R18【同性恋愛】『戻れない僕らの日常』【絆・対・相編】正規ルート編

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
66 / 147
────5章『救え、彼らを』

■1「きゅんとする瞬間」

しおりを挟む
 ****♡Side・葵

 黒川からの電話の内容は、”夜もおそいので、明日会えないか?”というものだった。葵にとって”黒川 彩都”とは、クラスメイトであるにも関わらず、先日の事件まで関わりのない人物。外部生でありクラスに馴染むことができず、友人の作れなかった葵は、咲夜にベッタリであった。そのまま関わりを持つことはないと思っていただけに、今さら関わりを持つことになるとは、なんだか妙な感じがする。葵が咲夜の方に目を向けると、不安げ気な表情。
「サク、寝よ?」
 葵は咲夜を元気づけようと、極めて明るく彼に抱きつくが、
「久隆が..」
 スマホを手に大事そうに持つ彼の手は震えていた。

 たった数ヶ月。そんな短い期間なのに、葵たちの中で“大崎 久隆”はいなくてはならない存在になっている。彼は不思議な人だと思う。自分は三年もかけてゆっくり咲夜との愛を育ててきたのに、彼はあっという間に葵たちの心を開き家族のように寄り添ってくれている。

「俺だって、久隆くんがいないのは不安だよ」
 泣き出しそうな咲夜の髪を優しく撫でてあげることしか葵にはできない。
「久隆くんのところで二人で寝よ?」
「うん..」
「泣いてたら、心配しちゃうからさ」
 咲夜が渋々立ち上がる。いつもなら久隆と咲夜に甘やかされ、ベッタリ甘えるという葵だったが久隆がいない今、自分がしっかりしなければと、強く思う。久隆の部屋に入ると、咲夜はウサギのぬいぐるみを抱き上げスマホを充電器に置いた。
「久隆の匂い」
 呟くようにそう言った咲夜の髪に手を伸ばす。絹のような手触りの綺麗な髪だ。
「ん?指輪?」
 そこで、咲夜の左手薬指に光る指輪に気づく。
「久隆がくれたの」
 はにかむ咲夜が可愛い。葵はベットに寝そべると中学時代の咲夜のことを考えていた。


 中学時代の咲夜は..。違うな、久隆くんに会う前のサクは、お兄ちゃんって感じだったのに。


 咲夜は今までずっと甘えることを知らないまま生きてきて、彼に出会う。久隆がべったべたに甘やかすものだから、咲夜は不安定になってしまった。


 そりゃそうだよね。


 ずっと力を入れて引っ張りあっていたものが、急に手を離されたら転んでしまうように、咲夜は加減がわからなくなってしまっている。


 俺が甘えて、久隆くんが甘やかす。
 二人のバランスが同じくらいだからサクは立って居られた。
 それなのに、久隆くんはいない。
 ああああああああッ。
 どうしたらいいのッ。


 葵は隣に寝転んだ咲夜に手を伸ばした。確かに好きになった頃と咲夜は違う。甘えさせてくれるだけじゃない。弱いところも見せるようになった。


 そこがきゅんてするんだよなぁ。


 ウサギをスンスンして寂しそうな咲夜が可愛い。
「サク」
「うん?」
「ぎゅってしようよ」
 そう声をかけると、咲夜はウサギを横において葵をむぎゅっと抱き締めた。
「ポカポカッ」
「うん」
「サク、大好きだよ」
「!」
 久隆を恋しがっていた咲夜は、葵が自分を一所懸命元気づけようとしていることに気づく。
「ごめんね。葵、大好きだよ」
「ふふッ」
 葵は少しホッとした。

 ****

「んッ..あッ」
「葵ッ..」

 二人は寂しさをまぎらわすようにお互いの熱を貪る。 オーディオから静かに流れる、Sweetest Goodbye。久隆の好きな曲ばかり入っているCD-ROMがくるくる回るように、二人の運命の輪も誰かの手によってくるくる回る。

 どうしてかな。
 泣きたくなるんだよ。
『もしかしたら、すぐに戻れないかも知れない』
 早く戻ってきてよ。
 ”ただいまっ”て笑顔で俺たちを抱き締めてよ。
『葵ちゃん、咲夜をお願い』
 そう締め括られていたメモ。
 久隆くんはどんな想いでサクを自分に託したのだろう?


「きもちい?」
「きもち..ッ..サクッ」
 不意に咲夜がぎゅうッと葵を抱き締め、
「うぅ..」
「サクぅ..なかな..いで..」
 葵も耐えなれなくなり涙を溢す。
「葵ッ..あ..おいッ」
「...ッ」
 二人はぼろぼろ涙を溢しながらお互いを求めあった。

 **

 ────翌朝、大崎邸にて。

「あったま痛い!」
 葵は泣きすぎて、頭痛がした。
「サク、起きて。朝ごはん黒川」
「は?」
 寝ぼけ眼で起き上がった咲夜がポカンとする。
「着替えよ」
「何が朝ごはんて?」

 頭痛薬貰お。
 えっと黒川くんから話を聞いて..。
 メモしたほうがいいかな?

「メモ帳」
「え?」
「早く食べにいこうよ」
 咲夜はじーっと葵を見ている。その彼を葵は無理矢理ベットから連れ出した。
「何食べるって?」

 あ、そうだ。
 久隆くんのスマホを持って行くべきだよね。
 えっと。

「スマホ、スマホ」
「...」
「早く」
「今日の朝ごはん怖い」
 眉を寄せ、心なしか青ざめる咲夜。
「何いってんの?」

 **

 階下に降りると、和がエントランスに居て、
「おはよ」
「おはようございます」
 葵は挨拶を交わす。やはり久隆は戻って来なかったのかと葵は思った。黒川はここに来ると言っているが、そもそも何かすべきことがあるのだろうか?
「佐倉っちは何か言ってた?」
「聖さんに会ってコンビニまで送ったそうです」
 と、言うことは二人は合流したのだろうか?
「ご飯食べてくる」
「わかりました」
 和がエントランスのグランドピアノの前に腰かけるのが見えた。流れ出すジムノペディ。

「サク、いこう」
「うん。和、ピアノ上手いね」
「そうだね」
「葵も後で何か弾いてよ」
 咲夜の気が紛れるならそれもいいかもしれないと葵は思い、
「いいよ」
 と返事をする。
「やった」
 と、少しだけ元気になった咲夜の手を掴み、
「あとで、どこか行こうよ、サク」
 と提案する。
「うん」
 葵にも気分転換は必要だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...