精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが

天色茜

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第四章冒険者事業

閑話 元精霊使いの回想①

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俺の名前はカルク・スティーヌ。
貧乏な家に生まれた、顔も良くなければ頭も良くない凡人だった。
そんな俺はみすぼらしい格好を周りの子供から笑われ、幼少から男子達にいじめられてきた。

つまらない人生だった。だが俺は将来、王都へ行き、騎士になろうと、毎日木の棒を振り回していた。騎士になるという夢は、俺達のようなまだ七歳くらいの子供が見る夢だった。
そんな俺を周りは嘲笑い、母親も苦笑いを浮かべるだけだった。
王都では身分差が激しい。田舎者がしゃしゃり出た所で笑われるのがオチだった。

そんな中、子供達はもう一つの職業に目を輝かせていた。

それが「精霊使い」という職業だった。

どのような理屈か、この世界は魔力のある者は十歳から精霊が見えるようになる。大人達は神様の掟だとか言っていた。
だが人間は魔力が少ない。体内にある魔力は身体を鍛えることで大きくなるとでも言われているが、精霊が見えるようになるまでは何十年もかかることだろう。

しかしそんな人間でも精霊使いとなれば精霊が見えるどころか、精霊から好かれるようになるのだ。
身分も性別も容姿も能力も関係ない。まさに夢の職業。そして世界で何千万、何億人のうちの一人···。

もう少しで十歳となる九歳の俺達は、期待を膨らませていた。
いや、俺は元から騎士を目指していたから特に夢中にはならなかった。正直俺達みたいなやつらから精霊使いなんて現れるわけがないと思っていた。

だが自分が精霊使いになると確信している馬鹿な男子、精霊使いになりそうなやつらに媚びを売る女子。
そんなやつらに馬鹿にされていると思うと、さらに嫌気が増す。

俺はそのうちに十歳の誕生日を迎えた。
その日の朝、身体に異変も何も感じなかった。「やっぱりだ」と思いながらボロい家から外へ出る。俺は信じられない光景に目を疑った。

羽の生えた小人が飛んでいたのだ。
その場には二匹程度しか居なかったが、歩いていくといつもの何も無い場所に一匹は小人が居た。

理由はわかっていた。あの小人はきっと精霊。


俺は「精霊使い」だったんだ。

俺は特に浮かれたり、慌てたりはしなかった。確かに精霊使いになったという実感が無かった。
しかし俺に嬉しそうに話しかけてくる精霊の姿が、より現実感を増した。

夢と疑わず、俺は母親に教えた。
俺に精霊が見えると。俺は精霊使いだったとんだと。
しかし母親は微笑し、ため息をついただけだった。

俺はこの反応に納得がいかず、周りの子供達にも教えた。
しかしまた笑われ、「調子に乗るな」と怒られ、手を上げようとする者まで現れた。
俺は反射的に目を瞑り、暴力に耐えようとした。

しかしいつまで経っても痛みは来ない。目を開けると手を上げようとした男子が遠くで倒れていた。
わけがわからず辺りを見回すと、横に居た緑の髪の精霊が怒った様子で男子を見ていた。隣には青い髪の精霊もいる。
緑の髪の精霊の羽は、くるくるとした模様のような線が通っており、着ているワンピースもふわふわと揺れていた。

この精霊の特徴は本で見たことがある。確か、風の精霊。

周りの子供達は「何するんだお前!」と一斉に俺に飛びかかってきた。
しかしその子供達は俺に触れることなく投げ飛ばされた。

起き上がった子供や見ていた子供達は、青い顔をして逃げていった。
俺はなんだか満足して精霊にお礼を言い、家に帰った。

一晩して朝になると、俺の家に人が集まっていた。

「精霊使いの子が居るんだろ!?」

「精霊使い様~魔法見せて~」

母親は俺が嘘を撒き散らしたと思ったのか、俺に怒鳴り、周りの人達を帰らそうとした。
ここで黙っていれば俺の運命は変わっていたのかもしれない。

嘘はついていない。それなのに怒鳴られるなんておかしい。
俺は子供の純粋な理屈を持って不満を持ち、昨日から仲良くしていた風の精霊に魔法を見せるように頼んだ。精霊は笑顔で承諾した。

風の精霊はそこら辺の木の葉を風に乗せ、俺の横へ持ってきた。つまり、風で木の葉を浮かせた。

その不思議な光景に周りは呆気に取られ、母親も信じられないという表情で俺を見つめた。
静まっていたが、それが魔法だと気づいた人々は盛大な拍手と歓声を上げた。
俺は調子に乗り、精霊に命じ、コップやそこら辺の農業道具まで浮かせた。

歓声はさらに上がった。当然だ。
大人も扱えない魔法を初めて目の当たりにし、それも幼い少年が扱っているのだから。

その日は一日中人々に魔法を見せびらかしていた。
植物の精霊や水の精霊なんかも呼び、草花を成長させたり、無の空間から水を出したりさせていた。
実際に魔法を使っているのは精霊だが、俺を褒める奴も居れば金を置いていく奴も居た。それを俺は自分の才能だと、素晴らしく誇らしく思った。

次の日、王都に居るはずの兵士達が俺の家に来ていた。
わけがわからず馬車に乗せられた俺が最後に見たのは、デカい袋に詰め込まれた金を兵士から受け取る母親だけだった。

王宮に着いた。
本当にわけがわからなかった。
王都へ行けるだけでも夢だと言うのに、王宮へ来ることが出来るだなんて。
だがわかっていた。

俺は「精霊使い」だから。

だからこんな場所に足を踏み入れることが出来る。俺は既に精霊使いという職業に魅了されていた。

それからは夢のような暮らしだった。
王族のような服装や食事、もちろん扱いも。
誰も俺に逆らわない。逆らったら精霊の怒りを買い、王宮に居ることが叶わなくなる。

誰もが自分の身の為に、自分が得をするように俺にペコペコ従い、俺を褒め尽くした。
それに俺は馬鹿のように乗り、全て自分の魅力だ、自分の才能だと勘違いを始めた。

全て精霊のおかげだと言うのに。

月日は流れ、俺は二十歳を越えていた。
この時点で俺は、自分に歯向かう者に容赦しない、傲慢な奴へと成長していた。誰も俺を叱らないし、言うことを聞くだけだから当たり前だ。今考えれば言い訳に過ぎないが。

俺は最近釣りにハマっていた。
最初は近くの川程度だったが、より珍しい魚を求め、隣国の獣人国の湖に珍しい魚が居ると噂を聞き、すぐに連れて行くように命じた。

流石の兵士達や侍女達も止めようとした。
獣人国は人間を嫌っている。差別を無くす為出入り禁止こそしていないが、街や村に入ればその様子は一目瞭然だった。

だが俺に逆らう者は居ない。
結局馬車でこっそり湖へ行き、釣りを楽しんだ。思った通り珍しい魚が釣れた。
その日からこの湖へ通うのが日課となった。

そんな日が流れ、いつものように湖へ向かっていた日のことだ。

あの女が現れたのは。

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