R18【異性恋愛】Temperature of love~切なさと情熱と君~

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4 フェミニンな彼女

1・いつの間にか流されて

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 藤宮咲ふじみやさきと別れ靴箱へ向かっていると、槙田穂乃果まきたほのかに出くわす。
 幼馴染みの大林沙希おおはやしさきから連絡を受けていた和宏《かずひろ》は軽く挨拶だけで通り過ぎようとしたのだが、そうはいかなかったようだ。
「この間は、逃げたでしょう?」
と恨みがましい視線。

 槙田はやはり藤宮とも大林とも違うタイプだと改めて思う。
 ”女の子らしい・女性らしい”などという言葉を使うと、偏見や差別になってしまうのかもしれないが、藤宮はガーリー系で可愛らしい服装を好み、見た目も可愛らしい。槙田はフェミニン系ファッションを好むようで、ワンピースかフレアスカートが定番だ。
 今日はベージュの前脇に大きくリボンを結ぶタイプのロングフレアスカートに七分袖のスタンドネックブラウスを身に着けている。袖に膨らみを持たせた女性らしいファッションである。

「逃げてなんてないよ」
 彼女に真っ直ぐ見つめられ、和宏はたじろいだ。
「だったら、今度ご馳走させてくれる?」
と槙田。
「別に大したことしたわけじゃないから、気にしなくていい」
 和宏が両手を前に翳《かざ》し、NOのジェスチャーを取るが彼女は少し不満そうだ。
「借りは作りたくないの」
「借りってそんな……」

 槙田はとても真面目な子なのだと思った。
「雛本君にとっては何でもないことでも、わたしにとっては違うの。恩を感じたら返しておきたいし、そうじゃないと気軽に声もかけられないでしょう?」
 彼女の言っていることは正しい。
 一方的に何かしてもらう関係は続かない。
 この時、和宏は槙田が自分を友人だと思ってくれているのだろうと思った。少し強引にも感じる部分もあるが、常識的で良識的な女性なのだろうと感じたのである。

「まあ、それは一理あるな」
 ただ、和宏は彼女にはあまり近づくべきではいとも思っていた。頭のどこかが”危険”だとシグナルを発しているのだ。
 槙田は今まで出会ったことのないタイプの女の子。苦手だと感じるのは、意識しているに他ならない。
「じゃあ、これ。時間のある時でいいから連絡ちょうだい?」
 槙田から渡されたのは、名刺だ。
 お洒落なカードに名前とメッセージアプリのIDが印字されている。

「名刺なんて持っているんだ?」
と和宏。
 美しい花のデザインが印象的だ。
「就活のことも考えて」
と槙田は微笑む。
「それじゃあ、連絡待ってるね」
 そういうと槙田は踵を返した。

──あ、やられた……。

 そこで和宏は上手く乗せられたのだと気づく。
 槙田のことは正直まだ分からないことだらけだ。
 自分が知っていることと言えば、好むファッションと律儀な性格。そして作品否定されて傷ついていたことくらい。

──美人……ではあるよな。

 女性は苦手なんだけれどなと心の中でため息をつきつつ、再び靴箱へ向かう。大林は特別だ。幼い頃から知っているからか、気兼ねが要らない仲。
 とは言え、意識もしてはいる。

「沙希……」
 靴箱に辿り着き、大林に声をかけようとしたところで、彼女のイラつくような声が聞こえてきて和宏は押し黙った。
「いい加減にしてくださらない? わたくしは用があると申しておりますの」
 靴箱の陰に隠れそっと覗き込むと、案の定”嫌味な坊ちゃん”と大林が対峙している。
「シツコイ殿方は嫌われる……いえ、嫌われてましてよ?」
 想定ではなく現在進行形に言い直した大林に、吹きそうになる和宏。
「お引き取りくださいませ」
 大林の毅然とした態度にも相手は食い下がる腹づもりのようだ。
 どうしたものかと思っていると、
「和宏」
と突然服の裾を引っ張られた。

「何故、隠れていらっしゃるの? この男の前に出るのがそんなにお嫌?」
 誰でも嫌だろうと思いながらも、
「いや、機会を伺っていて」
と苦し紛れに言い訳をする。
「あなた。こんなナルシストに引けを取るとでも思っていらっしゃるの?」
 ”嫌味な坊ちゃん”はヤレヤレというように両手を広げ肩を竦めている。

──誰のせいだよ。
 殴ったろか?
 
 和宏は心の中で拳を握り締めたのだった。
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