R18【同性恋愛】『戻れない僕らの日常』【絆・対・相編】正規ルート編

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────6章『絆』

■5「王様ゲームに関する、葵の謎」

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 ****♡Side・葵

 葵が従業員食堂へ行くと、朝食の時間帯だけあって賑わっていた。
「おチビ、おはよ」
 入り口で佐倉に声をかけられ、
「佐倉っち、おっはー」
 と挨拶を交わす。葵はプレートを取ると料理の並んでいる場所へ。料理の所に並んでいる従業員のみんなと挨拶を交わすとなんだか楽しい気持ちになる。

 毎日が修学旅行みたいな雰囲気の大崎邸が、葵は大好きだ。彼らの暇な時は話し相手になってくれるし、遊んでくれたりもする。庭でDIYをしていれば一緒にやりたいと近づいてくる者、エントランスでピアノを弾いていれば立ち止まって聴き入る者、様々。一人っ子で父は忙しく不在がち、広い屋敷にお手伝いさんたちと母しかいない家で育った葵にとって、賑やかなこの家はとてつもなく楽しく、時々習い事で家に帰るのが寂しいほどであった。

「葵ちゃん、今日はミカンのデザートがあるのよ」
 隣に並んでいた年配の女性が教えてくれる。それを聞き、ミカンが大好きな葵はテンションが上がった。
「美味しそーッ」
 しかし、
「ちゃんと、飯も食えよ?おチビ」
 佐倉が葵の手元を覗き込み、茶々を入れる。
「むぅ」

 **

「大里、おはよー」
 大里を見つけ挨拶をする葵。彼は庭に面した大きな窓辺にあるカウンター席で、ブラックコーヒーを飲みつつ天井からぶら下がっているテレビモニターを見上げていた。
「おはよ、片倉」
 葵に気づき、挨拶を返す大里。テレビでは、片倉家と大里家の婚約が不成立になった話題を取り上げている。
「まだやってるんだー」
 と葵は椅子に腰かけるとニュースに呆れつつ、フォークでサーモンマリネを口に運ぶ。彼は肩を竦め、
「しばらくこの話題だな」
 と。自分で計画したこととは言え、ややこしい立場なのは彼である。
「勝手に三角関係にされてるんでしょ?」
 と、葵。元々噂のあった大崎家と大里家。そこに、片倉家との婚約破棄騒動で三家は泥沼の三角関係にされている、世間とは恐ろしいものだ。
「まあ、放って置けばいい」
 しかし彼は噂に関してはあまり気にしていないように見える。

「ところでそれだけなの?」
 葵はコーヒーだけの大里に疑問をぶつけた。すると、
「俺、食べてきたから。ここのコーヒー旨いんだよ。豆挽いてくれてるから」
 と。
「コーヒー好きなんだ?」
「好きだよ」
 と彼は微笑む。
 その表情に、つくづくイケメンだな、と葵は思った。
「ねえ、大里」
「ん?」
「前から疑問に思っていることがあるんだ」

 大里は久隆に対する初等部時のイジメが発端で、K学園に王様ゲームを作ったのだが、葵は彼の作った王様ゲームの概要を聞いた時から一つ疑問に感じていることがある。
 K学園では、幼稚園から学園の生徒であるものを内部生、それ以外の全ての生徒を外部生と呼ぶ。これを踏まえて考えた場合の話だが…。

 彼の作ったゲームのルール上、ゲームから抜けるチャンスを得るために、あえてルールを破る強者が現れることについては理解できる。しかし何故イジメの対象は外部生のみなのか。それに疑問を持った事には次の理由がある。

 この王様ゲームが作られる発端となったイジメについてだが、イジメにあった生徒、久隆は”内部生”なのだ。今とは真逆である。

 と言う事は王様ゲームが作られる以前は、内外関係なくイジメがあったということなのだろうか。もし、そうだとするならば、何故イジメの対象が外部生に絞られていったのか。この王様ゲームは学園に入学するまで存在を知ることが出来ない。内部生が外部生をイジメることで発生する罰ゲームの意味がいまいち理解できない。
 となると『内部生を抑圧するために』ゲームが存在すると考えるべきだ。なのに、イジメを受けた久隆は内部生。謎しかない。

「なんだ、そこまで考えているなら答えは出ているんじゃないのか?」
 頬杖をついて葵の話を聞いていた大里が、そう言った。
「もしかして」
 一つの推論を葵は持っている。
「久隆くんをイジメた子って外部生なの?」
「ご明察」
 と、彼は真面目な顔をすると、
「他の学園のことは知らないけれど、K学園で『内部生』と言ったら幼稚園からの奴らを差すんだ」
 と続け、葵は全てを察した。

 大里って、めちゃくちゃ怖い人だ。

 大里は”内部生の久隆が多期に渡りイジメを受けていたことを、幼稚園から一緒である彼ら、内部生たちは知っていたのにも関わらず見て見ぬふりを続けた結果、久隆が発狂してしまった”ことを恨み『王様ゲーム』を作った。
 内部生は王様ゲームのルールに恐れ戦き『外部生のせいでこうなったんだ!』と、その怒りはゲームを作った大里ではなく、何故か外部生全体に向かう。すなわち大里は内外生を同時に抑圧したのだ。

「内部生ってさ、人にもよるだろうけど。最長、大学院まで同じ顔ぶれでいることを分かっているわけだろ?だから表面上は穏便だったんだよ」
 大里は当時のことを振り返り続けて、
「正直、それまでは内部生がイジメの被害者になっても加害者になるのは稀だった」
 それを彼は完全に逆転させたのだ。

「許せなかったんだよ。仲間じゃないかよ!って」
「大里の気持ち、分かるよ」
「でも、久隆が望んでいるのは復讐なんかじゃない」
「そうだね」
 大里が何故ゲームを終わりにできないのか、葵にはわかっている。辞めたとたん久隆に牙が向くのが怖いのだ。葵はなんとか学園の問題を平和に解決する方法はないものか?と頭を悩ませるのだった。


 ****


「片倉って、一人で飯食えるんだな」
 フォークを口に運ぶ葵を眺めながら、大里がそんなことを言う。
「要介護みたいな言い方やめてぇー」
 ぷくぅと葵が膨れていると大里が眉を寄せて苦笑する。

 いい男だよね、大里って。
 モテるの分かる気がする。
 でも、恋人にするなら久隆くんタイプなんだろうなぁ。
 自分だけを特別にしてくれる人。
 大里は誰にでも優しいからなぁ。

「お待たせ」
 久隆と咲夜が手を繋ぎ、やっと姿を現した。
「遅い、何してたの?」
 と葵が抗議すると、
「咲夜が可愛いから、その..」
 と久隆が口ごもる。
「前菜食べてたの?!」
 と、久隆の言いたいことを察して葵がすっとんきょうな声をあげると、咲夜は赤くなり、大里が吹いた。
「まあ、そうとも言う」
 否定をしない久隆に“何しとんじゃ!”と言うように葵は眉を寄せる。
「料理取ってくるよ」
 と久隆は苦笑いをすると咲夜と共に料理を盛りに向かった。

「今日の予定は?」
 と、コーヒーカップを口に運びながら大里が葵に問う。
「図書館、お昼、買い物。夜は花火大会」
「買い物か。どこ行くんだ?」
「指輪買って貰うの」
「え」
 葵の返答に彼が固まる。
「おねだりしたら、二人が買ってくれるって」
「羨ましいな」
「大里なら、いくらでも買えるじゃん」
 わざとそう言うと、彼はため息をついた。
「あとね、ホームセンター行きたいんだー」
 葵にはホームセンターで欲しいものがある。
「何するんだ?」
 と聞かれ、
「お洒落な棚作るの」
「楽しそうだな」
 葵がニコニコしていると、勉強もやれよと彼に言われてしまう。

「デザート足りたの?葵ちゃん」
 と、盛り付けが終わった久隆が葵の隣に腰掛けつつ、そう質問してきた。大里はコーヒーのお代わりを取りに席を立ったようである。
「うんッ。もう、お腹いっぱい」
「それはよかった」
「買い物、ホームセンターも行きたいんだけどいい?」
 葵は久隆に追加の予定を伝えた。
「うん、もちろん」
 久隆は優しい。甘い。でも、それは葵と咲夜限定なことを知っている。
「咲夜、これ美味しいよ。食べる?」
「うん」
「ダメ、あーんして?」
「ええッ?!」
 イチャイチャする久隆と咲夜を葵はニヤニヤしながら眺めていた。

 **

 ────図書館にて。

 一時間後。四人は図書館に居た。
「ねえ、これ」
 それぞれに文献を漁っていると、葵が自力でPTSDを治す方法が載っている文献を見つける。
「こっちにもある」
 と大里も声をあげた。
「結構あるんだ。とりあえずその二つ借りてみる」
 と久隆は二人から本を受け取りながら、
「治せるかどうかより、希望があることに安堵したよ」
 という彼の言葉に、心配そうにしていた咲夜が微笑む。一番ホッとしているのは咲夜であろう。

「昼まで結構時間余ったね」
 葵が図書館に設置されている時計を見上げていった。
「先に指輪買いに行こうか」
 と、久隆はそう提案をすると本の貸し出しの手続きにカウンターの方へ向かう。
「大里は、今日は一日空いてるの?」
「おう。空けといた」
 ”結構楽しみにしてたんだ”と、大里が言うのを葵はなんだか嬉しく思っていた。

 ****

「これとかどう?」
 久隆が選んだのはプラチナリング。細いタイプで、お洒落なデザインである。重ねることを考えれば丁度よい。
「じゃあ、これが合うかな」
 咲夜はピンクのリング。ハートの形をしており、小さなダイヤが埋め込まれている。
「うん!うん!可愛いッ。素敵ッ」
 葵がペアリングを選んでくれる二人に腕を絡めると、腕を組んで三人を眺めていた大里が一言。
「二人の彼氏がいる子みたいだな」
 と。
「待って、それサクじゃんッ」

 久隆と咲夜は二人に構わず指輪を購入している。会計が終わると店の外に出た。
「わーい!ありがとぅッ。ねえ、つけていい?」
「うん。俺もつける」
 久隆はニコッと笑う。
「仲がいいな、ほんと」
 と、大里は腰に手を充て三人を眺めていた。
「可愛いッ」
 葵は重ねづけしたリングが可愛くてテンションが上がる。その様子が可愛いと、咲夜が葵の頭を撫でた。

「お昼、なに食べたい?」
 リングをつけ終わった久隆が三人に問う。
「ちなみに俺、和食がいいな」
「俺、トンカツ」
 と、大里。
「うーん。中華かなぁ」
 と、葵。
「タイ料理とか食べてみたい」
 咲夜が自分の意見を言うと、久隆と葵の目がキラーンと光った。
「はい、日本は民主主義だからね。恒例の多数決行います」
 と、久隆。
「意義なし!意義なし!」
 と葵。大里は怪訝そうだ。
「では、タイ料理がいい人」
「え?なんでそこから..?!」
 大里が不思議そうな顔をするなか、久隆と葵がピーンと手をあげる。咲夜は遠慮がちに。ぎょっとした大里は、そこでこの多数決の真意を知る。

「はい、三対一でタイ料理に決定しましたー!」
 と、満足気な久隆。
「パチパチパチ」
 と葵。
「おいおい!どこが民主主義だよ。民主主義と言う名の独裁主義じゃないかよ」
 大里が苦笑いをする。
「大里、面白いこと言うねー」
 葵はゲッツみたいなポーズを大里に向けた。
「大里、上手いこと言うねー」
 と、久隆も真似をする。そんな三人に咲夜が笑っている。
「やだなー、これぞ三位一体って言うんだよ」
 チッチッと、葵が大里に言う。
「あながち間違っちゃいないな」
 と、大里は肩を竦めた。

「どっかいいお店あるかな?」
 久隆が検索を始めると、咲夜はそれを覗き込む。
「こことか?」
「いいんじゃね?駅前まで歩くか」
 また四人が仲良くなって良かったと、葵は微笑むのだった。
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