5 / 29
1 君に触れて、始まる全て
4・互いの趣味
しおりを挟む
蘇る、あの日の記憶。
時間がかかりそうだったため、二人は近くの喫茶店に向かって歩き始めていた。
横断歩道を渡ろうと信号機のところで立ち止まると、
『指摘されて、いろんな部分を直されたの。まるで自分の小説じゃないみたい』
と彼女は、苦笑いを浮かべながら。
『直された?』
俯き呟くように言った彼女の頭を、和宏は見つめた。
確かに分かり辛い部分はあるものの、許容範囲だ。プロではないのだから。
しかしザッと目を通したがそんな大々的に直すほど、文章が破壊的だとは思えなかった。
──── あらすじは分かり辛いが。
ざっとで内容を把握できるのだから、そこまで下手とは思えない。
そもそも感想企画で指摘をする状況というのは、どういったことなんだ?
感想ではなく、評価という事なんだろうか。
仮にそうだったとしても指摘は分かるが、直されるっていうのはどういうことなんだろうか。
和宏は難しい顔をして、視線を正面に移す。
信号が変わり、彼女の肩を叩こうとして手を引っ込める。
許可なく触れるのはセクハラだ。
しかしそれ以前に和宏は自分の行動に驚いていた。何故なら自分から他人に触れようとしたのが、初めてだったから。
「槙田」
和宏は席から立ち上がると、荷物を持ち彼女へ声をかけていた。
自分は彼女のことが心配なのだろうか。
いや、”あの後どうなったのかが気になるだけだ”と自分に言い聞かせて、入口に向かう。
「えっと」
和宏に声をかけられて、困惑した表情を見せる穂乃果《ほのか》。
「学食行くぞ」
強引に誘う和宏に彼女は小さく頷くと、胸に荷物を抱えて後に続いたのだった。
学食は空いていた。
ガラス張りのカフェテラス。それがこの大学の学食。
飲み物を二つ購入すると窓際のカウンター席に向かおうとして、一旦歩を止める。
穂乃果はワンピース。ここは二階の高さ。
和宏はカウンター席のテーブルから下がスモークガラスになっているのをさりげなく確認してから、再び席に向かう。
「ありがとう」
和宏は穂乃果が腰かけるのを確認してから、彼女の目の前に飲み物を置くと、自身も腰かける。少し距離が近いなと思いつつ。
「この曲、好き」
「そっか」
学食にはクラシックが流れていた。
片肘をつき、頬杖をつきつつ彼女のほうに視線を向けると、とても驚いた顔をされる。
「なに」
「ううん。雛本くんはどんな音楽聴くの?」
そう質問され、和宏は彼女の作品の続きを見ようとしてスマホを操作していた指を止めた。
恐らく自分の好きな曲は聴きそうではないなと、ぼんやり思いながら。
「クラシックも好きだよ」
当然ながら不服そうな彼女。
和宏は、
「今度な」
と言うと、再びスマホに視線を落としたのだった。
時間がかかりそうだったため、二人は近くの喫茶店に向かって歩き始めていた。
横断歩道を渡ろうと信号機のところで立ち止まると、
『指摘されて、いろんな部分を直されたの。まるで自分の小説じゃないみたい』
と彼女は、苦笑いを浮かべながら。
『直された?』
俯き呟くように言った彼女の頭を、和宏は見つめた。
確かに分かり辛い部分はあるものの、許容範囲だ。プロではないのだから。
しかしザッと目を通したがそんな大々的に直すほど、文章が破壊的だとは思えなかった。
──── あらすじは分かり辛いが。
ざっとで内容を把握できるのだから、そこまで下手とは思えない。
そもそも感想企画で指摘をする状況というのは、どういったことなんだ?
感想ではなく、評価という事なんだろうか。
仮にそうだったとしても指摘は分かるが、直されるっていうのはどういうことなんだろうか。
和宏は難しい顔をして、視線を正面に移す。
信号が変わり、彼女の肩を叩こうとして手を引っ込める。
許可なく触れるのはセクハラだ。
しかしそれ以前に和宏は自分の行動に驚いていた。何故なら自分から他人に触れようとしたのが、初めてだったから。
「槙田」
和宏は席から立ち上がると、荷物を持ち彼女へ声をかけていた。
自分は彼女のことが心配なのだろうか。
いや、”あの後どうなったのかが気になるだけだ”と自分に言い聞かせて、入口に向かう。
「えっと」
和宏に声をかけられて、困惑した表情を見せる穂乃果《ほのか》。
「学食行くぞ」
強引に誘う和宏に彼女は小さく頷くと、胸に荷物を抱えて後に続いたのだった。
学食は空いていた。
ガラス張りのカフェテラス。それがこの大学の学食。
飲み物を二つ購入すると窓際のカウンター席に向かおうとして、一旦歩を止める。
穂乃果はワンピース。ここは二階の高さ。
和宏はカウンター席のテーブルから下がスモークガラスになっているのをさりげなく確認してから、再び席に向かう。
「ありがとう」
和宏は穂乃果が腰かけるのを確認してから、彼女の目の前に飲み物を置くと、自身も腰かける。少し距離が近いなと思いつつ。
「この曲、好き」
「そっか」
学食にはクラシックが流れていた。
片肘をつき、頬杖をつきつつ彼女のほうに視線を向けると、とても驚いた顔をされる。
「なに」
「ううん。雛本くんはどんな音楽聴くの?」
そう質問され、和宏は彼女の作品の続きを見ようとしてスマホを操作していた指を止めた。
恐らく自分の好きな曲は聴きそうではないなと、ぼんやり思いながら。
「クラシックも好きだよ」
当然ながら不服そうな彼女。
和宏は、
「今度な」
と言うと、再びスマホに視線を落としたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる