R18【同性恋愛】『戻れない僕らの日常』【絆・対・相編】正規ルート編

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────0章『王様と彼らの泥舟』

■5「久隆の兄と社長秘書」

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 ****♡side・久隆

「はぁ..」
 久隆は着替えるとため息をつく、ベッドルームの隣の書斎では和が待ってくれていた。
「兄さん一緒に来てくれないかな」
 久隆はそう独り言を溢しながら書斎へと移動する。
「え?」
 俯いて歩いていた久隆は顔を上げて驚く、何故かその独り言を聞いて和が複雑な表情をしたから。

「どうかした?」
 久隆は和のその表情が気になった。何故なら、彼が自分に付いてからそんな顔をしたのが初めてだったからで。
「いえ」
「兄さんと何かあった?」
 兄は、大学生でありながら、社長こと父の第一秘書をしている。つまり和の職場の先輩であり同僚という関係になる。
「何も」

 ん?

 まるでその言い方は“何もないこと”が理由とでも言っているように思えて。
「連絡しても大丈夫?」
「はい」
 久隆は緊張した面持ちの和が気になりつつも、兄に連絡をした。
「あ、兄さん?」
 数コールして兄が電話口にでる。
『どうした?』
 優しい声に久隆はホッとした。最近忙しくて会えない兄は、とても無口な人で。
「今日、親父と会食なんだけど兄さん一緒に来てくれないかな」
『んー。いいけど条件がある』

 え、条件?

「な、何?」
『親父の前でお兄ちゃんって呼んでハグしてくれるなら行ってもいいよ』

 はあああああ?!
 ハグはまだしも、もう高校生なのに。
 “お兄ちゃん”は恥ずかしい。

 兄をはじめ、父も祖父もいつまで経っても久隆を子供扱いどころか幼児のように可愛がる。久隆は羞恥に真っ赤になったが、背に腹は変えられない。
「うん、わかった」
 久隆は涙目だった。しかし、父と二人きりは耐えられない。
『じゃあ、今から迎えに行くよ』
「あ、和と一緒に..」
『え?』

 うん?!

 久隆は兄の声音に驚く。それは和と真逆の反応だったからだ。和は会いたくないという反応に対し、兄は会えることが嬉しいという感じであった。

『わかった、待ってる。会社のほうに』
「うん。後程」
 電話を切って和に目を向けると思わず問いかける。
「兄さんにセクハラでもされてるの?」
「は?!」
 久隆の質問に和は驚いたが、
「そんなこと、しませんよ。あの方は」
 と、目を泳がせる。久隆には和の反応が不思議でならなかった。

 なんだろ?まるで、して欲しいみたいな言い方。

「行きましょう、久隆様」
「うん」
 あまり兄のことに触れて欲しくないようで、久隆はそれ以上追及出来ない。階段を先に降りる和を見ながらただ、首を傾げたのだった。

 ****

「はあああ..」
 翌日の昼、久隆は学園のテラスにいた。テーブルの上には和が届けてくれた黒の漆塗りのお弁当箱が二人分並んでいる。大崎邸の料理長の南が作ってくれた出来立てのお弁当。まだここへは来ていないが、一つは大里の分である。久隆は、テラスから見える広く芝生になっている憩いの場を眺めていた。そこに沢山設置してあるウッドテーブルの一つで、葵と咲夜が仲良さげにランチをしており、久隆はため息をつきながら昨夜の会食の時のこと思い出す。

 **

「お兄ちゃん?!なんで来たの?」
 父は同行した兄を見るなり不満げだった。それもそのはず、父より兄の方が発言力があるからである。大崎一族の力関係は久隆からどれだけ好かれているかで決まる、これは久隆だけが知らない、大崎一族の愛情戦争。兄は久隆をチラリと見た、それは合図で。
「お兄ちゃん、大好き」
 涙目になりながら、久隆は兄に抱きつく。
「うーんッ。久隆は可愛い」
 兄がいい子いい子してくれる。

 なんたる屈辱!

 久隆は兄の胸の中で唇を噛み締めた。
「久隆は、お兄ちゃんの隣に座ろうねー」
 と、兄は父をチラッと見ながらニヤニヤすると、父が悔しがっている。

 なんだ、この茶番。
 父の膝に座らされるよりはマシだが。

 夕飯は和食であった。個室で三人、ゆったりとした時間を過ごす。彩り豊かな高級握り寿司に久隆は舌鼓を打った。
「で?話は」
 久隆はお茶を啜りながら父にチラと目を向ける。
「今週末、パーティーがある」
 父の言葉を受け、週刊紙の表紙を思い出した。
「うち主宰のあれか。大里のところは来るんだろ?」
 と、兄が口を挟む。
「それはもちろん」
「そうか」
 兄は、ぽんッと久隆の頭に手を置いた。
「久隆、大丈夫だよ」
 久隆は兄を見上げる。なにがどう大丈夫なのかちっともわからない。
「チラッと顔出したら上に行ってもいいから」

 なるほど、そういうことか。

「まあ、パーティーの参加者の目的はもっぱらお兄ちゃんだものね」
 と、父は肩を竦めた。また兄狙いのお嬢様、お坊ちゃんたちがぞろぞろくるのかと思ったら久隆はうんざりする。
「早く恋人作ればいいのに」
 久隆がそう呟くように言うと兄は一瞬なんとも言えない表情をした。嬉しいのか悲しいのかわからない。
「恋人になってくれたら苦労しないのにな」
 兄が苦々しくそう口にすると、今度は父が微妙な表情をみせた。誰のことを言っているのかわからないが、どうやら父もわかっているらしい。

 うーん、もしや?

 と、久隆は思うのだった。

 ****

「ごめんな、お待たせ」
 ぽんッと、目の前に飲み物が置かれ、見上げると大里が立っていた。
「ありがとう」
 ほんの少し表情を動かし礼を述べる久隆に、満面の笑みを浮かべ隣に腰かける大里。この温度差には理由がある。
「食べていい?」
「うん、いただこうよ」
 大里の問いに久隆はこたえ、弁当の蓋を開けた。
「美味しそう」
 いただきますと手を合わせ箸を取る久隆を、大里はニコニコ見ている。家族やファミリーと呼ばれる久隆の周りにいる人達以外で、唯一近くに居られるのが自分だけなのだと改めて感じるこの瞬間が、大里は何より好きなのだ。久隆からすると、何でもないことなのだが。


「久隆、週刊紙見た?」
「見てない」
 即答する久隆に、大里は飲み物を吹きそうになる。
「堂々と嘘つくのって、どうなの?」
「なんで嘘だって思うんだよ」
 お弁当の中身は彩り豊かなステーキ弁当。プチトマトを口に運ぶ久隆は、なんだか可愛らしい。
「普通だったら、興味ないって答えるか、何かあった?って聞くかの二択だろ?」
「興味ないも、見てないも変わらないだろ」
 久隆は、“何言ってんだ”と言うようにサラダを口に運ぶ。
「全然違うだろうよ、その見てないは」
 大里は一口肉を摘まむと咀嚼をしながら久隆をじっと見つめた。

「”見たけど、その話題に触れられたくない”だから見てないって嘘ついたんだろ?」
 肉を飲み込んでからそう久隆に自分の推理を話せば、
「探偵か?伊達に俺のストーカーしてないな」
 と、言われ大里は椅子からずり落ちそうになった。
「まーた、再燃してるぞ?俺たちの噂」
「なにがそんなに嬉しいんだよ、変態」
 久隆は嫌な顔をし、ニヤニヤしている大里を蔑んだ目で見つめる。
「それに、週末パーティーだってよ。聞いたか?」
「昨日電話あったよ、姉さんから」
 大里はスマホにチラッと視線を送り返答した。

「ちょっと顔出せばいいって兄さんが言うから、俺はすぐ抜けるけど大里どうする?」
 肉を口に運ぶと思わず“うまッ”と久隆は溢した。
「俺も抜けようかなあーっ」
「じゃあ、映画でも借りて観てようか。食事二階のリビングに運んで貰うし」
 大崎邸は社長である父が趣味全開で建てた大きな洋館で、三階建てである。
「いいね。じゃあ、当日何か借りに行く?」
 と、大里。
「OK、了解」
 と、久隆。幼なじみだけあって、息はピッタリである。

「そういやさ」
「ん?」
 大里の話はここからが本題だったようで。この後、久隆は胸くその悪い話を聞かされるのであった。
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