精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが

天色茜

文字の大きさ
28 / 63
第三章異世界の常識

この世界の精霊使い①

しおりを挟む
「ふぅ。やっと着いた···」

着いた、と言っても、湖を超えた所までである。
そのまま歩いて行くよりは、確かにフォレのツタの橋の方が早かったと思う。しかし、森や湖を一直線に通ったのだからそれなりに長い。流石に疲れる。
え?うーまに乗ってるのだから疲れないだろって?
こんなに高い所を歩いて、さらには馬に乗っているのだから精神的に宜しくない。

湖を超えたはいいが、周りには見渡す限りの草原と山脈ぐらいしかない。
見たところ通れる道は無い。今度こそ転移魔法を使った方がいいと思うのだが···。やっぱり地図か何か買えば良かっただろうか。

「アリサ、あの山崖道が出来てるのよ。行きましょう」

フォレ、流石頼りになる。
でもよく崖道のことを知ってるなぁ。精霊は何億年も生きてるみたいだし、当たり前かな?
でも崖道と聞くと嫌なことを思い出す。
グアンナ···まあ、会うこともないだろうし、フォレがいるから大丈夫か。

「分かった。フォレ、どこから行けるの?」

「あそこの林ら辺からよ。アリサは知らないと思うけど、度々人が馬車で通るの。湖に珍しい魚でもいるのかしらね」

「こんな所に来てまで?」

私がそう聞くと、フォレは黙ってしまった。何か聞いてはいけないことだったのだろうか。
しかしこんな場所まで来て釣り?獣人が湖の反対側までわざわざ来るとは思えないし、じゃあ向こうの国の人間?いや、人間が獣人国の領地まで来る勇気は無いはず。いやしかし、奴隷商人という可能性も···。

私が考え込んでいると、フォレのいつもと変わらない、「早く行くわよ」という凛とした声が聞こえてきた。
するとうーまが歩き出し、私は慌てて「待って」と声をかけた。

「ごめん。うーま、疲れたでしょ。もういいよ」

私はそう言い、名残惜しそうにするうーまから降りた。
流石にグアンナのトラウマを持っている上、崖道で馬に乗っていられるほど私は強くない。
フォレの話では、万が一落ちても精霊が助けてくれるし、崖から落ちても私なら死なないという。正直、流石に崖から落ちたのなら生身の身体では···。と、思ったのだが、「ビッグウォーターボール」でやらかしたのぐらいなので、強く否定できない。

フォレはいつの間にか崖道付近まで居て、「早く」と私を急かしてくる。
私はうーまと一緒にフォレの所へ向かった。

こんな崖道があるなんて···やはり誰か通っているのだろう。

そんなことを思いながらも、私達は山を登り始めた。








「疲れてないけど···飽きた」

私が愚痴をこぼすと、フォレの「まだまだよ」という嬉しくない返事が返ってくる。

私もこんな体質なもので、疲れはしない。だが、歩くだけだし、フォレとの会話も尽きてしまった。
····なんというか、暇だ。

「ん?何あれ···馬車?」

向こうからガラガラと音が聞こえてくる。遠くてよく見えないが、あれは確かに馬車だ。

そしてフォレの嫌そうな顔。

「フォレ、あれが何かわかる?」

「まあ···ね。関わらない方がいいわよ。転移魔法で行きましょう」

転移魔法···そこまでして嫌なものなのか?
だってあれは馬車だ。まさか凶暴な魔物が乗っているわけでもないだろう。
ではフォレが嫌いな人物···思い当たらない。

···いや、少しある。
でも、フォレ曰く世界で五人程度しかいないらしいし···。そんなまさか。

考えているうちに、馬車は私達の近くまで来てしまっている。転移魔法ではもう遅いだろう。

「···はあ。関わりたくないから、兵士達に見られない場所に行くわね」

そう言って、フォレは綺麗な羽をパタパタ動かしながら上空へ飛んで行ってしまった。
と言っても、いなくなったわけではない。どうやら上空から私達を見ているようだ。

そして···兵士達。
確かにあの格好は兵士らしい。私の予想が確信に変わる。

「む···?そこの女、何者だ」

私に気づいた兵士が問いかけてくる。

「ただのしがない冒険者です」

「嘘をつくな。ここは獣人国の領域だ。冒険者だろうが人間がこんな所にいるわけがないだろう。もしや貴様、魔女か?」

うるさいなぁ···。魔女って絶対見た目で言ってるでしょ。ていうかこの兵士の人、人間だよね。

「魔女ではありません。あなた達こそ人間ですよね?獣人国の領域で何をやっているんですか?まさか···釣りなどではないですよね?」

私がわざとらしく聞くと、兵士は動揺し始めた。

「そ、そんなわけないだろう!貴様には関係ない!どけ!どかないと殺してしまうぞ!」

兵士が物騒なことを言い始める。なんだか面倒くさくなってきた。
大人しくどこうとした時ー。

「おい女、俺への無礼はそんなものでは済まされないぞ」

男の声。
イラッとしながら見ると、馬車から降りてきたのは高価そうな装飾品を身にまとった、太り気味の男だった。

「俺様は釣りに来たんだが、その道は長い。そしてお前は唯でさえ長い時間をさらに延ばした。
    ···精霊使い様のな。死刑だ。王宮に戻ったら首吊りにでもしておけ」

······うわぁ。
俺様とか···痛い。痛すぎる。
予想は出来ていたが、精霊使いだった。予想以上の自己中だ。

私自身もそんなに良くない性格だと思うが、流石にこんなことは言わない。

それでも精霊使いなのだろう。十匹くらいの精霊が傍にいる。

「せ、精霊使い様。流石に実質何もしていない人間を処刑ともなりますと、国民からの批判が···」

「何?俺に逆らうのか?」

「め、滅相もございません!」

先程の兵士の威圧が嘘のようだ。私も精霊使いだって言ったら心臓止まるんじゃないかな。

「おや?女、さては貴様も精霊使いか?凶悪な顔で気づかなかったが、数百の精霊がまとわりついているではないか」

サラッとディスっている。
まあ、精霊使いが精霊が見えるのは当たり前か。

「そうですよ」と言い、兵士を見ると、面白いくらいの驚愕の表情をしていた。

「なるほど···。おい女、同じ精霊使いだということに免じて、処罰を軽くしてやろう。そこの馬を譲れ」

····は?何言ってるの?
うーまを譲れってこと?断るに決まってるじゃん。

「そこの美しい馬、貴様には勿体無い。俺様の蒐集···いや、愛馬にしてやろう」

そう言い、男はあろう事かうーまに乗り始めた。
だがうーまは嫌そうに男を振り落とす。男は「うわぁっ!」と、無様な声をあげる。不幸か幸いか、怪我は特に無いようだ。
うーま···私と真逆の反応じゃないか。

「っ!この馬···!···まあいい。俺様は心が広いからな。毛皮にでもして、特別に俺様の装飾品にでも加えてやろう」

···マジで何言ってんのコイツ。
毛皮にする?それってつまり···うーまを殺すってことでしょ?

···かつて無いほどの怒りを感じた。

「···ふざけるな。さっきから生き物の命を軽く見すぎなんだよ」

このどす黒い声が自分から発せられていると気づき、正直驚いた。でもこの怒りがその程度で収まるわけがない。
男は驚いていたが、すぐに怒り始めた。

「俺様に向かってなんだその態度は!?俺に逆らうと精霊が黙っていないぞ!お前ら、この女を殺してしまえ!」

お前らとは兵士のことだろうか。恐らく、精霊のことだろう。だが誰も動かない。

「···?おい、精霊!さっさと女を殺せ!」

『えー。いやだーこの子はこーげきしたくないー』

『なまえなんていうの?契約しようよー』

のほほんとした声。
殺すどころか私に契約してとねだってくる。

「な···!?ふざけるなお前ら!俺様の言うことを聞け!」

「あの、精霊にそんなことを言っても無理だと思いますよ。というか私も精霊使いですし。精霊はあなたの道具じゃないんですから、そんなふうに命令しないでくださいよ」

さっきからこの男は精霊に命令している。精霊使いは精霊を盾に我儘を言っているのか?···酷いな。

「黙れ!精霊は道具だ!それ以下でもそれ以上でもない!俺様は精霊使いなんだ!精霊が言うことを聞いて当然なんだ!」

「はあ!?精霊は生きているんですよ!精霊は好きであなたの傍に居るだけなんです!それもわからないなんて馬鹿じゃないの!?」

「黙れ黙れ!俺様に指図するな!醜い女に馬!約立たずの兵士に精霊!
   こんな時の為の精霊だろうが!お前らは道具じゃない!ガラクタだ!ゴミだ!俺以外全員クズだ!」

なんて横暴なのだろう。怒りを通り越して呆れてを感じる。

「·······ふざけないで」

静かだが、確かに怒りの混じった声。
気がつくと私の目の前にいたのはーー。



「·······フォレ···」

しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

薬師だからってポイ捨てされました!2 ~俺って実は付与も出来るんだよね~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト=グリモワール=シルベスタは偉大な師匠(神様)とその脇侍の教えを胸に自領を治める為の経済学を学ぶ為に隣国に留学。逸れを終えて国(自領)に戻ろうとした所、異世界の『勇者召喚』に巻き込まれ、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。 『異世界勇者巻き込まれ召喚』から数年、帰る事違わず、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居るようだが、倒されているのかいないのか、解らずとも世界はあいも変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様とその脇侍に薬師の業と、魔術とその他諸々とを仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話のパート2、ここに開幕! 【ご注意】 ・このお話はロベルトの一人称で進行していきますので、セリフよりト書きと言う名のロベルトの呟きと、突っ込みだけで進行します。文字がびっしりなので、スカスカな文字列を期待している方は、回れ右を推奨します。 なるべく読みやすいようには致しますが。 ・この物語には短編の1が存在します。出来れば其方を読んで頂き、作風が大丈夫でしたら此方へ来ていただければ幸いです。 勿論、此方だけでも読むに当たっての不都合は御座いません。 ・所々挿し絵画像が入ります。 大丈夫でしたらそのままお進みください。

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

処理中です...