R18【同性恋愛】『戻れない僕らの日常』【絆・対・相編】正規ルート編

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────4章【咲夜と葵】

□3「兄を取り巻く人々」

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****♡Side・久隆

久隆が制服を着替え、部屋から出るとエントランスのほうが騒がしい。三階の踊り場の手すりから階下を覗き込むと人だかりが出来ていた。

え?どういうこと?

久隆たちが帰宅した時には静かだったエントランス。騒ぎの中心人物は大崎一族きっての問題児”栗原 夏海(旧制:大崎)”。彼女は久隆の父の妹、つまり叔母である。この叔母は久隆にとって幼馴染みの”大里 聖”の母とは幼なじみで親友。しかも、その母の兄と婚姻していた過去があり、たった三か月で離婚してしまった。バツイチ美女であり、久隆の父の秘書でもある。そして、彼女はレイヤーであり腐女子なのだ。どこがどう腐っているのかといえば、身内をネタに同人を描くという、なんとも迷惑な人である。

騒がしい理由は、彼女の他に兄と兄の友人が三人来訪していたからだ。その友人には大里姉妹が含まれており、特に姉は夏海のファンでもあるらしく、とても慕っていた。

「やっほー!久隆くん。兄者《あにじゃ》は?」
だが、彼女がうちに来る時はろくなことが無い。ろくなことをしない人だ。
「会社だと言うとろうが!」
と、背後から兄にツッコミを入れられている。

なんだか面倒なことになりそうだな。

久隆は二階の欄干から下を見下ろし、今行っても、ややこしいことにしかならなそうだと思っていた。欄干に頬杖をつき、ことの成り行きを眺めていると、兄の友人が夏海に連行されて行き、大里の長姉が楽しそうについて行くのが見える。何故か兄は一人で上に上ってきたので、エントランスには、大里の次姉が取り残されていた。
「久隆」
「兄さん、お帰り」
三階の踊り場まで上ってきた兄は、久隆に対し極上の笑みを浮かべる。無駄にいい男だ。彼が大里の長姉から”美の女神に愛されし男”と言われているのを知り、妙に納得してしまっていたことを思い出す。しかし、その笑顔を向ける相手が自分と彼の最愛の人、都筑だけなことも知っていたので、複雑な心境ではあるが優越感でもある。

「おいで」
軽く両手を広げ、兄に呼び寄せられる。五日ぶりくらいであろうか、それでも、会っている方だ。兄の久隆への溺愛ぶりは有名で、高校生になっても子供扱いされ続けている。
「いい子だ」
久隆が兄に、大人しくハグをされているんのは周りに誰もいないから。
「久隆、頼みがあるんだ」
優しく抱き締められながら、そっと囁かれると、その意味を理解した。
「大里妹の相手をしておいてくれないか?探し物をしたいんだよ」
兄からものを頼まれるのは、初めてのことだ。兄はいつだって”お兄ちゃんが、なんでもしてあげる、久隆は子供だから何もしなくていい”そんなスタンスだったから。久隆は、一人前と認めてもらえたような気がして嬉しくなり、思わずぎゅっと兄にしがみつく。すると、
「久隆はいつまでたっても子供だなあ。寂しがりやさんか?抱っこしてやろうか」
と、兄が勘違いをしたので、久隆はしくじったと思った。
「いらないし!」
とムッとすると、
「そうか?」
と、可愛い可愛いと兄に頭を撫でられる。

なんてこった!

「じゃあ、頼んだよ?」
と、兄。
「わかった」
久隆は、兄が父の書斎のある方向に歩いて行くのを見て”父からの頼まれものだろうか?”とぼんやり思った。そして久隆は任務をこなすべく、階下へ向かう。その時、大崎邸の玄関ドアが開く気配がした。

大崎邸は門にセキュリティシステムがあるため、関係者しか入ってこられないようになっている。とはいえ、正面玄関からチャイムを鳴らさず入ってくるのは家人か父の秘書、勝手に乗り込んでくる大里姉妹と夏海くらいであった。
「誰だろう?」
このタイミングでうちに来る人物に心当たりは無い。何故なら、兄も社長(ちち)の秘書であるから。

****

「都筑?」
久隆は、やってきた人物を見て困惑した。目の前には兄の元彼女と、婚約者。困惑しないほうが不思議なくらいだ。

兄さんは、都筑が来るなんて言ってなかったのに。
あの二人を一緒にしておくのは不味いかもしれない。

都筑の目的は、兄で間違いないだろう。彼は困ったような、悲しみを含んだような複雑な表情で、大里の次姉を見つめている。まさか、ここで彼女と出くわすとは思っていなかったに違いない。久隆は、都筑が傷つくようなことがあれば、兄がどれほど悲しむだろうか、と考え思い切って彼にに声をかけた。久隆が彼に、兄が上にいることを伝えると、ほっとした表情を見せ、湾曲した階段を二階に向かって歩き出す。複雑な関係だ、兄の婚約者ということは、将来身内になる人間である。義理の兄でありながら久隆の部下にあたり、彼の甥は将来大崎グループのトップ、会長になるのだから。

久隆は、一人取り残された兄の元彼女に視線を移した。どんな経緯でそうなったのかは聞いていないが、兄との恋人関係は偽装だと聞いている。兄は、パーティーのたびに、嫁候補が自分に近寄るのが嫌だったのだろうか。父ならば、兄に、恋人がいることを知っていたならば、遠ざけそうなものだが。それほどまでに、父は息子二人を溺愛していたし、兄の生き方を尊重しているように見えたのに『何故?』という疑問が残る。とすれば、父も二人のことを知ったのが最近ということなのだろうか?

ふと久隆は、去年と今年のバレンタインの時のことを思い出す。彼がどんな想いで兄を見ていたのだろうか、と。去年、食堂で見た二人の微妙な距離感。久隆からのバレンタインのプレゼントに時計を欲しがった兄は、自分の時計を都筑に渡していた。どんな意味があったかなんてわからない。あんなに気に入っていたのにと、ぎょっとしたものだ。だが、都筑はその時計を一度も身につけていない。本人曰く『こんな高価なもの持って歩けない』らしい。

「ミノリお姉さん」
久隆は、いつまでも放って置くわけにもいかないと、兄の元彼女に声をかける。以前から彼女は大崎邸へは出入りしていたし、小学生の時はしょっちゅう一緒に遊んでくれていたので、よく知っていた。ちょっと変わっているが、優しいお姉さんである。

例えば、兄の入浴にカメラ持参でついてきたり、選挙カーで彼女の姉を探しにきたり…ん?ちょっとどころじゃないな、だいぶ変わっている。しかし、彼女は秀才であり努力家だ。学園祭では兄たちとバンドを組むらしく、彼女のエレキギターの腕前はかなりのものらしい。しかも、兄の為だけに猛特訓したというから驚きである。

****

「久隆くんッ。なんかだかわかりませんが、みんなどっかへいってしまいましたの。圭一くんが”ここにいろっ”とおっしゃるので、ここにいるのですが」
まるで忠犬ハチ公である。圭一とは、久隆の兄のことだ。
「何をする予定だったの?」
兄が何も言ってこなかったことを考えると、彼女に聞くのがてっとり早い。
「みんなで、狩りをする予定だったのですが」
久隆はその言葉で把握した。以前よく兄が友人三人を連れ、パソコンルームでオンラインゲームを楽しんでいたことを思い出す。
「ミノリお姉さんはランクいくつなの?」
「まだ、街(オンライン)に出てませんの」
「マジで!?」


まだ村(オフライン)しか終わってないらしい。どうやら兄は、彼女を街に連れ出し、みんなで狩りをしようと目論んでいたということだろうか。そこへ叔母”夏海”の襲来。メンバーはチリジリに。なんとも気の毒な展開である。

葵ちゃんと咲夜が来るまで街(オンライン)で遊んでおくか。
最初のほうなら、二人でも十分だろう。

「よし、一緒に遊ぼうよ」
と、久隆が彼女に向かって笑顔を向けると、その瞬間カメラのシャッターが切られた。
「ちょっ?!」
「エンジェルスマイルゲットですわ」
「そんなものゲットしてどうするの?」
久隆は相変わらず変な人だと思っていたが、叔母の夏海もよく一眼レフカメラを持ち歩いていたことを思い出す。まさか、その叔母の影響だなんて思いもしなかったが。
「聖に自慢しますの」
「ちょっ!炎上するからやめてよッ」
これは後から大里にぐちぐち言われそうだ、と久隆は肩を竦める。
「まずは、オンラインに慣れようよ。武器は何?」
二人はパソコンルームに向かいながら。
「ハンマーを専攻しておりましてよ」
「じゃあ、部位破壊お願いね。俺、尻尾切るから」
しかし数分後、誰だよこの人にハンマー持たせたの!と悲鳴をあげることとなるのだった。

「ミ、ミノリお姉さん…あのさ」
「なんですの?」
「本当に村クリアしたの?」
「ええ!」
と、にこにこしているが、久隆の顔が引きつるほど下手である。まだ、肉を焼いているところなのだが、ワンテンポ遅れ今こげ肉が九個できたところだ。

これは困った!
どうしよう?葵ちゃんたち早く来ないかな?

「上手に焼けましたー!」
ミノリは嬉しそうに声をあげ、スマホで撮影をした。

いやいやいやいや、焦げてるから!

「パパに送りますわ」
「え」
久隆はミノリを二度見する。
「うふふ」

早く来てえ、咲夜、葵ちゃんッ。
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