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━2章【不器用な二人】━
3.5『土産』
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****♡side・鶴城
それは突然やってくる。
「よう鶴城、美崎」
木曜の夕時であった。学校帰りの二人は駅前のスーパー目指し校門をでたところで声をかけられる。生徒会に所属の鶴城、風紀委員に所属の美崎は一般生徒よりも校門を出るのが遅い。学園の見回りという仕事があるためである。校門で待っていたのは二人にとっての先輩で……。
高級車に寄りかかり、モデル体系で黒のスーツに身を包んだイケメン。彼はまるで葬儀屋の様のカッコをしているが、有名な大崎グループの次期副社長、【大崎圭一】である。彼は現在大学一年であり社長秘書を兼ねていた。車の中から漏れ聴こえる洋楽。中で恋人が圭一の用が済むのを待っているようだ。
「こんばんは」
先に彼へ近づいたのは、美崎の方である。
「これ、土産」
圭一に土産の袋を渡され美崎はそれを覗き込んでいた。鶴城は彼の背後から。中身はどうやら黒猫のお洒落なペアのどんぶりセットらしい。美崎の好みをよく知っている圭一に少し嫉妬しそうになり、焦る。
「鶴城にはこれやるよ」
それは有難いが土産とは言い難いもので。
「料理で美崎をその気にさせようとしてるんだって?」
「!」
反応したのは美崎のほうだった。
──何で言うかな。
俺の計画が台無しじゃないかよ!
まさか、この間の仕返しか?
ため息をつきながら袋の中身を見つめ、圭一に視線を移す。
「腕、磨けよ」
「好評ですよ? なあ、優也」
美崎は困った顔をして二人を見比べていたが、鶴城の隣に来てそっと腕に手をかけた。
「まさかあのこと恨んでるわけじゃありませんよね?」
ホテルでのイチャイチャ写メを送った時のことを問うと、
「さあな」
と圭一は曖昧な返事をして車のほうをチラリと振り返る。
それは早く恋人とイチャイチャしに家に帰りたいということだろうか?
「どこ行って来たんです?」
「これやるよ」
答えではなくパンフレットを渡された。相変わらず口数の少ない人だなとぼんやり思っていると、
「これから親父のとこに行かなければならないから、行くわ」
と小さく笑った。
圭一が笑顔を見せることがあまりにも珍しいことだったので二人は顔を見合わせる。
「詳しいことは、また今度な」
またなんてあるのか? なんて思いながら車に乗り込む圭一を見送ったのだが……。
**・**
「クヌギ旅館だってよ」
パンフレットを捲りながら、美崎にそう話を振る。先ほどの話に触れられないようにと願いながら。
「あれ? これ」
パンフレットの間に挟まれている封筒に気づき、彼がそれを摘み上げ中身を出そうと封筒を開ける指先を見つめていた。
「俺たち宛てか?」
「そうらしい」
鶴城ご一行様と書いてある和紙の後ろにあったのは……。
「え、これ見て!」
分かりやすいほどはしゃぐ美崎に鶴城は微笑む。その手には二泊三日の宿泊券。高級旅館にご招待というわけだ。ずいぶん粋なことをするなと思っていた。
「朝昼、お食事つきだって」
──可愛い!
こんなに素直にはしゃぐところ初めて見た。
大崎先輩には見せていたのかと思うと妬けるが。
「へえ、部屋に露天風呂ついてるじゃん」
「え!」
「さすがに一緒に入るよな?」
いつも断られるが、駄目もとで聞いてみる。断られたからといってどうということはないが。
「いいけど……」
「駄目なら……。は? 今なんて?」
駄目ならいいよと言おうとして聞き返した。今、OKって言わなかったか? 聞き間違いだよな? と思いながら。
「いいって言った」
「ほ、ほんとに?」
──やば、楽しみになってきた
今週か? 善は急げって言うしな
金曜の夜からでいいかな?
それより、まず買い物して帰らなきゃな
いつの間にか二人はいつものスーパーの前まで来ていた。
「今週末行こうか?」
そう美崎に告げれば満面の笑みを浮かべる。よっぽど嬉しいらしい。
──クソ可愛い!
****
翌朝のこと。
「早起きだな」
鶴城が起きるとすでに美崎はニコニコしながら旅行の準備をしていた。
「必要なものだけにしとけよ」
「え?」
猫のぬいぐるみまで詰めようとしていた美崎の手元からそれを取り上げるとソファーに置く。美崎はきょとんとこちらを見上げていた。
「家出でもするつもりか?」
「あ、いや」
くくくと肩で笑うと、彼は頬を染める。嬉しすぎててんぱっているのだろうかと思いながら鶴城は頬杖をつき、準備を続けている彼を眺めていた。
──最初で最後というわけでもあるまいし。
それにしても可愛い。
「なあ、旅行ならこの先いくらでも連れてってやるからさ」
「!」
「まあ、こんな高級旅館は無理かもしれないけれど」
テーブルの上に置かれたチケットを眺めながら。
「ほんとに?」
「ん、バイトするしさ」
ニコッと微笑むと美崎はじっとこちらを見つめる。彼があまりにも可愛らしくて、抱き寄せて口付けた。
「んッ」
「旅行いっぱい連れてくよ」
「ちょっ! やめっ」
キスでうっとりしていた彼をソファーの上に抱き上げると覆いかぶさる。
「慎ッ……」
「しようよ、優也」
「駄目だって! 旅行の準備ッ」
鶴城は彼を押さえつけ首筋に顔をうずめるとちゅうッと吸い上げた。
「んんッ」
「好きだよ」
「ああッ……ん……ッ」
シャツをたくし上げ肌に手を滑らせてゆく。
「ほら、その気になってきた」
「もっ! やめろってこの猿!」
「優也が魅力的なのがいけないんだよ」
「意味不明だって!……やあんッ」
親指の腹が彼の胸の飾りに触れると甘い声をあげた。その声に導かれるように鶴城は彼に夢中になっていったのだった。
それは突然やってくる。
「よう鶴城、美崎」
木曜の夕時であった。学校帰りの二人は駅前のスーパー目指し校門をでたところで声をかけられる。生徒会に所属の鶴城、風紀委員に所属の美崎は一般生徒よりも校門を出るのが遅い。学園の見回りという仕事があるためである。校門で待っていたのは二人にとっての先輩で……。
高級車に寄りかかり、モデル体系で黒のスーツに身を包んだイケメン。彼はまるで葬儀屋の様のカッコをしているが、有名な大崎グループの次期副社長、【大崎圭一】である。彼は現在大学一年であり社長秘書を兼ねていた。車の中から漏れ聴こえる洋楽。中で恋人が圭一の用が済むのを待っているようだ。
「こんばんは」
先に彼へ近づいたのは、美崎の方である。
「これ、土産」
圭一に土産の袋を渡され美崎はそれを覗き込んでいた。鶴城は彼の背後から。中身はどうやら黒猫のお洒落なペアのどんぶりセットらしい。美崎の好みをよく知っている圭一に少し嫉妬しそうになり、焦る。
「鶴城にはこれやるよ」
それは有難いが土産とは言い難いもので。
「料理で美崎をその気にさせようとしてるんだって?」
「!」
反応したのは美崎のほうだった。
──何で言うかな。
俺の計画が台無しじゃないかよ!
まさか、この間の仕返しか?
ため息をつきながら袋の中身を見つめ、圭一に視線を移す。
「腕、磨けよ」
「好評ですよ? なあ、優也」
美崎は困った顔をして二人を見比べていたが、鶴城の隣に来てそっと腕に手をかけた。
「まさかあのこと恨んでるわけじゃありませんよね?」
ホテルでのイチャイチャ写メを送った時のことを問うと、
「さあな」
と圭一は曖昧な返事をして車のほうをチラリと振り返る。
それは早く恋人とイチャイチャしに家に帰りたいということだろうか?
「どこ行って来たんです?」
「これやるよ」
答えではなくパンフレットを渡された。相変わらず口数の少ない人だなとぼんやり思っていると、
「これから親父のとこに行かなければならないから、行くわ」
と小さく笑った。
圭一が笑顔を見せることがあまりにも珍しいことだったので二人は顔を見合わせる。
「詳しいことは、また今度な」
またなんてあるのか? なんて思いながら車に乗り込む圭一を見送ったのだが……。
**・**
「クヌギ旅館だってよ」
パンフレットを捲りながら、美崎にそう話を振る。先ほどの話に触れられないようにと願いながら。
「あれ? これ」
パンフレットの間に挟まれている封筒に気づき、彼がそれを摘み上げ中身を出そうと封筒を開ける指先を見つめていた。
「俺たち宛てか?」
「そうらしい」
鶴城ご一行様と書いてある和紙の後ろにあったのは……。
「え、これ見て!」
分かりやすいほどはしゃぐ美崎に鶴城は微笑む。その手には二泊三日の宿泊券。高級旅館にご招待というわけだ。ずいぶん粋なことをするなと思っていた。
「朝昼、お食事つきだって」
──可愛い!
こんなに素直にはしゃぐところ初めて見た。
大崎先輩には見せていたのかと思うと妬けるが。
「へえ、部屋に露天風呂ついてるじゃん」
「え!」
「さすがに一緒に入るよな?」
いつも断られるが、駄目もとで聞いてみる。断られたからといってどうということはないが。
「いいけど……」
「駄目なら……。は? 今なんて?」
駄目ならいいよと言おうとして聞き返した。今、OKって言わなかったか? 聞き間違いだよな? と思いながら。
「いいって言った」
「ほ、ほんとに?」
──やば、楽しみになってきた
今週か? 善は急げって言うしな
金曜の夜からでいいかな?
それより、まず買い物して帰らなきゃな
いつの間にか二人はいつものスーパーの前まで来ていた。
「今週末行こうか?」
そう美崎に告げれば満面の笑みを浮かべる。よっぽど嬉しいらしい。
──クソ可愛い!
****
翌朝のこと。
「早起きだな」
鶴城が起きるとすでに美崎はニコニコしながら旅行の準備をしていた。
「必要なものだけにしとけよ」
「え?」
猫のぬいぐるみまで詰めようとしていた美崎の手元からそれを取り上げるとソファーに置く。美崎はきょとんとこちらを見上げていた。
「家出でもするつもりか?」
「あ、いや」
くくくと肩で笑うと、彼は頬を染める。嬉しすぎててんぱっているのだろうかと思いながら鶴城は頬杖をつき、準備を続けている彼を眺めていた。
──最初で最後というわけでもあるまいし。
それにしても可愛い。
「なあ、旅行ならこの先いくらでも連れてってやるからさ」
「!」
「まあ、こんな高級旅館は無理かもしれないけれど」
テーブルの上に置かれたチケットを眺めながら。
「ほんとに?」
「ん、バイトするしさ」
ニコッと微笑むと美崎はじっとこちらを見つめる。彼があまりにも可愛らしくて、抱き寄せて口付けた。
「んッ」
「旅行いっぱい連れてくよ」
「ちょっ! やめっ」
キスでうっとりしていた彼をソファーの上に抱き上げると覆いかぶさる。
「慎ッ……」
「しようよ、優也」
「駄目だって! 旅行の準備ッ」
鶴城は彼を押さえつけ首筋に顔をうずめるとちゅうッと吸い上げた。
「んんッ」
「好きだよ」
「ああッ……ん……ッ」
シャツをたくし上げ肌に手を滑らせてゆく。
「ほら、その気になってきた」
「もっ! やめろってこの猿!」
「優也が魅力的なのがいけないんだよ」
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