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────5章【葵と大里】
□1「複雑な関係図」
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****♡Side・咲夜
翌日、葵が大里に会うというので、屋敷には久隆と二人きり。もちろん、大崎邸の従業員ことファミリーはいつも通り、個々に担当の仕事をしているわけだが。
「久隆、どうしたの?」
「んー?」
久隆は二人掛けのリクライニングチェアのところで、珍しくスマホの画面を眺めている。彼はいつでもデスクにスマホを置きっぱなし。そんな彼が画面を眺めているので、とても気になったのだ。
「うん。兄さんからメッセージが来ていて」
彼は、隣においでと、咲夜の手を引く。咲夜は嬉しくなって彼の隣に腰かけると、画面を覗き込んだ。
「上手くいったみたいだよ」
と、彼。
久隆の兄である圭一は、誰が見てもカッコいい。ただ、無口で少し変わっているが。八つの時に、咲夜の叔父である都筑に恋をした。その差八歳。当時、高校生の都筑にはまだまだ子供の相手。全く相手にされてはいなかったようだが、圭一は都筑を思い続けた。十年越しの恋がやっと実ったのだ。もっとも、再会したのは、圭一が十六の時。二年間の間にいろいろあったようではあるが。
「良かったね」
と、咲夜が微笑みかけると、
「うん」
と複雑な表情をする彼。
二人が幸せなことは良いことだが、自分たちの計画に大きな支障をきたしたのも事実。ちゃんと話し合って、当初の予定通り、結婚しようと約束はしたものの、彼の複雑な胸のうちは変わらないようだ。
「まだ、何か不安なの?」
と、咲夜。彼が不安なら安心させてあげたいと思っていた。
「不安は確かに完全に拭えたわけじゃないけれど、なんだか複雑だなって思って」
と、彼。咲夜はその意味が分からず、首を傾げた。
「兄さんが将来、部下になるだけでも複雑な心境なのに」
「あ、まあそうだね」
「都筑は義理の兄で、部下になるんだよ?」
そこで、咲夜は自分の将来について考える。自分はどんな立場になるのだろうか、と。
叔父は、義理の兄と婚姻するが、パートナーの部下になる。なんだか複雑な立場。しかも、順当に行けば、自分は大崎グループの会長となる。つまり、トップだ。つまり立場上、久隆さえ部下となるわけだ。そう考え彼同様、複雑な表情をした。
「どうしたの?咲夜」
「久隆は、立場が変わっても今まで通りでいてくれる?」
それは咲夜にとってとても重要なことである。
「おいで」
腕を引かれ、彼の上にまたがる、咲夜。ぎゅっと抱きしめられ、
「ずっとこのままだよ」
と、言われる。咲夜は、甘えるように彼の首に腕を回した。
「咲夜はずっと大事な人。俺のお姫さま。俺が守ってあげるから」
「久隆」
「ずっと俺に甘えていればいい」
彼の良い匂いが鼻先をかすめ、咲夜はそっと目を閉じたのだった。
翌日、葵が大里に会うというので、屋敷には久隆と二人きり。もちろん、大崎邸の従業員ことファミリーはいつも通り、個々に担当の仕事をしているわけだが。
「久隆、どうしたの?」
「んー?」
久隆は二人掛けのリクライニングチェアのところで、珍しくスマホの画面を眺めている。彼はいつでもデスクにスマホを置きっぱなし。そんな彼が画面を眺めているので、とても気になったのだ。
「うん。兄さんからメッセージが来ていて」
彼は、隣においでと、咲夜の手を引く。咲夜は嬉しくなって彼の隣に腰かけると、画面を覗き込んだ。
「上手くいったみたいだよ」
と、彼。
久隆の兄である圭一は、誰が見てもカッコいい。ただ、無口で少し変わっているが。八つの時に、咲夜の叔父である都筑に恋をした。その差八歳。当時、高校生の都筑にはまだまだ子供の相手。全く相手にされてはいなかったようだが、圭一は都筑を思い続けた。十年越しの恋がやっと実ったのだ。もっとも、再会したのは、圭一が十六の時。二年間の間にいろいろあったようではあるが。
「良かったね」
と、咲夜が微笑みかけると、
「うん」
と複雑な表情をする彼。
二人が幸せなことは良いことだが、自分たちの計画に大きな支障をきたしたのも事実。ちゃんと話し合って、当初の予定通り、結婚しようと約束はしたものの、彼の複雑な胸のうちは変わらないようだ。
「まだ、何か不安なの?」
と、咲夜。彼が不安なら安心させてあげたいと思っていた。
「不安は確かに完全に拭えたわけじゃないけれど、なんだか複雑だなって思って」
と、彼。咲夜はその意味が分からず、首を傾げた。
「兄さんが将来、部下になるだけでも複雑な心境なのに」
「あ、まあそうだね」
「都筑は義理の兄で、部下になるんだよ?」
そこで、咲夜は自分の将来について考える。自分はどんな立場になるのだろうか、と。
叔父は、義理の兄と婚姻するが、パートナーの部下になる。なんだか複雑な立場。しかも、順当に行けば、自分は大崎グループの会長となる。つまり、トップだ。つまり立場上、久隆さえ部下となるわけだ。そう考え彼同様、複雑な表情をした。
「どうしたの?咲夜」
「久隆は、立場が変わっても今まで通りでいてくれる?」
それは咲夜にとってとても重要なことである。
「おいで」
腕を引かれ、彼の上にまたがる、咲夜。ぎゅっと抱きしめられ、
「ずっとこのままだよ」
と、言われる。咲夜は、甘えるように彼の首に腕を回した。
「咲夜はずっと大事な人。俺のお姫さま。俺が守ってあげるから」
「久隆」
「ずっと俺に甘えていればいい」
彼の良い匂いが鼻先をかすめ、咲夜はそっと目を閉じたのだった。
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