9 / 147
────0章『王様と彼らの泥舟』
■6「運命の輪」
しおりを挟む
****♡side・大里
久隆の視線の先には咲夜と葵がいる。大里はそれに気づきどうしても彼の耳に入れて置きたいことがあった。正直、久隆が誰かに興味を持つのは気に入らない。だからと言って、持っている情報を隠すことが良いとは思えない。大里は変に真面目で正義感が強かった。
「は?」
大里が持っている情報を久隆に告げると、彼は怪訝な顔をする。大里は、
「だから、片倉は入学してすぐ“洗礼”を受けたらしいんだよ」
と、簡易な説明を加えた。K学園での“洗礼”とは、つまり内部生から外部生に対して虐めに該当する行為のことである。
「クラスのヤツらに輪姦されそうになったって」
大里の説明に彼は、険しい顔をした。
「それ、片倉は..」
「風紀に通報して、未遂に済んだらしい」
心配そうな彼に、そう続けると、
「そっか」
顛末を知りホッとした表情を見せる、久隆。
大里は遠目でしか“片倉 葵”を見たことがない。可愛いという噂はよく聞くが、自分にとっての一番は他でもなく“久隆”であったから、わざわざ見に行く必要を感じていなかった。
「でも、誰から聞いたの?」
「あ..片倉と同じクラスの子から。通報したのがその子でさ」
「..あのセフレの子?同じクラスなんだ」
何故彼が、ピシャリと当てたのかわからない。通報をした生徒である“黒川 彩都”は大里の特別なセフレで三年目の付き合い。久隆と彼は会ったことはあるが、名前は知らないはずだった。
大里は、久隆が何度も黒川を虐めの現場から救っていたことを知らない。黒川は“大里にバレると別れると言われるかもしれない”と思い彼に口止めをしていたからである。
「風紀が監視してるみたいだしひとまずは安心みたいだ」
「それならいいけど」
大里は、昨年度の生徒会副会長で今年度は風紀委員長を務める三年の先輩と仲が良かったため、その辺からも情報が入ってきていた。
久隆が他人に興味を示すなんて。
大里は複雑な気持ちになる。初等部で久隆がイジメにあって、壊れたあの日以降、彼は学園で笑うことも怒ることもなく、周りに無関心なまま過ごしてきた。ここへ来て“霧島 咲夜”に関心を示し、“片倉 葵”を心配している。何が彼を変えたのか、不思議でならない。
ただ救いなのは、久隆が自ら二人に接触しようとしないことであった。彼らもまた、久隆に近寄りはしない。大里は怖いのだ、彼らが交わった時、世界が一変するような気がしてならない。自分たちの小さな世界が。大里は知らない、既に中学のあの旅行の時からゆっくりと運命の輪が廻り始めていたことを。
久隆の視線の先には咲夜と葵がいる。大里はそれに気づきどうしても彼の耳に入れて置きたいことがあった。正直、久隆が誰かに興味を持つのは気に入らない。だからと言って、持っている情報を隠すことが良いとは思えない。大里は変に真面目で正義感が強かった。
「は?」
大里が持っている情報を久隆に告げると、彼は怪訝な顔をする。大里は、
「だから、片倉は入学してすぐ“洗礼”を受けたらしいんだよ」
と、簡易な説明を加えた。K学園での“洗礼”とは、つまり内部生から外部生に対して虐めに該当する行為のことである。
「クラスのヤツらに輪姦されそうになったって」
大里の説明に彼は、険しい顔をした。
「それ、片倉は..」
「風紀に通報して、未遂に済んだらしい」
心配そうな彼に、そう続けると、
「そっか」
顛末を知りホッとした表情を見せる、久隆。
大里は遠目でしか“片倉 葵”を見たことがない。可愛いという噂はよく聞くが、自分にとっての一番は他でもなく“久隆”であったから、わざわざ見に行く必要を感じていなかった。
「でも、誰から聞いたの?」
「あ..片倉と同じクラスの子から。通報したのがその子でさ」
「..あのセフレの子?同じクラスなんだ」
何故彼が、ピシャリと当てたのかわからない。通報をした生徒である“黒川 彩都”は大里の特別なセフレで三年目の付き合い。久隆と彼は会ったことはあるが、名前は知らないはずだった。
大里は、久隆が何度も黒川を虐めの現場から救っていたことを知らない。黒川は“大里にバレると別れると言われるかもしれない”と思い彼に口止めをしていたからである。
「風紀が監視してるみたいだしひとまずは安心みたいだ」
「それならいいけど」
大里は、昨年度の生徒会副会長で今年度は風紀委員長を務める三年の先輩と仲が良かったため、その辺からも情報が入ってきていた。
久隆が他人に興味を示すなんて。
大里は複雑な気持ちになる。初等部で久隆がイジメにあって、壊れたあの日以降、彼は学園で笑うことも怒ることもなく、周りに無関心なまま過ごしてきた。ここへ来て“霧島 咲夜”に関心を示し、“片倉 葵”を心配している。何が彼を変えたのか、不思議でならない。
ただ救いなのは、久隆が自ら二人に接触しようとしないことであった。彼らもまた、久隆に近寄りはしない。大里は怖いのだ、彼らが交わった時、世界が一変するような気がしてならない。自分たちの小さな世界が。大里は知らない、既に中学のあの旅行の時からゆっくりと運命の輪が廻り始めていたことを。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる