[Untitled:爆笑BL・情熱が消えた日]

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情熱が消えた日

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「い…る…到流…」
祖母の声が聞こえる。俺はポケットに手を突っ込み、海を眺めていた。某、港町。漁業の盛んな漁師の町だ。昔はみんな副業としてレビューを書いていたものだ。なかなかいい金になるらしい。今は、レビューを書くこと自体が禁止されている。ポケット中には手紙が一通。犯罪を犯して捕まった親父から貰ったものだ。

**


到流へ

俺だ、お前の親父だ。
(そんなことは分かってる。何故名乗った)
何故、一度も面会に来てくれないんだ。俺が犯した罪は、そんなに重いものなのか?
人を殺したわけでも、人から何かを奪ったわけでも、人を傷つけたわけでもない。
俺はただ…。

**

その後は涙で滲み、消えてしまっていた。

───親父よ、何故水性ペンで書いたんだ。普通は鉛筆か油性だろ。

心の中で悪態をつきながら、親父のことを思う。犯した罪の重さなんてものは、関係ない。ようは、犯罪者になったことが問題なんだ。そのせいで母は蒸発し、俺は祖母に預けられた。
「到流!」
いつの間にか近くに来ていた祖母に、新聞紙を丸めたもので引っぱたかれる。すっかり忘れていた。その存在に。
「ごめん、ばーちゃん」
俺はため息をつくと、花柄の封筒をポケットにしまい、祖母の後に続いた。

───親父、なんで花柄の便せんセットにしたんだろう。

その理由を読む前に涙で滲んだので、未だに謎だ。祖母について家へと引き返すと、途中で中瀬電機の前を通った。
「到流くん」
爽やかなイケメンだ。中瀬 文雄、30歳。俺の5つ上だ。接客をするために産まれて来たのではないかと思えるくらい、自動笑顔。ムカつく。でも、俺は知っている。アイツは親父と話す時だけ、ぎこちないことを。アイツも親父となにかあるのだろうか。しかし、どうでもいいことだ。祖母と家の前で別れる。バイトに行くためだ。
「ばーちゃん行って来る」
「気を付けてな」

祖母は俺が、海に飛び込むのではないかと心配し、いつも海に向かえに来る。しかし、飛び込んだりなどしない。ただ、花柄の便せんを家で拡げる勇気がないだけだ。

───親父、頼むから便せんは普通のにしてくれ。

そう言えば、名前を呼ばれた気がしたが、無視をしてしまった。まあいい、そのうち会うだろう。気にしていると、文字数を食うだけだな。
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