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『二人を繋ぐ宝物の日々』
7・過去と現在と
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****♡Side・奏
学生時代の自分は、本当に幸せだったと思う。将来、真咲を失ってしまうなんて知らなかったから。生きていれば、逢うことも出来る。しかし、自分は、永遠に彼を喪うのだ。
何度も何度も、彼の後を追いたいと願った。
しかし、その頃の自分には八歳と五歳の子供がいて、その二年前に妻を病気で失ってる。そんな境遇もあり、幼い子供たちを置いて現実から逃げることが、出来なかった。毎日酒に溺れ、上の子に怒られ、真咲の弟から心配される。ダメな人間になってしまった。
上の子はそんな奏を見兼ね、本来ならば大崎グループの”社長”を継ぐはずであったが、辞退を申し出る。彼が中等部に入ってすぐのことだ。自分が副社長となり、弟を社長に就任させ支えると。だから、父さんは弟が二十歳になったら、好きにするといいと言った。たった十二の子供がだ。現在、上の子、圭一は大学一年。誕生日が来れば十九になる。自分よりもしっかりし、秘書として自分を支えてくれていた。圭一は二十歳となると同時に、副社長に就任する。自分が頼りないせいで、息子の人生を奪ってしまった。なんてダメな人間なのだろう。あれからもう、十年も経つのに悲しみは癒えない。毎晩、真咲を思っては酒に溺れる日々。ただただ、幻影を追いかけ涙する。
───早く、傍に行きたいよ。真咲。
**
「奏」
「うん?」
大崎邸の前に着くと、
「俺、夕飯刺身が食べたいな」
と真咲におねだりされた。大崎家はセレブだ。父が少し変わった人ではあるが。大抵のことは、叶う。
「わかった、母さんに言っとくね」
奏は真咲と連れ立って門から玄関へ向かう。将来奏が建てる屋敷は洋館だが、実家は純和風。中庭を囲むように板張りの廊下が口の字にあり、しょっちゅうそこで、妹の夏海と母が追いかけっこをしている。大抵は、スリッパを履かなくて、夏海が怒られているのだが。
「ただいま」
奏の部屋は正面玄関から見て右側(東)にある。手前の直線にあるのは水回り。左側には住み込みの従業員の部屋と母の部屋。正面より奥には父の部屋と客間。夏海の部屋は奏の部屋の隣だ。
部屋につくと内線をかける。いつもなら、玄関の近くで会うはずの母は見当たらない。
「あ、母さん?夕飯刺身がいいんだけど。うん。真咲もいる。わかった」
母は直ぐに電話口に出た。どうやら父の部屋にいたらしい。珍しいなと思いながら、真咲の方を向くと、
「奏。これ飲んで良い?」
と部屋の奥の簡易キッチンにある冷蔵庫を覗き込んでいた。手にしているのはお茶のようだ。どうやらお手伝いさんが作って、冷やしておいてくれたらしい。
「うん、好きなの飲みなよ」
奏は自分たちの会話を、まるで新婚みたいだな、と思い幸せに浸っていたのであった。
学生時代の自分は、本当に幸せだったと思う。将来、真咲を失ってしまうなんて知らなかったから。生きていれば、逢うことも出来る。しかし、自分は、永遠に彼を喪うのだ。
何度も何度も、彼の後を追いたいと願った。
しかし、その頃の自分には八歳と五歳の子供がいて、その二年前に妻を病気で失ってる。そんな境遇もあり、幼い子供たちを置いて現実から逃げることが、出来なかった。毎日酒に溺れ、上の子に怒られ、真咲の弟から心配される。ダメな人間になってしまった。
上の子はそんな奏を見兼ね、本来ならば大崎グループの”社長”を継ぐはずであったが、辞退を申し出る。彼が中等部に入ってすぐのことだ。自分が副社長となり、弟を社長に就任させ支えると。だから、父さんは弟が二十歳になったら、好きにするといいと言った。たった十二の子供がだ。現在、上の子、圭一は大学一年。誕生日が来れば十九になる。自分よりもしっかりし、秘書として自分を支えてくれていた。圭一は二十歳となると同時に、副社長に就任する。自分が頼りないせいで、息子の人生を奪ってしまった。なんてダメな人間なのだろう。あれからもう、十年も経つのに悲しみは癒えない。毎晩、真咲を思っては酒に溺れる日々。ただただ、幻影を追いかけ涙する。
───早く、傍に行きたいよ。真咲。
**
「奏」
「うん?」
大崎邸の前に着くと、
「俺、夕飯刺身が食べたいな」
と真咲におねだりされた。大崎家はセレブだ。父が少し変わった人ではあるが。大抵のことは、叶う。
「わかった、母さんに言っとくね」
奏は真咲と連れ立って門から玄関へ向かう。将来奏が建てる屋敷は洋館だが、実家は純和風。中庭を囲むように板張りの廊下が口の字にあり、しょっちゅうそこで、妹の夏海と母が追いかけっこをしている。大抵は、スリッパを履かなくて、夏海が怒られているのだが。
「ただいま」
奏の部屋は正面玄関から見て右側(東)にある。手前の直線にあるのは水回り。左側には住み込みの従業員の部屋と母の部屋。正面より奥には父の部屋と客間。夏海の部屋は奏の部屋の隣だ。
部屋につくと内線をかける。いつもなら、玄関の近くで会うはずの母は見当たらない。
「あ、母さん?夕飯刺身がいいんだけど。うん。真咲もいる。わかった」
母は直ぐに電話口に出た。どうやら父の部屋にいたらしい。珍しいなと思いながら、真咲の方を向くと、
「奏。これ飲んで良い?」
と部屋の奥の簡易キッチンにある冷蔵庫を覗き込んでいた。手にしているのはお茶のようだ。どうやらお手伝いさんが作って、冷やしておいてくれたらしい。
「うん、好きなの飲みなよ」
奏は自分たちの会話を、まるで新婚みたいだな、と思い幸せに浸っていたのであった。
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