蜜葉

夏蜜

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星空チケット

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 口も出せないまま情けなく突っ立っていると、書き終えた前野が「受け取れよ」と言い、破いたノートの切れ端を引田に手渡してきた。紙片には簡単な地図と一緒に、粗っぽい字でまたどこかの住所らしきものが記されている。
「明日の昼にでもそこに来いよ。……待ってるから。」
「どこだよ、ここ」
「……俺ん家」
「……はあ?」
「受験勉強なんて後でもできるだろ? 見せたい物があるんだ。嘘じゃない」
 引田はこれ以上ないほど、恨めしい視線を前野へ向けた。明日の祭日は仲の良いクラスの女子宅で勉強を教えてもらうはずだったのに、いつもこうだ。いつも前野のペースに巻き込まれる。
「夜、行きたいところもあるんだ。……来てくれなきゃ、引田となんか二度と話さないから」
 前野は最後にそう素っ気なく言い捨てると、彼を待っていた女子たちにわざとらしい笑みを見せ、一緒に音楽室へ行ってしまった。
 頭上では、始業開始5分前の午後の鈴が鳴る。引田はひとり取り残された教室で、消化できない苛立ちを自分の机の脚に思いきり蹴り入れた。
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