蜜葉

夏蜜

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星空チケット

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「おい、待てよ」
「誰が待つか。この女ったらしめが」
 教室の出入り口で前野を呼ぶ女子集団に突っ込もうとするところを肩から掴まれた引田は、そのまま前野に腕を引っ張られて、自分の席がある窓際へ再び戻されてしまった。
「なあ、待てよ。俺、お前が喉から手が出るほど欲しいもの、本当に持ってるんだぜ?」
 なんて腹の立つ顔立ちだろう。同年代のどの生徒より垢抜けて見える彼の顔立ちは、明らかにこの田舎には不釣り合いだ。背だって彼とはさほど変わらない。むしろ引田のほうがわずかに高いはずであるのに、窓に背中を追いつめられた状況では彼のほうが何倍も高く見える。
 引田は悔しくて歯ぎしりしたい気持ちを抑えながら、1センチ先でにやつく前野の顔を見据えた。できれば腹立たしいその顔に、唾でも掛けてやりたい気分だ。
「……なんなん、だよ」
「ちょっと借りるぜ」
 抱き抱えていたノートとペンケースを奪われて、引田はいよいよ泣きたくなった。それどころか、ノートの後ろをびりびりと勝手に引き裂いて何かメモをしていく彼を怒ることすらできない。 
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