだす。
「あ、信次さん!」
呆れるほど弾んだ声を返してきた男に高城は説教でもしてやろうかと考えたが、ひとまず言葉を呑み込んで病院の敷地を出ることにした。
「急ブレーキをかけたせいで、車がエンストして動かなくなったんだろう。ちょっと貸してみろ。」
「……あ、お願い、します。」
背ばかり高く幼顔の男を掃き出すようにして車に乗り込むと、高城はすかさずエンジンをかけてみせた。
「わあ、すごい! やっとエンジンがかかった。」
「マニュアル車の扱いが下手なんだよ、お前は。」
湊との出会いは高校時代にまで遡る。無論、その時の高城には湊との出会いが数年後の未来に繋がっていくとは知る由もなかったが。
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