これは少年ラーズの異世界物語

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第10話 手段とチケット屋さん

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 残った下半身が倒れそうになると、それは光の粒子へ変わり空気中を漂い始める。そしてその光は元いた船頭を形作ると、切られる前となんら変わらない船頭の姿になった。船頭は切られる前と変わらず再び沖を見つめている。

「お前神の代理人だろ。3か月ぐらい前に一握りの人間しかこれないはずのこの交差市場に、右も左もわかってない連中がたくさん現れたと話題になったから耳にしている。すぐ全員いなくなっちまったがなかなか神々の世界も面白い事になってるらしいじゃないか。」

 そう笑みを浮かべながら話しかけてくるライオンさんに、僕は無意識に銃口を向けた。
 この人に敵意がないのはわかっている。
 わかっているが、本能が僕の命を簡単に奪えそうな存在に向けさせる。

「子供なのに脅して物事を進めるのが体に染みついてるのは同情するが、悪いことは言わねぇ、お前のレベルじゃそれは悪手ってもんだ。」

 当然のように全く怯まない。
 僕が手にしているものが武器と認識していないわけでもないのに。
 ライオンさん…そのことは僕が一番わかっているよ。僕の直感がさっきから目覚ましかってぐらい頭の中で危険だと鳴り響いているんだから。

 まだ何もしていないのに呼吸は既に荒れていた。それを整えようと無理矢理大きな深呼吸してから、ゆっくり銃口を地面へと下げた。女の人が残念そうな顔をしたことで、それが正しい選択だったと気付く余裕ができた。

「なら僕をあなたの船に乗せてくれませんか?船代分は必ず働いて返すので」

 僕の少し震えたお願いは、横を素通りされる形で返された。

「残念だが、船は2人が定員だ。それ以上乗ったら消えちまう」

 二人は船に乗り込むと、ライオンさんはポケットから出した白いチケットを破りだす。するとチケットは青い炎を出しながら煙へと変わり、消えていった。

 それに呼応するように、先ほどまで微動だにしなかった船頭がゆっくり木製のオールを漕ぎ出した。ゆっくり、ゆっくりと古びた小舟が沖へと動き出す。

「船を盗んで勝手に沖に出ようなんて考えるなよ。島ぐらいデカい巨大魚に船ごと丸呑みにされちまうからな」

 二人を乗せた小舟が桟橋から20m程進んだところで突然霧の塊が現れた。船がそれに突っ込み、霧が晴れると船もまたどこかへ消えていってしまった。

 どうやらこの島を出るにはただ船を漕いでいれば出れるというわけではないようだ。
 駄目元で聞いてみただけだし同乗を断られたことにショックはない。
 しかし思っていた以上にこの世界で長生きするのは難しいと肌で感じたのは事実だった。


|||||


「一枚1000万…!?」
「一番安いやつね。高いのだと20億の値段が付くね」

 とりあえず値段だけども把握しておくかと、桟橋の近くにあるチケット屋まで訪れた。
 小さな売店のようなその店は、カウンターや壁に所狭しとチケットが値札と共に陳列されていた。僕が話かけても店員のおかっぱのおじさんは、椅子に座ったまま新聞から視線外そうとしない。

 提示された金額にどれぐらい価値があるかわからないが、1000万もあれば僕がいた国なら家が買える。

 僕はとりあえず物価が知りたいので、自分の持っているナイフを見せて、感覚でいいので値段を教えてほしいと伝えた。

「新品なら2000リル。あくまでも物だったらの話ね。」

 ちらっとナイフを見て言った金額は、僕のいた国の単位とはもちろん違うが、だいたいイメージの値ごろ感だ。つまり船代で家が買えるわけだ。吹っかけられているとしか思えない値段の提示も気になったが、それと同じぐらい引っかかる表現もあった。

「物だったら?」
「それはお前さんの権能だろ?お前さんの意思で消えちまうもんなんて売り買いなんてできないね。この島にそんなのに騙されるやつもいないね。」
「…、権能ってなんですか?加護とは違うんですか??」
「権能を知らない!?……ってよく見ればレベルが1桁じゃないか。お前さん、3か月前に大量に表れた代理人と同種ってことかい…。」

 はぁ…とため息をつき厄介者を見る目でこちらを見て、首元にある黒い首輪をひと撫でした。
 恐らく代理人と何かひと悶着あったのだろう。
 初対面なのに好感度は0を突き抜けマイナスになっている気がするが、新聞から意識をこっちに向けれたので良しとしよう。

「権能ってのは、神から世界で行使することが許可された能力の事ね。まぁ言うなれば物理法則と同じこの世界の原理原則の一つね。」
「原理原則?」

 おじさんは手元にあった水の入ったコップを僕の顔の前に突き出した。

「このコップを傾けたら中に入っている水はどうなるね?」
「もちろん地面へ落ちる」
「その通りね」

 実際におじさんはコップを傾け水をこぼしてみせた。

「権能っていうのはまさにこれと同じ。水は高い所から低い所へ流れる。世界がそう出来ているからね。権能も同じで、それを行使すれば現実に反映される。わしには【鑑定】という権能を神から与えられた。これを使えば人や物の価値を知ることができるね。それが誰の視点なのか、何が基準になってるかは知らない。だが、確実なのはなぜこれが可能なのかは世界の原理原則でそう決まっているからね。」
「…じゃあもし僕が【空を飛ぶ】って権能を手に入れたら、空を飛べるようになるってこと?鳥のように翼がなくても」
「そういうことね。」
「論理は?」
「神という論理がある」
「万能だね、神様って言葉」
「お前さんのいた世界には権能はなかったようだね」
「魔法もレベルもね」
「そうかい、興味ないね」

 話は終わりだといわんばかりに、再び新聞へと視線を戻すおじさん。

「まだ質問いい?」
「最後ならいい」

 暇そうなおじさんにまだまだ話を聞きたかったが、最後と言われたならこの質問だけはしなければいけない。

「代理人でチケットを買っていった人は何人いるの?」


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