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1 想いの行方
1 おかしな距離感
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****♡side・大里聖
「んーッ……あれ? 大里」
目を開けきょとんと聖を見上げる久隆が可愛くて、ちゅっと髪に口付けた。
「パパみたい」
その仕草に彼は呆れ声で。
「似たようなもんだろ」
久隆の言葉にいちいち傷ついて居たらやっていられない。髪をそっと撫で微笑むと彼はほんのり頬を赤らめた。可愛らしい。
「大里、なにかして遊ぼうよ」
「ゲーム?」
聖はテレビゲームなどの操作系ゲームが苦手であった。ビリヤードやダーツなどは得意だが。長姉はアクションゲームが得意、次姉はゲームに関しては破壊的センスではあったが、想い人圭一のためなら何でもこなすという超人的根性の持ち主。姉弟の中で唯一この手のことが苦手な聖。彼をがっかりさせることは不本意ではあるが仕方ない。
「地下に多目的ホールがあるでしょ?」
と、久隆。
「ん」
大崎邸には二十名ほどの従業員が住み込みで働いている。来賓も多い。そのため大崎邸の地下には防音が施された、数個の多目的ホールがある。
「その中にね、カラオケ設備入れてもらったんだ」
「へえ!」
聖は歌が得意だ。彼は破壊的音痴であるが。
「なにか歌ってよ」
「おう、いいよ」
彼は聖の膝から降りると身震いする。
寒いのかと思い傍らにあった彼の上着を肩にかけてやると、
「やだね、モテ男はなんでもスマートで」
と言われてしまう。
理不尽である。
いつか、この想いが通じて恋人になれたらいいのに。
聖は先に部屋を出て行こうとする彼の後を追う。何故、久隆は音痴なんだろうと不思議に思いながら。
階下はパーティーの最中である。とても賑やかで人が多かった。
「大里」
はぐれてしまわないようにと彼が聖の手を掴む。まるで会場を逃げ出す王子と姫のようだ。聖はなんだか少しだけテンションが上がるのを感じていた。
**・**
「もうすぐ交流会だな」
久隆のリクエストに応え数曲歌い終えた聖は黒皮のソファーに腰掛け、彼を横抱きにしていた。別に傍へと呼んだ訳ではない、この距離感は今に始まったことではないだけだ。
「そうだね」
聖の振った話に気のない返事をする彼。
「いくんだろ?」
「俺、生徒会役員じゃないんだけどな」
そう、彼は呼ばれたのだ。聖の策略によって。
「高等部の会長が会いたいって、なんで?」
不思議そうにするのも無理はない。高等部には久隆の兄、圭一がいる。彼に用があるとは考え辛い。
「久隆が大崎グループの時期社長だからだろ?」
聖はカラクリを知っている為、あまり深くは言うとバレてしまうのでぼかした。
「兄さんじゃなダメなの?」
「副社長じゃダメなんじゃないのか?」
「いや、だって……」
気持ちはわかる。久隆の兄は、すでに社長である父について勉強中、それに引き換え彼はまだ中学生。何をどうこうできる権利があるわけではない。その上、現在の高等部の生徒会長は彼の兄の親友。
「今からコネが欲しいんだろ?」
聖がそんな風にいうと、
「大里グループじゃダメなの?」
と痛いところをつつかれる。
聖は時期大里グループの時期総裁、苦笑いをするしかない。どうやら作戦に不備があったようだ。
「まあ、いいじゃん?」
と、聖。
「なにそれ、全然良くない」
「じゃあ、一人で置いていかれたい?」
とじっと久隆を見つめると、彼は少しムッとする。
その表情が、とても可愛い。
「そういう言い方するか? 普通」
と、彼は不機嫌そうにそう返す。
「なんで拗ねるんだよ」
「別に拗ねてないし」
K学園には中等部の生徒会と高等部の生徒会で交流会を泊りがけで行う行事がある、年に一度。聖はK学園中等部の生徒会副会長。コネをつかって生徒会とは無関係の久隆を巻き込んだが、それにはわけがある。
「同じ部屋だしさ、気使う必要もない。いいだろ?」
「二人だけ?」
という、彼の質問に聖は頷いた。
「ならいいけど」
聖はこの旅行で彼に想いを告げる作戦を立てていたのだ。
「んーッ……あれ? 大里」
目を開けきょとんと聖を見上げる久隆が可愛くて、ちゅっと髪に口付けた。
「パパみたい」
その仕草に彼は呆れ声で。
「似たようなもんだろ」
久隆の言葉にいちいち傷ついて居たらやっていられない。髪をそっと撫で微笑むと彼はほんのり頬を赤らめた。可愛らしい。
「大里、なにかして遊ぼうよ」
「ゲーム?」
聖はテレビゲームなどの操作系ゲームが苦手であった。ビリヤードやダーツなどは得意だが。長姉はアクションゲームが得意、次姉はゲームに関しては破壊的センスではあったが、想い人圭一のためなら何でもこなすという超人的根性の持ち主。姉弟の中で唯一この手のことが苦手な聖。彼をがっかりさせることは不本意ではあるが仕方ない。
「地下に多目的ホールがあるでしょ?」
と、久隆。
「ん」
大崎邸には二十名ほどの従業員が住み込みで働いている。来賓も多い。そのため大崎邸の地下には防音が施された、数個の多目的ホールがある。
「その中にね、カラオケ設備入れてもらったんだ」
「へえ!」
聖は歌が得意だ。彼は破壊的音痴であるが。
「なにか歌ってよ」
「おう、いいよ」
彼は聖の膝から降りると身震いする。
寒いのかと思い傍らにあった彼の上着を肩にかけてやると、
「やだね、モテ男はなんでもスマートで」
と言われてしまう。
理不尽である。
いつか、この想いが通じて恋人になれたらいいのに。
聖は先に部屋を出て行こうとする彼の後を追う。何故、久隆は音痴なんだろうと不思議に思いながら。
階下はパーティーの最中である。とても賑やかで人が多かった。
「大里」
はぐれてしまわないようにと彼が聖の手を掴む。まるで会場を逃げ出す王子と姫のようだ。聖はなんだか少しだけテンションが上がるのを感じていた。
**・**
「もうすぐ交流会だな」
久隆のリクエストに応え数曲歌い終えた聖は黒皮のソファーに腰掛け、彼を横抱きにしていた。別に傍へと呼んだ訳ではない、この距離感は今に始まったことではないだけだ。
「そうだね」
聖の振った話に気のない返事をする彼。
「いくんだろ?」
「俺、生徒会役員じゃないんだけどな」
そう、彼は呼ばれたのだ。聖の策略によって。
「高等部の会長が会いたいって、なんで?」
不思議そうにするのも無理はない。高等部には久隆の兄、圭一がいる。彼に用があるとは考え辛い。
「久隆が大崎グループの時期社長だからだろ?」
聖はカラクリを知っている為、あまり深くは言うとバレてしまうのでぼかした。
「兄さんじゃなダメなの?」
「副社長じゃダメなんじゃないのか?」
「いや、だって……」
気持ちはわかる。久隆の兄は、すでに社長である父について勉強中、それに引き換え彼はまだ中学生。何をどうこうできる権利があるわけではない。その上、現在の高等部の生徒会長は彼の兄の親友。
「今からコネが欲しいんだろ?」
聖がそんな風にいうと、
「大里グループじゃダメなの?」
と痛いところをつつかれる。
聖は時期大里グループの時期総裁、苦笑いをするしかない。どうやら作戦に不備があったようだ。
「まあ、いいじゃん?」
と、聖。
「なにそれ、全然良くない」
「じゃあ、一人で置いていかれたい?」
とじっと久隆を見つめると、彼は少しムッとする。
その表情が、とても可愛い。
「そういう言い方するか? 普通」
と、彼は不機嫌そうにそう返す。
「なんで拗ねるんだよ」
「別に拗ねてないし」
K学園には中等部の生徒会と高等部の生徒会で交流会を泊りがけで行う行事がある、年に一度。聖はK学園中等部の生徒会副会長。コネをつかって生徒会とは無関係の久隆を巻き込んだが、それにはわけがある。
「同じ部屋だしさ、気使う必要もない。いいだろ?」
「二人だけ?」
という、彼の質問に聖は頷いた。
「ならいいけど」
聖はこの旅行で彼に想いを告げる作戦を立てていたのだ。
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