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────1章『方舟のゆくえ』
■12「以心伝心」
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****♡Side・葵
────月曜日。
休み時間、葵がいつもの場所にいると躊躇いがちに咲夜がやって来た。
「おはよー、サク」
葵は荷造りが思ったよりも順調だったため気分は上々、明るく声をかける。
え、何。
その距離感。
それに反し咲夜は沈んだ声で、
「おはよ」
と挨拶を返すと、今まででは考えられない距離に腰掛けた。
「なんでそんな離れてるの?」
「だって..」
咲夜は寂しそうに膝をかかえる。
他に好きな人が出来たっていったから遠慮してるの?
可愛い!
鼻血でそう。
「寒いじゃん、寂しいじゃん、ひもじいじゃああん」
「何いってんだよ」
さすがに咲夜が吹き出した。
「ね?くっつこ?」
葵は無理矢理、咲夜の膝を割って向かい合って座る。
「なに、その強引さ」
「前からでしょ」
葵は咲夜の首に腕を絡め、気になっていたことを問う。
「ねえ、サク」
「うん?」
「久隆くんと、エッチした?」
「え?」
咲夜からサーと血の気が引いた。
「ねえ、気持ちよかった?」
久隆はどれだけしつこく聞いても詳しく教えてくれない。ここは咲夜に聞くしかないと思っていた。
「ちょッ!な?なん...」
なんで、そこまで動揺する?
うーん?
さては、気持ち良すぎて?
「なんで、知ってるの?」
あ、そっちかぁ。
「だって、久隆くんに謝られたから」
「え?なんで謝る..え、もしかして」
「うん?」
「葵の好きになっちゃった人って久隆?」
ちょっと待って。
その三角関係ややこしくない?
てか、逆ならまだしも。
久隆くんは咲夜が好きで、咲夜は俺が好き。
俺は久隆くんが。
何故そのルートで久隆くんが俺に謝るの?
変じゃない?
でも、なんか面白いからそういうことにしとくのも有りかな。
それなら離れていても咲夜の気持ち、変わらないだろうし。
「さあ、どうかな」
葵は結局、曖昧な返事しかできなかった。咲夜は素直だから、下手な嘘もすぐ信じてしまう。
それに、やっぱり不安だもの。
久隆くんは素敵な人だから心変わりしてしまうかもしれない。
ミカンの剥き方変だけど。
変過ぎるけど。
変でしょッ!
「葵、なんで?」
「何が?」
何について問われたのか分からず首を傾げると、
「久隆はエッチうまいけどさ..」
またしても咲夜の口から鼻血もののセリフが飛び出す。
「!」
うまいんだ。うわー。やぱ、3Pで咲夜をぐちょぐちょにして喘がせてみたい。いつも俺のことばかり優先するセックスしかしない彼だからこそ、見てみたい。変、かな?
「あ、いや。そうじゃなくて」
「うん?」
エッチについて詳しく知りたかった葵は少しがっかりするが、
「葵が居ないと寂しい」
と可愛いことを言われ卒倒しそうになる。
「側に居るじゃない。こんなに側に」
むぎゅっと抱きしめてあげると、
「葵が好きだよ?」
と、咲夜の切ない吐露。
大好きッ。
今は言えないけど。
ずっと一緒に居たいんだよ。
だから、ちょっとだけ我慢。
「ごめんね、今はダメなの」
「...」
「でも、ちゃんと戻るから」
「他の人とも経験したいみたいな、あれな感じ?」
「うーん、そんな感じ?」
俺は咲夜以外とはしたくないけどね。
咲夜が寂しいなら、許すから。
そんな覚悟、とっくに出来てる。
どんな犠牲を払ったって、ずっと一緒に居たいの。
目先の幸せなんていらない。
俺にはサクが必要なんだよ?
言えないけど、今は伝えられないけれど。
だからどうか、俺のこと好きでいて。
「葵、ちゃんと戻ってくるよね?」
「うん」
「信じてるよ?」
「うん」
葵は咲夜にぎゅっと抱きついたまま。
「サク」
「うん?」
「寂しかったら、久隆くんに慰めて貰ってもいい」
「..」
「許すから。全部許すから。だから」
咲夜が抱き締め返してくる。
「待ってて」
彼は何かを察したようで。
“寂しいけど、頑張ろうね”
と、咲夜の小さな小さな呟きに涙が溢れた。
────月曜日。
休み時間、葵がいつもの場所にいると躊躇いがちに咲夜がやって来た。
「おはよー、サク」
葵は荷造りが思ったよりも順調だったため気分は上々、明るく声をかける。
え、何。
その距離感。
それに反し咲夜は沈んだ声で、
「おはよ」
と挨拶を返すと、今まででは考えられない距離に腰掛けた。
「なんでそんな離れてるの?」
「だって..」
咲夜は寂しそうに膝をかかえる。
他に好きな人が出来たっていったから遠慮してるの?
可愛い!
鼻血でそう。
「寒いじゃん、寂しいじゃん、ひもじいじゃああん」
「何いってんだよ」
さすがに咲夜が吹き出した。
「ね?くっつこ?」
葵は無理矢理、咲夜の膝を割って向かい合って座る。
「なに、その強引さ」
「前からでしょ」
葵は咲夜の首に腕を絡め、気になっていたことを問う。
「ねえ、サク」
「うん?」
「久隆くんと、エッチした?」
「え?」
咲夜からサーと血の気が引いた。
「ねえ、気持ちよかった?」
久隆はどれだけしつこく聞いても詳しく教えてくれない。ここは咲夜に聞くしかないと思っていた。
「ちょッ!な?なん...」
なんで、そこまで動揺する?
うーん?
さては、気持ち良すぎて?
「なんで、知ってるの?」
あ、そっちかぁ。
「だって、久隆くんに謝られたから」
「え?なんで謝る..え、もしかして」
「うん?」
「葵の好きになっちゃった人って久隆?」
ちょっと待って。
その三角関係ややこしくない?
てか、逆ならまだしも。
久隆くんは咲夜が好きで、咲夜は俺が好き。
俺は久隆くんが。
何故そのルートで久隆くんが俺に謝るの?
変じゃない?
でも、なんか面白いからそういうことにしとくのも有りかな。
それなら離れていても咲夜の気持ち、変わらないだろうし。
「さあ、どうかな」
葵は結局、曖昧な返事しかできなかった。咲夜は素直だから、下手な嘘もすぐ信じてしまう。
それに、やっぱり不安だもの。
久隆くんは素敵な人だから心変わりしてしまうかもしれない。
ミカンの剥き方変だけど。
変過ぎるけど。
変でしょッ!
「葵、なんで?」
「何が?」
何について問われたのか分からず首を傾げると、
「久隆はエッチうまいけどさ..」
またしても咲夜の口から鼻血もののセリフが飛び出す。
「!」
うまいんだ。うわー。やぱ、3Pで咲夜をぐちょぐちょにして喘がせてみたい。いつも俺のことばかり優先するセックスしかしない彼だからこそ、見てみたい。変、かな?
「あ、いや。そうじゃなくて」
「うん?」
エッチについて詳しく知りたかった葵は少しがっかりするが、
「葵が居ないと寂しい」
と可愛いことを言われ卒倒しそうになる。
「側に居るじゃない。こんなに側に」
むぎゅっと抱きしめてあげると、
「葵が好きだよ?」
と、咲夜の切ない吐露。
大好きッ。
今は言えないけど。
ずっと一緒に居たいんだよ。
だから、ちょっとだけ我慢。
「ごめんね、今はダメなの」
「...」
「でも、ちゃんと戻るから」
「他の人とも経験したいみたいな、あれな感じ?」
「うーん、そんな感じ?」
俺は咲夜以外とはしたくないけどね。
咲夜が寂しいなら、許すから。
そんな覚悟、とっくに出来てる。
どんな犠牲を払ったって、ずっと一緒に居たいの。
目先の幸せなんていらない。
俺にはサクが必要なんだよ?
言えないけど、今は伝えられないけれど。
だからどうか、俺のこと好きでいて。
「葵、ちゃんと戻ってくるよね?」
「うん」
「信じてるよ?」
「うん」
葵は咲夜にぎゅっと抱きついたまま。
「サク」
「うん?」
「寂しかったら、久隆くんに慰めて貰ってもいい」
「..」
「許すから。全部許すから。だから」
咲夜が抱き締め返してくる。
「待ってて」
彼は何かを察したようで。
“寂しいけど、頑張ろうね”
と、咲夜の小さな小さな呟きに涙が溢れた。
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