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────4章【咲夜と葵】
□5「何⁉」
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****♡Side・久隆
『何、人の姉に愛想振りまいてるの』
「そんな事してないし」
『ふーん』
突然久隆に掛かってきた大里からの電話。ミノリは楽しそうに採掘をしていた、のん気なものである。
『でも、ここに証拠あるんだけど?』
と、大里。それはそうである、ミノリが送ったのだから。
「なんだよ、俺のせいなの?」
さすがに久隆も、ムッとした。すると、
『妬いてる』
という返事。何故、大里《このおとこ》はこんなにいつもストレートなのだろう、返答に困る。彼が自分を好きなのは知ってはいても、そう思ってしまう。
「どうしろと?」
と、問えば。
『何もできないくせに』
と言われてしまう。この間から突っかかってくる大里に、久隆はどうしていいのかわからない。
「何がして欲しいんだよ」
『久隆に触りたい』
と言う言葉に一瞬ドキッとするが、大里は変な意味でいっているわけではないのだ。
『ぎゅってしたい』
「じゃあ、うちくれば?」
と久隆はため息をつきながら答えて見たものの、姉のいるところへ大里が来る可能性は低い。
『今は行けない』
なんだよ、来いって言えばこないって言うし。
『今、彩都と実家にいるから』
「は?」
デートの最中に俺に電話してきたわけ?
しかも、実家って。
何考えてるんだか、わからないよ。
「黒川がさ、ヤキモチ妬くんじゃないの?俺に連絡なんてしてきたら」
『それは…』
幼馴染みでずっと一緒に居て、結ばれる未来なんて最初から無くて。
そこにダメ押ししたのは大里で、させたのは自分なのだ。どんなに何があっても、その気持ちには応えられない、今の関係を保つことしか出来ないのに。
『久隆、好きだよ』
「うん」
今にも泣き出しそうな震えた声で、気持ちを吐き出す彼に、久隆は何も返すことができない。
『俺、久隆と結ばれたかった』
「うん」
もし彼が、咲夜に再会する前に告白して来たなら、今が少しちがっていたのだろうか。
それとも、自分は咲夜を思い続け、その気持ちを退けたのだろうか?
久隆にはわからない。彼が自分を好きなことはなんとなく知っていたが、中学二年の時彼がセフレを作り始めた時”ああ、一生言う気はないんだな”と思った。つい最近まで言葉にしなかったから、どこかで安心していたのかもしれない。一度言葉にしてしまうと、湯船から溢れるお湯のように蛇口を閉めない限り溢れ続けていく、それが彼の抱える想いなのかも知れないと久隆は思った。
きっとこの先も。
俺はただ、その想いを聞くことしか出来ない。
それでも大里は、結果を求めているわけじゃない。
諦めさせることだけが幸せとは限らない、だから余計に…。
なにもしてやれない。
****
久隆は回転椅子に腰掛け、楽しそうにゲームの中で釣りをするミノリを眺めていた。ミノリが兄を好きなことを知ったのは、だいぶ前のことだったと…いうより誰の目にも明らかだった。気付かないのは兄ただ一人。だから、兄が突然、彼女と恋人関係になったと知った時、久隆は凄く驚いた。マメに逢瀬を重ねていると思ったら、高校卒業と同時に別れたので、更に驚いたものだ。彼女は今でも兄のことが好きなんだろう、と感じるものの、彼女から負の感情は読み取れない。現にこうして、元恋人の弟と楽しそうに遊んでいる。
触れてはいけない事なんだろうなとは思う。
しかしどうしたらそんなに平然としていられるのだろうか?
自分は咲夜を失うのが怖い。怖くて堪らないのに。
「黄金魚、なかなか出ませんわね」
と、ミノリ。そんな彼女に、
「水に飛び込んで散らすと、別なのが集まってくるよ」
と久隆は助言する。
「あら、そうでしたの。早速やってみますわ」
彼女は嬉しそうに微笑んで、また画面に瞳を向けた。
「ところで、何かお悩みですの?」
彼女がおおよそ察しの良いタイプには見えなかったので、久隆は驚く。そこでスマホのメッセージの通知音が鳴り、兄からひと言”マンションへ戻る”とあった。
お目当てのものが見つかったのだろうか?
それとも諦めて帰るのだろうか?
兄の滞在時間を考えると、部屋を二度は探し直した程の時間がかかっている。しかも都筑が一緒だったことを考えれば、手分けしたに違いない。そう推理すると、見つからなかったと考えるのが妥当な線。久隆は既読のみで、またミノリの方に目を向けた。
「もしもさ、世界で一番大切な人を失わなくてはならないとしたら、ミノリお姉さんはどうする?」
「その方は生きていらして?」
「えっ?…うん」
「その方は幸せでして?」
「た、たぶん」
「ならば、それでいいですわ」
彼女は一旦こちらに視線を移し、微笑む。さすが令嬢というべきか、品のある笑みだ。
久隆が何と返したら良いのか困っていると、
「大切な人が幸せならそれで良いと思いませんこと?」
と問われる。しかし久隆は、すぐには答えられなかった。
「人が人に何かをしてあげるということは、自己満足でしかありませんのよ?ましてや相手をどうこうというのは、エゴでしかありませんの。ですから、わたくしは相手の方が幸せならそれで構いませんわ」
それは正論だった。痛いくらいに正しい。
「でも、聖はわたくしと、考えが違うと思いましてよ」
「え?」
「あら、ごめんなさい。てっきり聖の話かと」
やはり彼女はどこかズレていた。
『何、人の姉に愛想振りまいてるの』
「そんな事してないし」
『ふーん』
突然久隆に掛かってきた大里からの電話。ミノリは楽しそうに採掘をしていた、のん気なものである。
『でも、ここに証拠あるんだけど?』
と、大里。それはそうである、ミノリが送ったのだから。
「なんだよ、俺のせいなの?」
さすがに久隆も、ムッとした。すると、
『妬いてる』
という返事。何故、大里《このおとこ》はこんなにいつもストレートなのだろう、返答に困る。彼が自分を好きなのは知ってはいても、そう思ってしまう。
「どうしろと?」
と、問えば。
『何もできないくせに』
と言われてしまう。この間から突っかかってくる大里に、久隆はどうしていいのかわからない。
「何がして欲しいんだよ」
『久隆に触りたい』
と言う言葉に一瞬ドキッとするが、大里は変な意味でいっているわけではないのだ。
『ぎゅってしたい』
「じゃあ、うちくれば?」
と久隆はため息をつきながら答えて見たものの、姉のいるところへ大里が来る可能性は低い。
『今は行けない』
なんだよ、来いって言えばこないって言うし。
『今、彩都と実家にいるから』
「は?」
デートの最中に俺に電話してきたわけ?
しかも、実家って。
何考えてるんだか、わからないよ。
「黒川がさ、ヤキモチ妬くんじゃないの?俺に連絡なんてしてきたら」
『それは…』
幼馴染みでずっと一緒に居て、結ばれる未来なんて最初から無くて。
そこにダメ押ししたのは大里で、させたのは自分なのだ。どんなに何があっても、その気持ちには応えられない、今の関係を保つことしか出来ないのに。
『久隆、好きだよ』
「うん」
今にも泣き出しそうな震えた声で、気持ちを吐き出す彼に、久隆は何も返すことができない。
『俺、久隆と結ばれたかった』
「うん」
もし彼が、咲夜に再会する前に告白して来たなら、今が少しちがっていたのだろうか。
それとも、自分は咲夜を思い続け、その気持ちを退けたのだろうか?
久隆にはわからない。彼が自分を好きなことはなんとなく知っていたが、中学二年の時彼がセフレを作り始めた時”ああ、一生言う気はないんだな”と思った。つい最近まで言葉にしなかったから、どこかで安心していたのかもしれない。一度言葉にしてしまうと、湯船から溢れるお湯のように蛇口を閉めない限り溢れ続けていく、それが彼の抱える想いなのかも知れないと久隆は思った。
きっとこの先も。
俺はただ、その想いを聞くことしか出来ない。
それでも大里は、結果を求めているわけじゃない。
諦めさせることだけが幸せとは限らない、だから余計に…。
なにもしてやれない。
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久隆は回転椅子に腰掛け、楽しそうにゲームの中で釣りをするミノリを眺めていた。ミノリが兄を好きなことを知ったのは、だいぶ前のことだったと…いうより誰の目にも明らかだった。気付かないのは兄ただ一人。だから、兄が突然、彼女と恋人関係になったと知った時、久隆は凄く驚いた。マメに逢瀬を重ねていると思ったら、高校卒業と同時に別れたので、更に驚いたものだ。彼女は今でも兄のことが好きなんだろう、と感じるものの、彼女から負の感情は読み取れない。現にこうして、元恋人の弟と楽しそうに遊んでいる。
触れてはいけない事なんだろうなとは思う。
しかしどうしたらそんなに平然としていられるのだろうか?
自分は咲夜を失うのが怖い。怖くて堪らないのに。
「黄金魚、なかなか出ませんわね」
と、ミノリ。そんな彼女に、
「水に飛び込んで散らすと、別なのが集まってくるよ」
と久隆は助言する。
「あら、そうでしたの。早速やってみますわ」
彼女は嬉しそうに微笑んで、また画面に瞳を向けた。
「ところで、何かお悩みですの?」
彼女がおおよそ察しの良いタイプには見えなかったので、久隆は驚く。そこでスマホのメッセージの通知音が鳴り、兄からひと言”マンションへ戻る”とあった。
お目当てのものが見つかったのだろうか?
それとも諦めて帰るのだろうか?
兄の滞在時間を考えると、部屋を二度は探し直した程の時間がかかっている。しかも都筑が一緒だったことを考えれば、手分けしたに違いない。そう推理すると、見つからなかったと考えるのが妥当な線。久隆は既読のみで、またミノリの方に目を向けた。
「もしもさ、世界で一番大切な人を失わなくてはならないとしたら、ミノリお姉さんはどうする?」
「その方は生きていらして?」
「えっ?…うん」
「その方は幸せでして?」
「た、たぶん」
「ならば、それでいいですわ」
彼女は一旦こちらに視線を移し、微笑む。さすが令嬢というべきか、品のある笑みだ。
久隆が何と返したら良いのか困っていると、
「大切な人が幸せならそれで良いと思いませんこと?」
と問われる。しかし久隆は、すぐには答えられなかった。
「人が人に何かをしてあげるということは、自己満足でしかありませんのよ?ましてや相手をどうこうというのは、エゴでしかありませんの。ですから、わたくしは相手の方が幸せならそれで構いませんわ」
それは正論だった。痛いくらいに正しい。
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「え?」
「あら、ごめんなさい。てっきり聖の話かと」
やはり彼女はどこかズレていた。
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