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3 彼らとの再会
4 愛しい彼との思い出
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****♡side・聖
中学に上がると同時に父に頼んで一人暮らしをさせて貰ったのは何も自由奔放な生活をしたいからではない。
二人の姉には『セレブだからって、豪遊してたら家が潰れるわよ』などと言われたが、『姉貴達がクレイジーだから家を出たいんだよ!』と、言いたい。
二人は何かというと大崎家に乗り込んで……。
大崎家は幼馴染みである久隆の家だ。立派な三階建てのアンティークなデザインの屋敷である。敷地面積は……(省略)。
──久隆はそれはもう、可愛くて可愛くて目に入れてもいいぐらい可愛くて。
(祖父さんか!)
お兄ちゃん子。外では笑わないけれど、笑顔が可愛くて。
まるで、天使!
そんな天使の家に、毎回毎回乗り込む姉二人。
(天使ではない、人間である)
──羨ましいったらない!
願わくば、俺も久隆を連れ込んで…おっと口が滑ったようだ。
そんな俺たちの小学生時代といえば……。
**・**
大里聖。
K学園初等部に通う端正な顔立ちが父親似の小学四年生。幼馴染みの大崎久隆という”ベビーフェイスで可愛らしい男の子”に猛烈片想い中の、大里家末っ子であり長男である。
将来は大里グループ総裁という椅子が用意されたK学園二大セレブの片割れであり、本来なら幸せな境遇のはずなのだが。
目の前にはピンク一色のリビングが広がっている。まるで肺の中のようだと聖は思っていた。一度肺に見えてしまうと、クッションが肺胞に見えてくる。
テレビの前では長女の愛花がポーズを決め「奴隷におなりッ!」とキチガイな発言を繰り返していた。最近流行のドラマ「イケメン奴隷と華麗なるわたくしの日々」通称イケ華麗かれというコメディドラマにハマったらしい。まったくハマリどころの分からないドラマである。
”ベビーフェイスで天使のように可愛い幼馴染みの男の子、久隆”の兄、”大崎圭一を奴隷にしてさしあげるの!”と息巻いているが相手は絶対喜ばないと聖は思っていた。
(当然である)
隣を見やれば次女のミノリがなにやら魚がずらっと並んだへんなカタログのチェックをしていた。
圭一のために作ったカタログらしいが、どの魚も同じに見え違いがわからない”カワハギカタログ”らしい。つまり、カワハギ一色である。誰が見るんだ、誰が得するんだ! とツッコミたくなる謎のカタログだ。
「カワハギカタログの最終チェックに余念がありませんの!」
”へえ、そうなんだ”としか言いようがない。
──恐るべし! 大崎圭一!
二人の姉を虜にするカワハギマスター!
(そんなマスターではないはず)
しかし聖にとってもこの男は脅威であった。
なにせ、聖の片想いの相手である”ベビーフェイスで天使のように超絶可愛らしい男の子、久隆”は、お兄ちゃん子だったからだ。”ベビーフェイスで天使のように超絶可愛らしいお兄ちゃん子の男の子、久隆”を振り向かせるためにはまず、圭一を倒さなければならない。
──打倒! 魔王圭一!
(いつから魔王になったんだ)
頑張れ、勇者!
”ベビーフェイスで天使のように超絶可愛らしいお兄ちゃん子(魔王、圭一)の幼馴染の男の子、久隆”を振り向かせる為に!
(なげーなおい!舌噛みそー)
**・**
「ねえ、聖。お姉ちゃん知らない?」
「え?」
自分の世界に浸っていたら突然声を掛けられ顔をあげた。
さっきまで聞こえていた父と姉の声がしなくなっている。
──愛花姉さては、大崎邸に乗り込んだのか?!
許すまじ……
って、おい!
「なにやってんの?!ミノリ姉」
「準備♪」
ミノリはルンルンで一眼レフカメラと望遠レンズを担いでいた。どうやら盗撮に行くらしい。いや、撮影かも知れないが。
「見張りの部下からそろそろお風呂の時間だと連絡が来て、ちょっと記念に一枚撮ってきますわ」
──おい、それ盗撮じゃないかよ
てか、見張り?!
「弟くんも一緒らしいですわよ」
「俺にも一枚焼き増しして」
聖は欲望に勝てなかった。
(いやいや、止めなきゃだめだろ!)
そうこうしているうちにミノリはスキップしながら、ピンク一色のリビングから長い長い長すぎる廊下を玄関に向けて去っていく。聖は目を輝かせ期待に満ちた表情で……もとい、複雑な表情でそれを見送った。
それから十五分も立たないうちにミノリは肩を落として帰宅する。
「どうしたの?」
ピンク一色のリビングでこれまた何故染めたんだ? というピンクのグランドピアノを弾いていた聖が手を止め、彼女に問いかけた。
「誤報でしたの。お風呂は高井戸おじ様の家でしたわ」
──誰だよ、高井戸。
「もう! 家を間違えるなんて」
ミノリは頭を抱えていた。聖は違う意味で頭を抱えている”誰、高井戸”と。
「そうだわ! 高井戸おじ様に車を借りて探しに行けばよいのですわ!」
ミノリは荷物をテーブルにおくとスマホを操作し”高井戸おじ様”とやらに連絡を取りながら、廊下に出て行ったのだった。
──だから、誰だよ!
高井戸って
(謎は深まるばかりであった)
中学に上がると同時に父に頼んで一人暮らしをさせて貰ったのは何も自由奔放な生活をしたいからではない。
二人の姉には『セレブだからって、豪遊してたら家が潰れるわよ』などと言われたが、『姉貴達がクレイジーだから家を出たいんだよ!』と、言いたい。
二人は何かというと大崎家に乗り込んで……。
大崎家は幼馴染みである久隆の家だ。立派な三階建てのアンティークなデザインの屋敷である。敷地面積は……(省略)。
──久隆はそれはもう、可愛くて可愛くて目に入れてもいいぐらい可愛くて。
(祖父さんか!)
お兄ちゃん子。外では笑わないけれど、笑顔が可愛くて。
まるで、天使!
そんな天使の家に、毎回毎回乗り込む姉二人。
(天使ではない、人間である)
──羨ましいったらない!
願わくば、俺も久隆を連れ込んで…おっと口が滑ったようだ。
そんな俺たちの小学生時代といえば……。
**・**
大里聖。
K学園初等部に通う端正な顔立ちが父親似の小学四年生。幼馴染みの大崎久隆という”ベビーフェイスで可愛らしい男の子”に猛烈片想い中の、大里家末っ子であり長男である。
将来は大里グループ総裁という椅子が用意されたK学園二大セレブの片割れであり、本来なら幸せな境遇のはずなのだが。
目の前にはピンク一色のリビングが広がっている。まるで肺の中のようだと聖は思っていた。一度肺に見えてしまうと、クッションが肺胞に見えてくる。
テレビの前では長女の愛花がポーズを決め「奴隷におなりッ!」とキチガイな発言を繰り返していた。最近流行のドラマ「イケメン奴隷と華麗なるわたくしの日々」通称イケ華麗かれというコメディドラマにハマったらしい。まったくハマリどころの分からないドラマである。
”ベビーフェイスで天使のように可愛い幼馴染みの男の子、久隆”の兄、”大崎圭一を奴隷にしてさしあげるの!”と息巻いているが相手は絶対喜ばないと聖は思っていた。
(当然である)
隣を見やれば次女のミノリがなにやら魚がずらっと並んだへんなカタログのチェックをしていた。
圭一のために作ったカタログらしいが、どの魚も同じに見え違いがわからない”カワハギカタログ”らしい。つまり、カワハギ一色である。誰が見るんだ、誰が得するんだ! とツッコミたくなる謎のカタログだ。
「カワハギカタログの最終チェックに余念がありませんの!」
”へえ、そうなんだ”としか言いようがない。
──恐るべし! 大崎圭一!
二人の姉を虜にするカワハギマスター!
(そんなマスターではないはず)
しかし聖にとってもこの男は脅威であった。
なにせ、聖の片想いの相手である”ベビーフェイスで天使のように超絶可愛らしい男の子、久隆”は、お兄ちゃん子だったからだ。”ベビーフェイスで天使のように超絶可愛らしいお兄ちゃん子の男の子、久隆”を振り向かせるためにはまず、圭一を倒さなければならない。
──打倒! 魔王圭一!
(いつから魔王になったんだ)
頑張れ、勇者!
”ベビーフェイスで天使のように超絶可愛らしいお兄ちゃん子(魔王、圭一)の幼馴染の男の子、久隆”を振り向かせる為に!
(なげーなおい!舌噛みそー)
**・**
「ねえ、聖。お姉ちゃん知らない?」
「え?」
自分の世界に浸っていたら突然声を掛けられ顔をあげた。
さっきまで聞こえていた父と姉の声がしなくなっている。
──愛花姉さては、大崎邸に乗り込んだのか?!
許すまじ……
って、おい!
「なにやってんの?!ミノリ姉」
「準備♪」
ミノリはルンルンで一眼レフカメラと望遠レンズを担いでいた。どうやら盗撮に行くらしい。いや、撮影かも知れないが。
「見張りの部下からそろそろお風呂の時間だと連絡が来て、ちょっと記念に一枚撮ってきますわ」
──おい、それ盗撮じゃないかよ
てか、見張り?!
「弟くんも一緒らしいですわよ」
「俺にも一枚焼き増しして」
聖は欲望に勝てなかった。
(いやいや、止めなきゃだめだろ!)
そうこうしているうちにミノリはスキップしながら、ピンク一色のリビングから長い長い長すぎる廊下を玄関に向けて去っていく。聖は目を輝かせ期待に満ちた表情で……もとい、複雑な表情でそれを見送った。
それから十五分も立たないうちにミノリは肩を落として帰宅する。
「どうしたの?」
ピンク一色のリビングでこれまた何故染めたんだ? というピンクのグランドピアノを弾いていた聖が手を止め、彼女に問いかけた。
「誤報でしたの。お風呂は高井戸おじ様の家でしたわ」
──誰だよ、高井戸。
「もう! 家を間違えるなんて」
ミノリは頭を抱えていた。聖は違う意味で頭を抱えている”誰、高井戸”と。
「そうだわ! 高井戸おじ様に車を借りて探しに行けばよいのですわ!」
ミノリは荷物をテーブルにおくとスマホを操作し”高井戸おじ様”とやらに連絡を取りながら、廊下に出て行ったのだった。
──だから、誰だよ!
高井戸って
(謎は深まるばかりであった)
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