R18【同性恋愛】『戻れない僕らの日常』【絆・対・相編】正規ルート編

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────2章【久隆と葵】

□6「兄のいない寂しさ」

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****♡Side・久隆

それは、食事を終え皆で車に向かっている時であった。
「へえ」
と、久隆の兄がスマホの画面を見つめ呟く。
「何かあった?」
久隆は不思議そうに兄を見上げるが、彼の視線は葵を捉えている。その視線に気づいた葵は、咲夜と手を繋いだまま、久隆たちの近くに寄ってきた。
「鶴城と美崎が恋人同士になったってよ。鶴城からメッセが来てた」
久隆には兄が何故、葵に向かって言うのかわからない。しかも、その発言に驚いたのは葵ではなく、大里であった。ますます何が何やらわからない。

どうやら葵は”生徒会副会長、鶴城《つるぎ》と風紀委員長の美崎が恋人関係になる事”を予想していたようで、
「良かったねーッ」
と、ニコッと笑い車に乗り込むが、咲夜は特にこれといった反応はない。彼が無反応なのは、もしかすると葵が事前に咲夜に、自分の考えを話していたからなのかもしれない。それに反して大里は、
「てっきり、とっくに恋人同士かと思ってた」
と呟くように漏らす。大里ははよく生徒会室や風紀委員室に入り浸っているた。彼からすれば、つき合っていないことの方が不自然なほど仲良く見えるのかもしれない。車に乗り込む大里に続いた久隆は、どちらともそんなに深いつき合いではない為言葉を発することはなかった。

「和、途中うち通るだろ?そこで降ろして」
帰りは和が運転するらしく、兄は彼にそう指示をする。
「兄さん、家には来ないの?」
久隆はてっきり兄が、大崎邸に帰るとばかり思っていたので、いささかガッカリしたが、この時はまさか翌朝大崎邸で、飛んでもないことが起とは、思いもしなかった。しかもそれを、人伝に聞くことになるとは。
「今度な」
と、気持ちを汲んだ兄が優しく言うのを、久隆は大里をクッションにしながら聞いていた。
「寂しい?」
クッションから..もとい、大里から小声で問われ久隆は小さく頷く。たまにしか会えない兄が、どんなに自尊心を傷つけるようなことを要求してこようとも、久隆にとって兄は“唯一の兄弟”、“大好きな兄”である。せっかく一緒にすごせると期待したのに肩透かしは切ない。

「大里はどうする?」
明日はデートだが、泊まるか?と言う意味で問うと、
「今日は帰るよ」
と返答が戻ってきた。
「最近、彩都をあまり構ってあげられていないから夜は一緒の約束なんだ」
と。誰よりも恋人同士らしく見えるのに、恋人同士ではない大里と黒川。今は無理でもいつか自分を諦めた大里が、黒川と恋人同士になるのかも知れないと思うと、久隆には嬉しくもあり寂しくもあった。しかし、その時が来たら。祝福してあげなければいけない。大里は自分を犠牲にしてまでも久隆を守り続けたのだから。今度は自分が幸せを祈ってあげなければ、と久隆は思うのだった。
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