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────3章【久隆と大里】
□6「後悔と純愛」
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****♡Side・大里
二十一時を過ぎた頃、大里は一人、自宅でマンションのベランダから月を眺めていた。手にはホットコーヒー。秋の夜風は優しく頬を撫で、まるで慰めでもしてくれているようであった。
自分は馬鹿だなと思う。しかし、人は愛のために、何もかも投げ打つことの出来る生き物でもある。久隆が大切だった、何よりも。だから自分は傍にいることよりも、壁でいることを選んだ。全てから彼を守る、壁であることを。なのに、今の自分はどうだろう。傍にいれば良かった、一緒にいられたかも知れない時間を、大切にすれば良かったと後悔している。小学四年の時からずっと、久隆が二度といじめに合わないように尽くしてきた。一緒に遊びたいのを我慢して、取り巻きと一緒にいたのは、周りの目を自分に惹きつけて置くため。
中学時代を思い出す。容姿を最大限活用して、自分の全てを犠牲にしてきた。久隆の為ならなんだってできた。あの笑顔をもう一度見たかっただけなんだ。
大里は手すりにもたれ、彼の好きなシュガーを口ずさむ。
彼が好きで、どんなに間違っているとわかっていても、止《や》めることなんてできなかった。いつしか久隆が、守られているだけの存在じゃないと気づいても。止めてしまったら、自分の存在価値がわからなくなってしまうから。生きている意味さえわからなくなるから。振り向いてくれると思ったことはない。何時だって、久隆の傷ついた心を癒すのは自分ではなかったし。それでも想いはとめられない。
どうすれば良かったのだろう?
どうしたら救われるんだろう?
もしやり直せるのなら…。
大里はそこでスマホのお知らせランプが点滅していることに気づいた。着信などは基本、サイレントにしている。理由は遊び人をしていたとき、通知があまりにも多かったからだ。
『大里?』
大里は画面に映る表示を見て、出るのを躊躇ったが、声が聞きたくて通話することを選んでいた。大好きな彼の声は優しげだ。そして、心配そうで。
「ん」
『大丈夫か?』
なんて答えたら正解なのだろう?
どうしたらいい?
わからない。
違う、わからなくなってしまったんだ。
『ごめん』
答えられずにいると、何故か久隆は謝罪の言葉を述べる。謝られたいわけではないのにと、胸の奥がずきりと痛んだ。
『大里、俺は恋愛感情で想う事はできなけど』
「ん?」
『友達とも違うけれど、好きだよお前のこと』
「え?」
理解が追いつかず、大里は固まったのだった。
****
何故そんな事いうんだろう、俺が可哀想だから?
いつまでも引きずって、前に進めなくて。久隆を好きなことやめられなくて。
「俺は、久隆が好きだよ」
抱きしめたい。
自分のものにしたいよ。
『知ってるよ』
と、彼。
どうしてお前には彩都がいるだろって、突き放してくれないんだろう。
どうして過ちを責めてはくれないんだろう?
「何故、久隆は」
疑問を口にすれば意外な言葉が返ってきて泣きたくなる。
『そんなことしたら、大里が壊れちゃうだろ』
優しすぎるんだよ。いつだって。
ずっと冷たい言葉を投げかけてきたのも、俺の気持ちに気づいていたから。
知ったら切なくなって、もっと君が好きになった。
お互い間違ってるって本当は理解してるんだ。
応えられないのにデートしてくれるのだって俺の為。
決定的な言葉を避ける俺のために、時々やさしい言葉をくれる。
その度、君をもっと好きになってどんどん辛くなる。
「俺は、久隆と恋人になりたかった」
『うん』
「がんばったら、振り向いてくれた?」
こんなこと聞いたって困らせるだけなのに。
聞かずにはいられない。どうかしてるよ。
彼は答えなかった。答えられるはずなど無いのだ。ずっと彼の心にいるのはこの世でただ一人”霧島 咲夜”その人だけなのだから。
「久隆!答えてくれよ」
懇願したって何も変わりはしない。過ぎ去ったifに答えなんて、滑稽なだけだ。それでも。嘘でもいいから『うん』といって欲しかった。
『わからない』
それは彼にとって、最大限の優しさだった。
「なあ」
『うん?』
声に元気がない。彼は自分の無力さに絶望しているのかもしれない。
「来世は恋人になってくれる?」
来世なんてものが本当にあるなんて思ってはいない。それでも、生きる希望が欲しかった。ほんの少しでもいいから。
『いいよ』
何故か彼がクスッと笑ったような気がした。
『そんなに俺のこと好きなんだ』
まるで誰にとも無く、呟くように。
『俺の何処がそんなにいいんだよ』
「え?全部だけど」
『はあ?』
素で答えたら”馬鹿か?”という意味合いのはあ?が返ってくる。これでこそ、いつもの久隆だなと、大里は思うのだった。
『なんだよ、全部って』
「全てだよ、頭のてっぺんからつま先まで、す・べ・て」
『馬鹿なの?』
「おまっ、ばかはないだろ!」
『いや、馬鹿としか言いようが無い』
「うわ!ひでえ。俺これでもK学園のモテランキング一位保持者なんだぞ」
と、抗議すれば
『別に馬鹿とモテは関係なくね?』
と、もっともな意見が返って来るのだった。
二十一時を過ぎた頃、大里は一人、自宅でマンションのベランダから月を眺めていた。手にはホットコーヒー。秋の夜風は優しく頬を撫で、まるで慰めでもしてくれているようであった。
自分は馬鹿だなと思う。しかし、人は愛のために、何もかも投げ打つことの出来る生き物でもある。久隆が大切だった、何よりも。だから自分は傍にいることよりも、壁でいることを選んだ。全てから彼を守る、壁であることを。なのに、今の自分はどうだろう。傍にいれば良かった、一緒にいられたかも知れない時間を、大切にすれば良かったと後悔している。小学四年の時からずっと、久隆が二度といじめに合わないように尽くしてきた。一緒に遊びたいのを我慢して、取り巻きと一緒にいたのは、周りの目を自分に惹きつけて置くため。
中学時代を思い出す。容姿を最大限活用して、自分の全てを犠牲にしてきた。久隆の為ならなんだってできた。あの笑顔をもう一度見たかっただけなんだ。
大里は手すりにもたれ、彼の好きなシュガーを口ずさむ。
彼が好きで、どんなに間違っているとわかっていても、止《や》めることなんてできなかった。いつしか久隆が、守られているだけの存在じゃないと気づいても。止めてしまったら、自分の存在価値がわからなくなってしまうから。生きている意味さえわからなくなるから。振り向いてくれると思ったことはない。何時だって、久隆の傷ついた心を癒すのは自分ではなかったし。それでも想いはとめられない。
どうすれば良かったのだろう?
どうしたら救われるんだろう?
もしやり直せるのなら…。
大里はそこでスマホのお知らせランプが点滅していることに気づいた。着信などは基本、サイレントにしている。理由は遊び人をしていたとき、通知があまりにも多かったからだ。
『大里?』
大里は画面に映る表示を見て、出るのを躊躇ったが、声が聞きたくて通話することを選んでいた。大好きな彼の声は優しげだ。そして、心配そうで。
「ん」
『大丈夫か?』
なんて答えたら正解なのだろう?
どうしたらいい?
わからない。
違う、わからなくなってしまったんだ。
『ごめん』
答えられずにいると、何故か久隆は謝罪の言葉を述べる。謝られたいわけではないのにと、胸の奥がずきりと痛んだ。
『大里、俺は恋愛感情で想う事はできなけど』
「ん?」
『友達とも違うけれど、好きだよお前のこと』
「え?」
理解が追いつかず、大里は固まったのだった。
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何故そんな事いうんだろう、俺が可哀想だから?
いつまでも引きずって、前に進めなくて。久隆を好きなことやめられなくて。
「俺は、久隆が好きだよ」
抱きしめたい。
自分のものにしたいよ。
『知ってるよ』
と、彼。
どうしてお前には彩都がいるだろって、突き放してくれないんだろう。
どうして過ちを責めてはくれないんだろう?
「何故、久隆は」
疑問を口にすれば意外な言葉が返ってきて泣きたくなる。
『そんなことしたら、大里が壊れちゃうだろ』
優しすぎるんだよ。いつだって。
ずっと冷たい言葉を投げかけてきたのも、俺の気持ちに気づいていたから。
知ったら切なくなって、もっと君が好きになった。
お互い間違ってるって本当は理解してるんだ。
応えられないのにデートしてくれるのだって俺の為。
決定的な言葉を避ける俺のために、時々やさしい言葉をくれる。
その度、君をもっと好きになってどんどん辛くなる。
「俺は、久隆と恋人になりたかった」
『うん』
「がんばったら、振り向いてくれた?」
こんなこと聞いたって困らせるだけなのに。
聞かずにはいられない。どうかしてるよ。
彼は答えなかった。答えられるはずなど無いのだ。ずっと彼の心にいるのはこの世でただ一人”霧島 咲夜”その人だけなのだから。
「久隆!答えてくれよ」
懇願したって何も変わりはしない。過ぎ去ったifに答えなんて、滑稽なだけだ。それでも。嘘でもいいから『うん』といって欲しかった。
『わからない』
それは彼にとって、最大限の優しさだった。
「なあ」
『うん?』
声に元気がない。彼は自分の無力さに絶望しているのかもしれない。
「来世は恋人になってくれる?」
来世なんてものが本当にあるなんて思ってはいない。それでも、生きる希望が欲しかった。ほんの少しでもいいから。
『いいよ』
何故か彼がクスッと笑ったような気がした。
『そんなに俺のこと好きなんだ』
まるで誰にとも無く、呟くように。
『俺の何処がそんなにいいんだよ』
「え?全部だけど」
『はあ?』
素で答えたら”馬鹿か?”という意味合いのはあ?が返ってくる。これでこそ、いつもの久隆だなと、大里は思うのだった。
『なんだよ、全部って』
「全てだよ、頭のてっぺんからつま先まで、す・べ・て」
『馬鹿なの?』
「おまっ、ばかはないだろ!」
『いや、馬鹿としか言いようが無い』
「うわ!ひでえ。俺これでもK学園のモテランキング一位保持者なんだぞ」
と、抗議すれば
『別に馬鹿とモテは関係なくね?』
と、もっともな意見が返って来るのだった。
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