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第五夜
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私は、ヨウの看病をしたまま眠っていたらしく、目覚めた時には、ベッドに突っ伏したような状態だった。
様子はどうだろうと、私は慌てて、ベッドで眠っているヨウに向き直り、額に手を当ててみる。
昨夜よりは、熱が下がったようだったが、体温を測ってみると、まだ、三十八度二分もあった。
私は、濡れた服を着替えさせてから、新しい保冷剤を頭に敷く。
このまま、様子を見ていようかとも思ったが、やはり薬は必要だろうと、買いに出かける事にした。
出かけてる時に、ヨウが起きてはいけないと思い、念の為に「買い物に行って来る。すぐ帰る」と置き手紙をした。
薬だけのつもりだったが、服がぶかぶかだった事を思い出し、着替え用のパジャマを数着と、帰る時に着る為の服も買った。
それから、忘れないように昼飯も買う。
ヨウの事は、すぐ帰らせるつもりなのに、これでは買い込み過ぎだ。
私は、このままヨウが一緒にいる事を望んでいるのではないかと考えるが、そんな事はないとすぐに否定する。
しかし、予定以上の買い物をしたのは事実で、おかげで、すぐに帰る予定が随分と遅くなってしまった。
私が部屋に戻った時には、ヨウも少しは元気になったようで、ベッドの上に座っていた。
遅くなったから心配したのだろう。
私が部屋に帰ると、ヨウはホッとした顔になる。
「おかえり」
ヨウはニッコリと微笑んだが、その顔は赤く、熱はまだ下がっていないように見えた。
「ただいま」
私は、ヨウに薬と水を手渡す。
ヨウは粉薬に少し顔をしかめたが、なんとか飲み干し、こちらを見る。
「ありがとう。でも苦い」
「体がだるいよりマシだろ?」
「そうだね。ありがとう」
ヨウは再び礼を言って、ベッドに横になろうとするが「ちょっと待って」と言って、私はそれを押しとどめた。
「汗かいてないか?」
私が尋ねると、ヨウは自分の服を見る。
「少し、寝汗をかいたみたい。服が濡れてる」
そう言って、ヨウは自分の服の匂いを嗅いだ。
私はそれを聞いて、買ったばかりの着替えやタオルといった必要な物を用意してヨウに手渡す。
すると、ヨウは渡されたパジャマを見て、不思議そうな顔で私を見た。
「これ、僕の為に買ってくれたの?」
「汗をかいた時の着替えが足りないからな。それと、服も買って来た」
私が、Tシャツとジーパンを見せると、明るくなっていた顔が急に暗くなる。
「自分で出来るだろ? 俺は向こうに行っているから、体を拭いて新しい服に着替えるといいよ」
そう言って、私が服をベッドサイドに置くと、ヨウは思い詰めたような顔になる。
「どうした?」
「笹川さんは、僕を追い出すの?」
私が朝になったら、家に帰らせると言った事が気になるらしい。
確かに、私はそう言ったし、今でもそのつもりでいる。
だから、外着を買って来たのだ。
しかし、熱のあるヨウを追い出すのは、流石に忍びなかった。
「熱が下がるまでは、ここにいたらいい。だけど、親に連絡しない訳にはいかないから、せめて連絡先は教えておいて貰えないか?」
私が聞くと、ヨウは即答した。
「親はいないよ。お父さんは昨日、殺したし、お母さんは……いないから」
「そんな嘘をついてもダメだ。言わないなら追い出すぞ」
私の言葉に、ヨウは泣きそうな顔になる。
「本当に帰る所がないんだ。お願いだから追い出さないで。何でもするから、お願い」
私には、ヨウの言葉がどこまで本当なのか、さっぱり見当がつかない。
しかし、必死で訴える姿に、嘘はないようにも思えた。
「熱が下がるまでだぞ」
私が告げると、ヨウは安心したのか顔を綻ばせた。
「ありがとう。本当に、ありがとう」
その頬に、一筋の涙がこぼれた。
そして、私にすがりついて、ヨウは何度も何度も礼を言った。
私は、ヨウの体をそっと離して顔を見る。
「蕎麦、買って来たんだけど。着替えたら一緒に食べるか?」
すると、ヨウは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。すぐ着替える」
そして、ヨウと二人、昨日と同じように立ったまま蕎麦を食べる。
「美味しいね」
そう言ってから、ヨウは考え込むように俯いて、手に持った箸をじっと見る。
「元気になったら、料理を作って笹川さんに食べさせたいな」
それから、悲しそうに続ける。
「でも、元気になったら、出て行かなくちゃいけないのか……」
箸を止めて俯いているヨウの頭を、私は軽く叩いた。
「そんな事、考えてないで、今は食べろ。飯が不味くなるぞ」
「うん。そうだね」
ヨウは、私の言葉に頷いて、やっと箸を動かし始めた。
「そう言えば、俺の絵だけど。多分、明日くらいには返って来るから」
私が告げると、ヨウは急に明るい顔になる。
「そうなの?」
「下手でも笑うなよ」
「笑わないって」
「約束だぞ」
ヨウは、目を輝かせて私の顔を見る。
その無邪気な笑顔につられて、私も思わず微笑んだ。
様子はどうだろうと、私は慌てて、ベッドで眠っているヨウに向き直り、額に手を当ててみる。
昨夜よりは、熱が下がったようだったが、体温を測ってみると、まだ、三十八度二分もあった。
私は、濡れた服を着替えさせてから、新しい保冷剤を頭に敷く。
このまま、様子を見ていようかとも思ったが、やはり薬は必要だろうと、買いに出かける事にした。
出かけてる時に、ヨウが起きてはいけないと思い、念の為に「買い物に行って来る。すぐ帰る」と置き手紙をした。
薬だけのつもりだったが、服がぶかぶかだった事を思い出し、着替え用のパジャマを数着と、帰る時に着る為の服も買った。
それから、忘れないように昼飯も買う。
ヨウの事は、すぐ帰らせるつもりなのに、これでは買い込み過ぎだ。
私は、このままヨウが一緒にいる事を望んでいるのではないかと考えるが、そんな事はないとすぐに否定する。
しかし、予定以上の買い物をしたのは事実で、おかげで、すぐに帰る予定が随分と遅くなってしまった。
私が部屋に戻った時には、ヨウも少しは元気になったようで、ベッドの上に座っていた。
遅くなったから心配したのだろう。
私が部屋に帰ると、ヨウはホッとした顔になる。
「おかえり」
ヨウはニッコリと微笑んだが、その顔は赤く、熱はまだ下がっていないように見えた。
「ただいま」
私は、ヨウに薬と水を手渡す。
ヨウは粉薬に少し顔をしかめたが、なんとか飲み干し、こちらを見る。
「ありがとう。でも苦い」
「体がだるいよりマシだろ?」
「そうだね。ありがとう」
ヨウは再び礼を言って、ベッドに横になろうとするが「ちょっと待って」と言って、私はそれを押しとどめた。
「汗かいてないか?」
私が尋ねると、ヨウは自分の服を見る。
「少し、寝汗をかいたみたい。服が濡れてる」
そう言って、ヨウは自分の服の匂いを嗅いだ。
私はそれを聞いて、買ったばかりの着替えやタオルといった必要な物を用意してヨウに手渡す。
すると、ヨウは渡されたパジャマを見て、不思議そうな顔で私を見た。
「これ、僕の為に買ってくれたの?」
「汗をかいた時の着替えが足りないからな。それと、服も買って来た」
私が、Tシャツとジーパンを見せると、明るくなっていた顔が急に暗くなる。
「自分で出来るだろ? 俺は向こうに行っているから、体を拭いて新しい服に着替えるといいよ」
そう言って、私が服をベッドサイドに置くと、ヨウは思い詰めたような顔になる。
「どうした?」
「笹川さんは、僕を追い出すの?」
私が朝になったら、家に帰らせると言った事が気になるらしい。
確かに、私はそう言ったし、今でもそのつもりでいる。
だから、外着を買って来たのだ。
しかし、熱のあるヨウを追い出すのは、流石に忍びなかった。
「熱が下がるまでは、ここにいたらいい。だけど、親に連絡しない訳にはいかないから、せめて連絡先は教えておいて貰えないか?」
私が聞くと、ヨウは即答した。
「親はいないよ。お父さんは昨日、殺したし、お母さんは……いないから」
「そんな嘘をついてもダメだ。言わないなら追い出すぞ」
私の言葉に、ヨウは泣きそうな顔になる。
「本当に帰る所がないんだ。お願いだから追い出さないで。何でもするから、お願い」
私には、ヨウの言葉がどこまで本当なのか、さっぱり見当がつかない。
しかし、必死で訴える姿に、嘘はないようにも思えた。
「熱が下がるまでだぞ」
私が告げると、ヨウは安心したのか顔を綻ばせた。
「ありがとう。本当に、ありがとう」
その頬に、一筋の涙がこぼれた。
そして、私にすがりついて、ヨウは何度も何度も礼を言った。
私は、ヨウの体をそっと離して顔を見る。
「蕎麦、買って来たんだけど。着替えたら一緒に食べるか?」
すると、ヨウは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。すぐ着替える」
そして、ヨウと二人、昨日と同じように立ったまま蕎麦を食べる。
「美味しいね」
そう言ってから、ヨウは考え込むように俯いて、手に持った箸をじっと見る。
「元気になったら、料理を作って笹川さんに食べさせたいな」
それから、悲しそうに続ける。
「でも、元気になったら、出て行かなくちゃいけないのか……」
箸を止めて俯いているヨウの頭を、私は軽く叩いた。
「そんな事、考えてないで、今は食べろ。飯が不味くなるぞ」
「うん。そうだね」
ヨウは、私の言葉に頷いて、やっと箸を動かし始めた。
「そう言えば、俺の絵だけど。多分、明日くらいには返って来るから」
私が告げると、ヨウは急に明るい顔になる。
「そうなの?」
「下手でも笑うなよ」
「笑わないって」
「約束だぞ」
ヨウは、目を輝かせて私の顔を見る。
その無邪気な笑顔につられて、私も思わず微笑んだ。
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