R18【同性恋愛】『戻れない僕らの日常』【絆・対・相編】正規ルート編

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────5章【葵と大里】

□2「秋深まって」

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****♡Side・久隆

久隆は、マグカップを片手に、大崎邸三階のバルコニーから裏庭のテニスコートを眺めていた。休憩中の大崎邸従業員こと、ファミリーがテニスをしていた。軽快なテニスボールを打ち返す音が響き渡っている。裏口からテニスコートまでの間には短い林があり、秋らしく紅葉していてとても綺麗だ。
「久隆」
上着を取りに行っていた咲夜が戻って来るなり、久隆に抱きつく。久隆は慌てて、カップを持っている方の手を上げた。
「危ないよ、咲夜」
「うう…ごめん」
襟付きのシャツにカーディガン姿の彼は可愛らしい。秋らしい装いに、笑みが零れる。
「今度ブドウ狩りにでも行こうか」
彼の淡い紫色のカーディガンを見つめて。
「うん、良いね」
彼が嬉しそうに、ニコッと笑う。

白い金属製の、ガーデン用のテーブルにカップを置くと、椅子を引く。腰を下ろすとひんやりとした。
「咲夜、おいで」
「うん」
膝の上に座らせると、彼の腰に腕を回す。寒い時期は良いなと思う。こうして、くっついていられるから。もうすぐ給仕係がここへケーキを運んでくれると言っていた。大崎邸専属料理長の自家製チーズケーキだ。いつもなら、従業員食堂へ出向くのだが、今日は天気も良く、ポカポカとした陽気。たまには三階の、景色の見渡せる場所でのお茶会も悪くない。
「葵ちゃん居ないと、寂しい?」
大人しい咲夜に問いかける。
「うん、少し」

片倉 葵は不思議な子だ。大里をはじめ、久隆も咲夜もそんなにおしゃべりな方ではない。しかし、葵がいるだけで空気が変わり、途端にみんな饒舌となる。生粋のムードメーカー。大崎邸従業員にも好かれて可愛がられている。
「ティータイムが終わったら、テニスでもする?」
と咲夜に問いかけると、彼は久隆に抱きついたまま、
「久隆そんなうまくない」
と言われてしまう。いつもは咲夜、久隆、葵、大里と四人で、ペアを組んで遊んでいる
下手な久隆の分は、誰かが補ってくれるのだが久隆以外の三人は、ホントに運動神経が良い。
「そんなこと言うなよ」
と、苦笑いをする久隆。すると彼は、
「今日は甘えていたい」
と本音を漏らす。

「久隆さま」
と、そこへ給仕係が銀のお盆に二つの皿を乗せやって来た。
「咲夜、ケーキが来たよ」
と、告げれば、彼は身を起こす。葵が居たら大喜びしそうだな、と思いながらテーブルに並べられたケーキを見つめる。
「美味しそうだね」
と、彼。日に日に深まる秋。もう、随分彼らと一緒に居るような気がするが、まだ半年もたっていないことに驚いたのだった。
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