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────5章『救え、彼らを』
■7「自分らしさ」
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****♡Side・久隆
拾い上げた咲夜の指輪を見つめ、久隆は苦笑した。
咲夜は話を聞いてくれない。俺はいつだって、言葉が足りないから咲夜を傷つける。もっと上手に伝えることができたなら、こんなことにならないのに。仕方ないじゃないか。友達はいなかったし、幼馴染みの大里は言わなくても気持ちを汲んでくれるし、葵ちゃんだって空気を読んでくれる。自分にはコミュニケーションを言葉でする機会が少なすぎた。
それが甘えだと言うことは解っている。
でもどうしたらいいのかわからない。
俺らしいやり方で伝えるしかないんだ。
久隆は指輪を握りしめると、ベットサイドのオーディオのところへ歩いてゆく。英語の得意な彼ならわかってくれるはずと、二曲、選び出した。一つはjust a feeling。愛のすれ違いの曲。恋人に向け”別れたくない、これで終わりなんて信じたくないよ”とすがる歌詞の曲である。
もう、一つはi’ll be there。”もし、君が自分を恋人にしてくれるのなら、いつだって側にいてあげる。すべてから守ってあげるし、いつだって君のために駆けつけてあげるよ”という内容の歌詞の曲だ。
咲夜が自分の言いたいことわかってくれればいいなと想いを込め、オーディオを操作し、曲を流し始めると、
「洗浄液あったかな..」
と言う久隆の呟きは、音楽に書き消された。
**
書斎に行き、洗浄液を見つける。久隆は洗面所で指輪の泥を洗い流すと、ワイングラスに洗浄液を注ぎ二つの指輪を落とし、デスクの上に置く。リクライニングチェアに腰掛け頬杖をつき、久隆はぼんやりとそれを眺めていた。
指輪の汚れが落ちて綺麗になったら、俺たちも一からやり直せるだろうか?別れたいなんて思ったことはない、十年は長かった。やっと愛しい人の心を手に入れたのに何故、手放さなければいけないのか。今度はもっと頑張るから。だから、そんな悲しい誤解はやめてよ。
しかし、何故だろう?大里と自分の距離感はそんなに変なのだろうか、と今までは考えもしなかった”最近の自分と大里について”久隆は考えてみる。
大里をクッション代わりにした。以前からこうだ。
大里をBGM代わりにした。上手いし、いつものことだ。
大里と添い寝をした。抱き枕代わりにするのは昔からよくやっていた。
...添い寝。え?添い寝?
そこで久隆は顔を覆う。
俺、変かもしれない。
よく考えたら友達の距離感じゃない!
親子じゃん。
普通は恋人の距離感と思うところだが、恋愛経験がない久隆はその考えには至らない。
もし、咲夜が友達だと断言している相手とそんなことしていたら怒り狂う!ああ、反省しないと。
「ん?」
意図を察したのか、泣き腫らした目をして咲夜がこちらまで歩いてくる。
「久隆」
彼の甘えるような声に、思わず両手を拡げた。
「おいで、抱きしめてあげる」
「うぅ..」
「もう、泣かないで。愛してるよ」
久しぶりの彼の体温。
「君だけを愛してる」
久隆はぎゅっと咲夜を抱きしめた。
拾い上げた咲夜の指輪を見つめ、久隆は苦笑した。
咲夜は話を聞いてくれない。俺はいつだって、言葉が足りないから咲夜を傷つける。もっと上手に伝えることができたなら、こんなことにならないのに。仕方ないじゃないか。友達はいなかったし、幼馴染みの大里は言わなくても気持ちを汲んでくれるし、葵ちゃんだって空気を読んでくれる。自分にはコミュニケーションを言葉でする機会が少なすぎた。
それが甘えだと言うことは解っている。
でもどうしたらいいのかわからない。
俺らしいやり方で伝えるしかないんだ。
久隆は指輪を握りしめると、ベットサイドのオーディオのところへ歩いてゆく。英語の得意な彼ならわかってくれるはずと、二曲、選び出した。一つはjust a feeling。愛のすれ違いの曲。恋人に向け”別れたくない、これで終わりなんて信じたくないよ”とすがる歌詞の曲である。
もう、一つはi’ll be there。”もし、君が自分を恋人にしてくれるのなら、いつだって側にいてあげる。すべてから守ってあげるし、いつだって君のために駆けつけてあげるよ”という内容の歌詞の曲だ。
咲夜が自分の言いたいことわかってくれればいいなと想いを込め、オーディオを操作し、曲を流し始めると、
「洗浄液あったかな..」
と言う久隆の呟きは、音楽に書き消された。
**
書斎に行き、洗浄液を見つける。久隆は洗面所で指輪の泥を洗い流すと、ワイングラスに洗浄液を注ぎ二つの指輪を落とし、デスクの上に置く。リクライニングチェアに腰掛け頬杖をつき、久隆はぼんやりとそれを眺めていた。
指輪の汚れが落ちて綺麗になったら、俺たちも一からやり直せるだろうか?別れたいなんて思ったことはない、十年は長かった。やっと愛しい人の心を手に入れたのに何故、手放さなければいけないのか。今度はもっと頑張るから。だから、そんな悲しい誤解はやめてよ。
しかし、何故だろう?大里と自分の距離感はそんなに変なのだろうか、と今までは考えもしなかった”最近の自分と大里について”久隆は考えてみる。
大里をクッション代わりにした。以前からこうだ。
大里をBGM代わりにした。上手いし、いつものことだ。
大里と添い寝をした。抱き枕代わりにするのは昔からよくやっていた。
...添い寝。え?添い寝?
そこで久隆は顔を覆う。
俺、変かもしれない。
よく考えたら友達の距離感じゃない!
親子じゃん。
普通は恋人の距離感と思うところだが、恋愛経験がない久隆はその考えには至らない。
もし、咲夜が友達だと断言している相手とそんなことしていたら怒り狂う!ああ、反省しないと。
「ん?」
意図を察したのか、泣き腫らした目をして咲夜がこちらまで歩いてくる。
「久隆」
彼の甘えるような声に、思わず両手を拡げた。
「おいで、抱きしめてあげる」
「うぅ..」
「もう、泣かないで。愛してるよ」
久しぶりの彼の体温。
「君だけを愛してる」
久隆はぎゅっと咲夜を抱きしめた。
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